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龍の匂い

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 冒険者達が乗り回してるのを眺めてる内にすっかり夕方だ。

「ああ、灯火を付けるのを忘れてた」

「とうか?」

「暗いと前が見えなくなるから明かりで照らすんだよ」

「鉄と魔石ちょーだい。ちっちゃくて良い」

「光の属性魔石ならあるぞ?」

「それで良い…砂?」

「小さくても属性魔石だよ」

これくらいの大きさなら俺もねりねり出来るぞ。鉄のお椀を作って真ん中に属性魔石をめり込ませて一個完成。遠くに向けて照らしてみた。

「きゃ!まぶしーですー」

「う、すまん。加減したけど強過ぎた」

「なかなかの魔力」

「こんな感じのを付けて操縦しながら光らせられるようにしたいんだが…」

「わかった」

楽しそうに走り回ってる車を呼んで、ぐにゃぐにゃっとネーヴェがライトを取り付けた。正面が照らされて走り易くなったようだ。灯火は大事だ。俺が作ったのはそれはそれで使えそうなので大事に取っておこう。

「カケル様、皆様、夕飯の支度が出来ました」

テイカが呼びに来たので夕飯にしよう。ネーヴェはサミイを連れて一目散に行ってしまったよ。俺も爆走する車に声を掛け、五人を集めて食堂に向かった。


 翌日、カロが休みを取った。年中無休の秘書兼サブマスが休むと言うのでギルドは大変だろうな。

「リュネ様の作ったお風呂に入りたいのです!たまには旅行したいのです!一日中カケル様と過ごしたいのです!!」

普段からお疲れで帰って来るのだ。たまには羽を伸ばすのも良いだろうって事で、アルネスと共にUFOに乗っている。

「サミイは不思議。人の子なのに龍の匂いがする」

「カララさまをおんぶしてたからですかねー?」

サミイの背中に抱き着いてクンカクンカするネーヴェ。ドラゴンライダーからライダードラゴンに戻っちゃったな。

UFOの遥か下、街道を走る魔道車には少年隊と友恋が乗っていて、荷物を積んで走ってる。実際に走ってみて、時間を計ったり、疲労度や乗り心地等を調べるように指示した。
UFOよりはだいぶ遅いけど、陸路ではこの世で一番速いと言って良い。俺の荷車は少し浮いてるから陸路は殆ど走らせて無いのだ。タイヤの損耗が如何程か、とても興味がある。
魔道車が発車して門に着く迄二十リット程だった。門からの道程距離は大体十六キロハーンなので…何キロだ?

「魔道車の速さを調べてるのですか?」

シャリーは計算が得意らしい。ギルド勤めしてた時に習ったそうだ。現職のカロは寝てるぜ。

「十六キロハーンの距離を二十リットで移動出来た」

「十六にオコンを掛けて、二十リットで割る…」

「暗算は苦手だ」

「一オコン当たり四十八キロハーンですかね」

「意外と遅いな」

「商隊の使うホルスト車の五倍は速いですよ?しかも疲れ知らずです」

「そう考えると速いのか。空飛ぶから感覚が麻痺してるな」

魔道車が湖畔に着いたのを見計らい、UFOを島に接岸させ、昨日作ったボートを向こう岸に送ってやる。荷物を乗せて渡れないと困るからな。常駐して船を送る船頭が欲しい所だ。
魔道車の積荷を船に載せ、少年隊が一人一艇漕いで島へと進む。魔道車に積める程度の量ならこのボートで充分みたいだ。全部降ろしてニットが折り返し、友恋を乗せて戻って来る。

「置去りになった魔道車はどうしよう?」

「封印でも掛けましょうか?」

「リュネ以外開けられない封印だと困る」

「そうですねー」

「旦那さま、船でひっぱって島に渡すのはどうですか?」

「ネーヴェ、魔道車は水に浮くかな?」

「わかんない」

「そかー」

とりあえず煉瓦で囲っといた。一箇所は取れるようにしたので少年隊の三人なら問題無いだろう。車庫入れ出来るかどうかは謎だが。
魔道車に積まれていた荷物と俺が《収納》してた荷物を出して各自の部屋を整えて行った。









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