上 下
410 / 1,519

アホなのか?

しおりを挟む


 この街の冒険者共にとって、俺は見掛けぬ顔。チラチラ見て来て気持ち悪い。列が終わり、忙しそうに事務処理する受付嬢に話し掛ける。

「バルタリンドから来た。取次を頼む。紹介状、こんなんなっちゃってるけど…」

「よくそれを持って来れますね」

「仕方無いじゃん、衛兵隊の隊長様だとか抜かす野郎に破かれたんだから」

「何となく分かるので忖度しますよ。繋ぎ合わせるので暫くお待ち下さいね」

「手間を掛けるね」

「おうおうマチュール、そんなちんぽ野郎なんざ放っといてこっち来て酌でもしろよ」

「見ないようにしてるんですから言わないで下さい!これから討伐なんですからお酒なんて飲んでないで装備の確認でもしたらどうですか!?」

「へっ!飲まずに居られっかよ!動きゃしねえジジイ共は余裕こいてるがな、殺り合うのは俺達だっつーの!」

「それなら街の中まで入れてから戦えば良いかもな。少しは焦るだろ。死んでも後釜が収まれば済む話だ」

「お前ぇ、ちんぽのクセにわーってんじゃねぇか」

「物騒な事言わないで下さい!なんでこんなにビリビリなのよもー!!」

「文句を言っても始まらん。どうせ今頃前線のモンスターに囲まれて食われてる頃だ」

「はっ!そりゃあ良いぜ!俄然やる気が出た。お前ぇも気張りな」

絡み酒の男は何かやる気になったらしい。斧を担いで出て行った。何だったのだろうか?

「何となくバルタリンドの捺印なのは分かりました。マスターに確認取って来ますので今暫くお待ちを」

ペニスケをチラ見した受付嬢は急ぎ足で階段を駆け上がって行った。ここに居ても列の邪魔なので端っこで休んでよ…。


「バルタリンドの冒険者の方ー、こちらに来て下さーい!」

暫くして、階段から降りて来た受付嬢が俺を呼ぶ。ちんぽ野郎と呼ばれる前に行くか。

「俺の名はカケルだ」

「取り敢えず上へどうぞ。付いて来て下さい」

ギルマスの部屋に通された俺は数人の男女が居る室内でハゲ、ないしマッチョを探す。多分そいつがギルマスだからな。しかしハゲは居なかった。マッチョは居たけど男三人全てマッチョなので何奴がギルマスか分からない。

「あんたがバルタリンドから来たドラゴンスレイヤー様かい?」

「ドラゴンバスターにしてくれ。アレは殺せん。名前はカケルだ」

ソファの背凭れに尻を乗せて居た女が口を開いた。珍しい黒髪に赤い瞳。カラコン女子に見えるが歳はそれなりに行ってそうだ。何故か《威圧》して来たので《威圧》で返してやる。

「つっ!なんて…」

「ちょっと《威圧》出来るからって調子に乗るな」

「お前、ギルマスに何してんだ!」

「お前等も覚えておけ。初見の相手に《威圧》する時は相手の力量をしかと見極めろ。でないとああなる」

「なめ…るぬぐぁあっ!?」

「無理だよお前程度じゃ。脱糞する前に謝罪しろ」

その場に居た男女が武器を構えるが、同時に藻掻き苦しむ。

「お前等は、アホなのか?態々手伝いに来た奴が、弱いとでも思ってるのか?」

「カケル様、そろそろご容赦願います。話が終わりませんので…」

「そうだな。便意だけにしといてやろう。俺の仕事は飛んでる奴と湧いて出て来る奴の討伐。他にあるか?何なら片っ端からやってやるぞ?」

「ほ、報酬は!?」

「金はあるからランク上げてくれ。あと、ダンジョン只で入れるようにしてくれ」

「ラン、ク…、だと….?」

「俺まだDなんだよ。Cにならないと入れないって言うもんだからなー」

「お前のようなDランクが居るか!あうっ!」

「ここにいるぞ!」

「くぅ…、分かった。分かったから、それを解いてくれ」

「解いても便意はそのままだけどな」

《威圧》を解いてやると、皆一目散に飛び出して行った。

「なんと言う事を…」

「人に敵意を向けるような奴は報いを受けるもんだ。では俺も行ってくる、か」

ゆっくりした足取りで部屋を出て行った。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

箱庭から始まる俺の地獄(ヘル) ~今日から地獄生物の飼育員ってマジっすか!?~

白那 又太
ファンタジー
とあるアパートの一室に住む安楽 喜一郎は仕事に忙殺されるあまり、癒しを求めてペットを購入した。ところがそのペットの様子がどうもおかしい。 日々成長していくペットに少し違和感を感じながらも(比較的)平和な毎日を過ごしていた喜一郎。 ところがある日その平和は地獄からの使者、魔王デボラ様によって粉々に打ち砕かれるのであった。 目指すは地獄の楽園ってなんじゃそりゃ! 大したスキルも無い! チートも無い! あるのは理不尽と不条理だけ! 箱庭から始まる俺の地獄(ヘル)どうぞお楽しみください。 【本作は小説家になろう様、カクヨム様でも同時更新中です】

俺と幼女とエクスカリバー

鏡紫郎
ファンタジー
憧れた世界で人をやめ、彼女と出会い、そして俺は初めてあたりまえの恋におちた。 見知らぬ少女を助け死んだ俺こと明石徹(アカシトオル)は、中二病をこじらせ意気揚々と異世界転生を果たしたものの、目覚めるとなんと一本の「剣」になっていた。 最初の持ち主に使いものにならないという理由であっさりと捨てられ、途方に暮れる俺の目の前に現れたのは……なんと幼女!? しかもこの幼女俺を復讐のために使うとか言ってるし、でもでも意思疎通ができるのは彼女だけで……一体この先どうなっちゃうの!? 剣になった少年と無口な幼女の冒険譚、ここに開幕

性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。

狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。 街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。 彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)

【画像あり】転生双子の異世界生活~株式会社SETA異世界派遣部・異世界ナーゴ編~

BIRD
ファンタジー
【転生者モチ編あらすじ】 異世界を再現したテーマパーク・プルミエタウンで働いていた兼業漫画家の俺。 原稿を仕上げた後、床で寝落ちた相方をベッドに引きずり上げて一緒に眠っていたら、本物の異世界に転移してしまった。 初めての異世界転移で容姿が変わり、日本での名前と姿は記憶から消えている。 転移先は前世で暮らした世界で、俺と相方の前世は双子だった。 前世の記憶は無いのに、時折感じる不安と哀しみ。 相方は眠っているだけなのに、何故か毎晩生存確認してしまう。 その原因は、相方の前世にあるような? 「ニンゲン」によって一度滅びた世界。 二足歩行の猫たちが文明を築いている時代。 それを見守る千年の寿命をもつ「世界樹の民」。 双子の勇者の転生者たちの物語です。 現世は親友、前世は双子の兄弟、2人の関係の変化と、異世界生活を書きました。 画像は作者が遊んでいるネトゲで作成したキャラや、石垣島の風景を使ったりしています。 AI生成した画像も合成に使うことがあります。 編集ソフトは全てフォトショップ使用です。 得られるスコア収益は「島猫たちのエピソード」と同じく、保護猫たちのために使わせて頂きます。 2024.4.19 モチ編スタート 5.14 モチ編完結。 5.15 イオ編スタート。 5.31 イオ編完結。 8.1 ファンタジー大賞エントリーに伴い、加筆開始 8.21 前世編開始 9.14 前世編完結 9.15 イオ視点のエピソード開始 9.20 イオ視点のエピソード完結 9.21 翔が書いた物語開始

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

【完結】暁の荒野

Lesewolf
ファンタジー
少女は、実姉のように慕うレイスに戦闘を習い、普通ではない集団で普通ではない生活を送っていた。 いつしか周囲は朱から白銀染まった。 西暦1950年、大戦後の混乱が続く世界。 スイスの旧都市シュタイン・アム・ラインで、フローリストの見習いとして忙しい日々を送っている赤毛の女性マリア。 謎が多くも頼りになる女性、ティニアに感謝しつつ、懸命に生きようとする人々と関わっていく。その様を穏やかだと感じれば感じるほど、かつての少女マリアは普通ではない自問自答を始めてしまうのだ。 Nolaノベル様、アルファポリス様にて投稿しております。執筆はNola(エディタツール)です。 Nolaノベル様、カクヨム様、アルファポリス様の順番で投稿しております。 キャラクターイラスト:はちれお様 ===== 別で投稿している「暁の草原」と連動しています。 どちらから読んでいただいても、どちらかだけ読んでいただいても、問題ないように書く予定でおります。読むかどうかはお任せですので、おいて行かれているキャラクターの気持ちを知りたい方はどちらかだけ読んでもらえたらいいかなと思います。 面倒な方は「暁の荒野」からどうぞ! ※「暁の草原」、「暁の荒野」共に残酷描写がございます。ご注意ください。 ===== この物語はフィクションであり、実在の人物、国、団体等とは関係ありません。

俺は普通の高校生なので、

雨ノ千雨
ファンタジー
普通の高校生として生きていく。その為の手段は問わない。

お兄様のためならば、手段を選んでいられません!

山下真響
ファンタジー
伯爵令嬢のティラミスは実兄で病弱の美青年カカオを愛している。「お兄様のお相手(男性)は私が探します。お兄様を幸せするのはこの私!」暴走する妹を止められる人は誰もいない。 ★魔力が出てきます。 ★よくある中世ヨーロッパ風の世界観で冒険者や魔物も出てきます。 ★BL要素はライトすぎるのでタグはつけていません。 ★いずれまともな恋愛も出てくる予定です。どうぞ気長にお待ちください。

処理中です...