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最終兵器

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 翌朝になりワーリンの熱はすっかり治まった。《感知》で診ても問題無さそう。魔力臓器の活性にはまだ時間が掛かるだろうけど、俺の魔力も吸収されてるしトカゲの肉も食ってるしでワーリンの魔力も高まっているようだ。

「お前さん、此処にまた、ちょうだい?」

下腹部を擦りながら意味深な発言をするワーリンだが、魔力だよ?魔力。けど昼間に熱を出されると困る。

「夜になったらな」

「此処に入ってると、何か安心するんだ」

「聞いてるだけだと如何わしく聞こえるわね」

「魔法と縁が無い者にはそう聞こえる事でございましょうね。食事の場で話す内容ではございませんよ?」

メイド長に窘められてしまった。奥ではメイド等がヒソヒソ受け攻め言っている。俺は攻め専だからね?
食事を終えて、片付けて、身形を整え出発だ。先日降った雪の影響も、休憩地の辺りまで来ると殆ど無くなり、キュルケスはお役御免。丸太になっておやすみなさい。昼食後は隊列を元に戻し、荷物車二台を先頭に、後尾の食料車の前、客車の後ろに着いた。
俺が《感知》で敵の所在を把握してるので、子供達が橇風呂に乗りたがって困る。まあ、困って居るのはメイド長とブルランさんだが。子供二人が大人二人に手を尽くし身を尽くし譲歩を勝ち取ろうと交渉しているのが聞こえてくるのだ。

「うぇっう」「ふえ~~~ん!」

あ、泣いた。最終兵器を出す程乗りたいか。そして大人は負けた。泣く子と地頭には勝てぬのだ。地頭とはシルケでは貴族と取れる。なので、泣く子で地頭の二人に敵は無かったのである。

「えへへー」「ふあー」

泣いた烏め。アルア、ハーク、ワーリンと、背の順であすなろ抱きして座り、景色を楽しんで居られる。キュルケスは客車に移送された。

「はぁ~、子供温か~い」

「僕じゃ無くて服が温かいんだよ。付与魔法が掛かってるんだ」「そだよ」

「姫様、お言葉遣いが乱れておいでですよ」

窓から小言が飛んで来るのを雑木紙に隠れてやり過ごす。残念な事に、雑木紙には遮音魔法は付与されていない。

「カケル様は言葉遣いなんて気にしません…よね?」

いちいち可愛いアルアたんの上目遣いハァハァ。けれど俺は心を鬼にする。

「俺の妻の一人は公国の王女だが、常に言葉遣いは丁寧だよ」

「わたくしがまちがっておりました。こころよりはんせいもうしあげます」

「お前さん、王様だったのかい?」

「まさか。唯の冒険者さ。アルアも公式の場ではちゃんとしているのだろう?今はそれで良いさ」

「頑張ります!」

やる気に満ちたアルアに苦笑いのハーク。そして表情に影を落とすメイド長…。そんな顔をしていると気付かれてしまうぞ?聡い子だからな。出来得れば、その者が俺より良き者であって欲しい。
木の皮を齧る鹿っぽいのやラデュと思しき兎っぽいのを愛でながら宿営地へ向かった。

「ストーム!」

宿営地の雪かきはハークが行った。キュルケスが雪を吹き散らしてるのを見て自分もやりたくなったのだろう。ちょっと表土が削れて低木が数本折れたが仕事としては充分だ。何より魔力の消費がとても少ない。

「方向を変えたストームの二重掛けね、凄いわ」

「浮かせてから飛ばす。上手いな本当に」

「えへ。車動かす時は何時もこんな感じだよ?」

「車、ですか?」

そう言えばキュルケスはスクリューバードを知らなかったな。

「車の玩具だよ。カケルに貰ったんだ」

「坊っちゃま、此方に」

持って来てたのかい。スクリューバードを受け取ったハークの目にレーサーの炎が灯った。

「見ててね。行くよっスクリューバード!」

フシャーっとホイールを回すスクリューバードだが、それ四重掛けだよな?キュルケスも理解したようで、え?って顔してる。走り出すと上からダウンフォースまで与えてるよ。五重掛けか!
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