女神に嫌われた俺に与えられたスキルは《逃げる》だった。

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お前の方がキレイだよ

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「キルヒネーヴェ、なんてどうですか?」

突然入って来た、と言うより空間から現れたのはリュネだ。皆突然の出現に固まってしまった。

「カケル、あれ、わたしと似てる匂いする」

そんな中でも自然体の彼女である。

「そうだな。お前のおねーちゃんになる者でリュネと言う名前だ。キルヒネーヴェ、キレイな響きで良いと思うが、どうかな?」

「それにする。キルヒ、キルヒネーヴェ。わたしの名前」

名前を書いて、血を…流させるのは危険なので口の中に指を突っ込み、涎を一塗り。これでも大丈夫なのは体液全てが龍の血である証拠だな。

「おねーちゃん…、良い響きですね…、うふふふふ。ネーヴェちゃん、おねーちゃんって呼んでみて?」

「リュネ、おねーちゃん?」

「はう~!カケルさん!私、クリスタルドラゴンのおねーちゃんになっちゃいましたぁ!あはぁ、うふふふ…」

「クリ」「スタル」「ドラゴン」「だと…」

部屋に居た皆がその名に凍り付く。トカゲモドキにすら手も足も出せない奴等だ。その名を聞いて死を連想しない筈が無い。現に一人、死んでるしな。

「なあリュネよ。何でダンジョンの中に龍が居たか、予想出来るか?」

「迷子にしては人化出来てますし、謎ですね。人化した後ダンジョンに紛れ込んで、魔力を吸って生活してた…とか?卵戻りの可能性も捨てきれません」

成龍が卵に戻り、若返るのを卵戻りと言うそうで、記憶が欠落する為龍でも滅多にやらないそうだ。

「お!お前は何者だっ!?」

「うふ?」

その瞬間、ギルマスの艶やかな黒髪が真っ白になった。だから止めときゃ良いのに…。

「わたしと、同じ色」

「お前の方がキレイだよ」

「名前」

「ネーヴェの方がキレイだよ」

撫でて欲しそうなので撫でてやる。俺まで真っ白になる所だった。

「俺には構わんが、彼女らに滅多な口を聞くなよ?街が更地になっちゃうぞ?」

「さらち?何?」

「その内見せてあげますね、うふふ」

辞めたげてよ!二人のギルド証を受け取って、もう帰った方が良いな。街に向かってる雑魚程度なら此奴等でも何とか出来るだろ。リュネは朝食の時間だそうで、一人で消えてしまった。それは転移スキルなのか?俺達も行こう。

「ど、何処へ行く?」

「お前等が殺り切れる程度には減らしたから帰るんだよ。ダンジョン無料の件、ちゃんとしろよ?でないと今度はハゲになるぞ」

「はげぇ~」

ハゲと言うフレーズが気に入ったようで、ハゲハゲ言いながら抱き着いて来たネーヴェを連れて部屋を出た。

「お前、帰るのか?」

来る時に話をした門兵が悲しそうな顔で言葉を零す。

「真面目に戦えば勝てるくらいに減らしたから頑張れ」

「マジかよ…」

「ダンジョンから出てくる奴ぜーんぶ殺ったからな」

「わたしは?」

「ネーヴェは敵じゃ無い。家族だ」

「かぞく…、うん。家族」

「とにかく頑張れよ。年寄り共がドヤ顔するくらいには温くしてあるから」


 ネーヴェを肩車して門から出て、街道を暫く進んでから飛び上がる。

「カケルは翼ないのに飛べる。なぜ?」

「飛んでるように見えるだけで、本当はぶん投げられてるようなモンなんだ」

「んぬ?」

「彼処に鳥がいるね、鳥は飛ぶ時に翼を動かして空気を下に押す事で浮き上がる」

「うん」

「龍は魔力で体を浮かせている」

「わたしのは、それ」

「俺はスキルに押されたり、引っ張られたりして浮き上がってる」

「へー」

「龍の飛び方は魔力をたくさん使うから直ぐお腹が空いちゃうね」

「うん。おなかすいた」

「またお肉焼こうか」

「焼くー!」

近場の休憩地に進路変更。二人で焼肉パーティーだ。浮かせ焼きしてる薄切り肉を見せながら、《浮揚》や《飛行》の概念を教えてみたら、三枚目の肉からは自分で焼けるようになった。因みに俺もその二つのスキルは使えるが、《逃げる》で飛ぶ方が効率が良いので使って無いのだ。
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