上 下
423 / 1,519

龍の匂い

しおりを挟む


 冒険者達が乗り回してるのを眺めてる内にすっかり夕方だ。

「ああ、灯火を付けるのを忘れてた」

「とうか?」

「暗いと前が見えなくなるから明かりで照らすんだよ」

「鉄と魔石ちょーだい。ちっちゃくて良い」

「光の属性魔石ならあるぞ?」

「それで良い…砂?」

「小さくても属性魔石だよ」

これくらいの大きさなら俺もねりねり出来るぞ。鉄のお椀を作って真ん中に属性魔石をめり込ませて一個完成。遠くに向けて照らしてみた。

「きゃ!まぶしーですー」

「う、すまん。加減したけど強過ぎた」

「なかなかの魔力」

「こんな感じのを付けて操縦しながら光らせられるようにしたいんだが…」

「わかった」

楽しそうに走り回ってる車を呼んで、ぐにゃぐにゃっとネーヴェがライトを取り付けた。正面が照らされて走り易くなったようだ。灯火は大事だ。俺が作ったのはそれはそれで使えそうなので大事に取っておこう。

「カケル様、皆様、夕飯の支度が出来ました」

テイカが呼びに来たので夕飯にしよう。ネーヴェはサミイを連れて一目散に行ってしまったよ。俺も爆走する車に声を掛け、五人を集めて食堂に向かった。


 翌日、カロが休みを取った。年中無休の秘書兼サブマスが休むと言うのでギルドは大変だろうな。

「リュネ様の作ったお風呂に入りたいのです!たまには旅行したいのです!一日中カケル様と過ごしたいのです!!」

普段からお疲れで帰って来るのだ。たまには羽を伸ばすのも良いだろうって事で、アルネスと共にUFOに乗っている。

「サミイは不思議。人の子なのに龍の匂いがする」

「カララさまをおんぶしてたからですかねー?」

サミイの背中に抱き着いてクンカクンカするネーヴェ。ドラゴンライダーからライダードラゴンに戻っちゃったな。

UFOの遥か下、街道を走る魔道車には少年隊と友恋が乗っていて、荷物を積んで走ってる。実際に走ってみて、時間を計ったり、疲労度や乗り心地等を調べるように指示した。
UFOよりはだいぶ遅いけど、陸路ではこの世で一番速いと言って良い。俺の荷車は少し浮いてるから陸路は殆ど走らせて無いのだ。タイヤの損耗が如何程か、とても興味がある。
魔道車が発車して門に着く迄二十リット程だった。門からの道程距離は大体十六キロハーンなので…何キロだ?

「魔道車の速さを調べてるのですか?」

シャリーは計算が得意らしい。ギルド勤めしてた時に習ったそうだ。現職のカロは寝てるぜ。

「十六キロハーンの距離を二十リットで移動出来た」

「十六にオコンを掛けて、二十リットで割る…」

「暗算は苦手だ」

「一オコン当たり四十八キロハーンですかね」

「意外と遅いな」

「商隊の使うホルスト車の五倍は速いですよ?しかも疲れ知らずです」

「そう考えると速いのか。空飛ぶから感覚が麻痺してるな」

魔道車が湖畔に着いたのを見計らい、UFOを島に接岸させ、昨日作ったボートを向こう岸に送ってやる。荷物を乗せて渡れないと困るからな。常駐して船を送る船頭が欲しい所だ。
魔道車の積荷を船に載せ、少年隊が一人一艇漕いで島へと進む。魔道車に積める程度の量ならこのボートで充分みたいだ。全部降ろしてニットが折り返し、友恋を乗せて戻って来る。

「置去りになった魔道車はどうしよう?」

「封印でも掛けましょうか?」

「リュネ以外開けられない封印だと困る」

「そうですねー」

「旦那さま、船でひっぱって島に渡すのはどうですか?」

「ネーヴェ、魔道車は水に浮くかな?」

「わかんない」

「そかー」

とりあえず煉瓦で囲っといた。一箇所は取れるようにしたので少年隊の三人なら問題無いだろう。車庫入れ出来るかどうかは謎だが。
魔道車に積まれていた荷物と俺が《収納》してた荷物を出して各自の部屋を整えて行った。









しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

月が導く異世界道中extra

あずみ 圭
ファンタジー
 月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。  真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。  彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。  これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。  こちらは月が導く異世界道中番外編になります。

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第二章シャーカ王国編

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

特殊スキル持ちの低ランク冒険者の少年は、勇者パーティーから追い出される際に散々罵しった癖に能力が惜しくなって戻れって…頭は大丈夫か?

アノマロカリス
ファンタジー
少年テイトは特殊スキルの持ち主だった。 どんなスキルかというと…? 本人でも把握出来ない程に多いスキルなのだが、パーティーでは大して役には立たなかった。 パーティーで役立つスキルといえば、【獲得経験値数○倍】という物だった。 だが、このスキルには欠点が有り…テイトに経験値がほとんど入らない代わりに、メンバーには大量に作用するという物だった。 テイトの村で育った子供達で冒険者になり、パーティーを組んで活躍し、更にはリーダーが国王陛下に認められて勇者の称号を得た。 勇者パーティーは、活躍の場を広げて有名になる一方…レベルやランクがいつまでも低いテイトを疎ましく思っていた。 そしてリーダーは、テイトをパーティーから追い出した。 ところが…勇者パーティーはのちに後悔する事になる。 テイトのスキルの【獲得経験値数○倍】の本当の効果を… 8月5日0:30… HOTランキング3位に浮上しました。 8月5日5:00… HOTランキング2位になりました! 8月5日13:00… HOTランキング1位になりました(๑╹ω╹๑ ) 皆様の応援のおかげです(つД`)ノ

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

こちらの世界でも図太く生きていきます

柚子ライム
ファンタジー
銀座を歩いていたら異世界に!? 若返って異世界デビュー。 がんばって生きていこうと思います。 のんびり更新になる予定。 気長にお付き合いいただけると幸いです。 ★加筆修正中★ なろう様にも掲載しています。

役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !

本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。  主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。 その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。  そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。 主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。  ハーレム要素はしばらくありません。

処理中です...