上 下
435 / 1,519

てゅるんてゅるん

しおりを挟む


 ギルマスが止める。だが口しか出せぬ女に俺を止める事は出来ん。恨みがましい目で見る受付嬢にトドメを刺し、ゲロの噴水に一瞥もくれずギルドを後にする。ギルドを出て直ぐに空に上がり、驚く人々を無視してダンジョンに移動した。

「さーて、どうしてくれようか」

「更地?」

それでは下向きの穴が残るだけだ。此処は逆で行こう。眼下に望むダンジョン前には未だ仮設の受付と衛兵が二人。上手く助け出されれば良いな。無理だと思うが。
魔力を練って、練って、食うなネーヴェ。練り直し、練って練って硬くて分厚い、直径二十ハーン程の煉瓦の円筒を作ってダンジョンの入口を中心に捩じ込んだ。突然の衝撃に、その場に居た者は腰を抜かした事だろう。今では高さ五十ハーンの煙突の底だ。地下五十ハーンまで捩じ込んだので、長~い梯子か深~い穴を掘れば助けられるかも知れん。

「よし」

「いいの?」

「良いさ。この煉瓦は龍の力でなきゃ壊れないくらいに硬くしたし、入れるようにしたなら、また埋めれば良い。金を使わせて損させるのが一番キツいんだ」

死ぬよりも、死ぬ寸前までが苦しむと言う。だから極力殺さない。とことん苦しめば良い。

「そうだ、あの円筒をつるっつるに出来ないか?煉瓦ってザラザラしてるからやり方次第で簡単に登れちゃうからな」

「まかして」

ネーヴェが手を翳すとほわっと光って外側も内側もてゅるんてゅるんに照りが出た。芸術品のような輝きだ。

「すげーてらてら」

「よごれしらず」

「そりゃあ凄い」

脇腹に頭をグリグリして来るので撫で散らし、荷車に乗って雪国のダンジョン都市に向かった。


 UFOの速さに慣れてしまったせいか、荷車は遅く感じる。陸路や水上を往く為の乗り物だし仕方無かろう。UFOに乗り換えて進もうとしたのだが、

「こっちの方が良い。ずっと見てられる」

と言われてしまったので仕方無かろう。無賃乗車する小鳥を乗せて、北へ北へと飛んで行く。
辺りはすっかり暗くなり、鳥も何処かへ飛んでった。下を覗きながら寝てたネーヴェも起きて来て、俺の上で寝直す模様。

「カケル、ご飯。食べてい?」

「お肉焼こうか」

「うん」

今食べられたら寝過ごす予感がするので出来たての鉄板と薄切りにした柱状節理で石焼き肉を焼く。ジュ~ジュ~と音と煙と匂いの攻撃に、目を閉じて空腹に耐えているネーヴェだが、時折あ~んと口を開ける。焼けたら入れろとの意思表示だろう。ちっちゃく切った薄切り肉をふーふーして入れてやると、もぐもぐしてあ~んする。追加をご所望か。起きて自分で焼けよ。
お腹一杯になったネーヴェはうつ伏せに寝返って本格的に寝るようだ。やっとゆっくり食えるぜ。腹を満たして俺も寝た。


 朝になり、辺り一面雪が降り、眼下は白に染まっていた。どうやら北の大陸に入っていたようだな。

「おなかすいた…。食べてい?」

食ったら寝る。起きたら食べる。生に素直な龍である。

「お肉焼こうか」

「あれ、食べたい。魔力」

指差す先は外…ではなく雪のようだ。意識して見てなかったので分からなかったが、結晶一つ一つが魔力を帯びている。魔力を核に結晶化したのか、それとも、水分が魔力を帯びているのか。はたまた魔法で生み出された雪なのか。お肉も焼くので食べ過ぎないように注意して肉を焼き、俺は肉の無いスペースでソーサーを焼く。水入れ過ぎてクレープ生地みたいになっちゃったけど、薄く焼けて肉が巻き易くなったので成功だ。バナナとかチョコとか巻いて食べたい。
食事として食べるクレープはガレットとか言ったか。ネーヴェは俺が巻いたのを食いながら雪を集めてシャクシャクしてる。化学物質が混ざってないので健康には問題無いと思うが、赤や黄色のタレを掛けて食べたいな。甘味不足のシルケでは中々求める事が出来ぬシロモノである。
 濃いめの朝食が終わり、お湯を飲みながら暫くするとやっと壁が見えて来た。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する

美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」 御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。 ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。 ✳︎不定期更新です。 21/12/17 1巻発売! 22/05/25 2巻発売! コミカライズ決定! 20/11/19 HOTランキング1位 ありがとうございます!

キャンピングカーで往く異世界徒然紀行

タジリユウ
ファンタジー
《第4回次世代ファンタジーカップ 面白スキル賞》 【書籍化!】 コツコツとお金を貯めて念願のキャンピングカーを手に入れた主人公。 早速キャンピングカーで初めてのキャンプをしたのだが、次の日目が覚めるとそこは異世界であった。 そしていつの間にかキャンピングカーにはナビゲーション機能、自動修復機能、燃料補給機能など様々な機能を拡張できるようになっていた。 道中で出会ったもふもふの魔物やちょっと残念なエルフを仲間に加えて、キャンピングカーで異世界をのんびりと旅したいのだが… ※旧題)チートなキャンピングカーで旅する異世界徒然紀行〜もふもふと愉快な仲間を添えて〜 ※カクヨム様でも投稿をしております

左遷されたオッサン、移動販売車と異世界転生でスローライフ!?~貧乏孤児院の救世主!

武蔵野純平
ファンタジー
大手企業に勤める平凡なアラフォー会社員の米櫃亮二は、セクハラ上司に諫言し左遷されてしまう。左遷先の仕事は、移動販売スーパーの運転手だった。ある日、事故が起きてしまい米櫃亮二は、移動販売車ごと異世界に転生してしまう。転生すると亮二と移動販売車に不思議な力が与えられていた。亮二は転生先で出会った孤児たちを救おうと、貧乏孤児院を宿屋に改装し旅館経営を始める。

分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活

SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。 クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。 これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

処理中です...