380 / 1,519
最終兵器
しおりを挟む翌朝になりワーリンの熱はすっかり治まった。《感知》で診ても問題無さそう。魔力臓器の活性にはまだ時間が掛かるだろうけど、俺の魔力も吸収されてるしトカゲの肉も食ってるしでワーリンの魔力も高まっているようだ。
「お前さん、此処にまた、ちょうだい?」
下腹部を擦りながら意味深な発言をするワーリンだが、魔力だよ?魔力。けど昼間に熱を出されると困る。
「夜になったらな」
「此処に入ってると、何か安心するんだ」
「聞いてるだけだと如何わしく聞こえるわね」
「魔法と縁が無い者にはそう聞こえる事でございましょうね。食事の場で話す内容ではございませんよ?」
メイド長に窘められてしまった。奥ではメイド等がヒソヒソ受け攻め言っている。俺は攻め専だからね?
食事を終えて、片付けて、身形を整え出発だ。先日降った雪の影響も、休憩地の辺りまで来ると殆ど無くなり、キュルケスはお役御免。丸太になっておやすみなさい。昼食後は隊列を元に戻し、荷物車二台を先頭に、後尾の食料車の前、客車の後ろに着いた。
俺が《感知》で敵の所在を把握してるので、子供達が橇風呂に乗りたがって困る。まあ、困って居るのはメイド長とブルランさんだが。子供二人が大人二人に手を尽くし身を尽くし譲歩を勝ち取ろうと交渉しているのが聞こえてくるのだ。
「うぇっう」「ふえ~~~ん!」
あ、泣いた。最終兵器を出す程乗りたいか。そして大人は負けた。泣く子と地頭には勝てぬのだ。地頭とはシルケでは貴族と取れる。なので、泣く子で地頭の二人に敵は無かったのである。
「えへへー」「ふあー」
泣いた烏め。アルア、ハーク、ワーリンと、背の順であすなろ抱きして座り、景色を楽しんで居られる。キュルケスは客車に移送された。
「はぁ~、子供温か~い」
「僕じゃ無くて服が温かいんだよ。付与魔法が掛かってるんだ」「そだよ」
「姫様、お言葉遣いが乱れておいでですよ」
窓から小言が飛んで来るのを雑木紙に隠れてやり過ごす。残念な事に、雑木紙には遮音魔法は付与されていない。
「カケル様は言葉遣いなんて気にしません…よね?」
いちいち可愛いアルアたんの上目遣いハァハァ。けれど俺は心を鬼にする。
「俺の妻の一人は公国の王女だが、常に言葉遣いは丁寧だよ」
「わたくしがまちがっておりました。こころよりはんせいもうしあげます」
「お前さん、王様だったのかい?」
「まさか。唯の冒険者さ。アルアも公式の場ではちゃんとしているのだろう?今はそれで良いさ」
「頑張ります!」
やる気に満ちたアルアに苦笑いのハーク。そして表情に影を落とすメイド長…。そんな顔をしていると気付かれてしまうぞ?聡い子だからな。出来得れば、その者が俺より良き者であって欲しい。
木の皮を齧る鹿っぽいのやラデュと思しき兎っぽいのを愛でながら宿営地へ向かった。
「ストーム!」
宿営地の雪かきはハークが行った。キュルケスが雪を吹き散らしてるのを見て自分もやりたくなったのだろう。ちょっと表土が削れて低木が数本折れたが仕事としては充分だ。何より魔力の消費がとても少ない。
「方向を変えたストームの二重掛けね、凄いわ」
「浮かせてから飛ばす。上手いな本当に」
「えへ。車動かす時は何時もこんな感じだよ?」
「車、ですか?」
そう言えばキュルケスはスクリューバードを知らなかったな。
「車の玩具だよ。カケルに貰ったんだ」
「坊っちゃま、此方に」
持って来てたのかい。スクリューバードを受け取ったハークの目にレーサーの炎が灯った。
「見ててね。行くよっスクリューバード!」
フシャーっとホイールを回すスクリューバードだが、それ四重掛けだよな?キュルケスも理解したようで、え?って顔してる。走り出すと上からダウンフォースまで与えてるよ。五重掛けか!
0
お気に入りに追加
133
あなたにおすすめの小説
月が導く異世界道中extra
あずみ 圭
ファンタジー
月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。
真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。
彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。
これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。
こちらは月が導く異世界道中番外編になります。
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第二章シャーカ王国編
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
特殊スキル持ちの低ランク冒険者の少年は、勇者パーティーから追い出される際に散々罵しった癖に能力が惜しくなって戻れって…頭は大丈夫か?
アノマロカリス
ファンタジー
少年テイトは特殊スキルの持ち主だった。
どんなスキルかというと…?
本人でも把握出来ない程に多いスキルなのだが、パーティーでは大して役には立たなかった。
パーティーで役立つスキルといえば、【獲得経験値数○倍】という物だった。
だが、このスキルには欠点が有り…テイトに経験値がほとんど入らない代わりに、メンバーには大量に作用するという物だった。
テイトの村で育った子供達で冒険者になり、パーティーを組んで活躍し、更にはリーダーが国王陛下に認められて勇者の称号を得た。
勇者パーティーは、活躍の場を広げて有名になる一方…レベルやランクがいつまでも低いテイトを疎ましく思っていた。
そしてリーダーは、テイトをパーティーから追い出した。
ところが…勇者パーティーはのちに後悔する事になる。
テイトのスキルの【獲得経験値数○倍】の本当の効果を…
8月5日0:30…
HOTランキング3位に浮上しました。
8月5日5:00…
HOTランキング2位になりました!
8月5日13:00…
HOTランキング1位になりました(๑╹ω╹๑ )
皆様の応援のおかげです(つД`)ノ
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
こちらの世界でも図太く生きていきます
柚子ライム
ファンタジー
銀座を歩いていたら異世界に!?
若返って異世界デビュー。
がんばって生きていこうと思います。
のんびり更新になる予定。
気長にお付き合いいただけると幸いです。
★加筆修正中★
なろう様にも掲載しています。
『モンスターカード!』で、ゲットしてみたらエロいお姉さんになりました。
ぬこぬっくぬこ
ファンタジー
えっ、なんで?なんで絵柄が――――バニーガールなの?
おかしい、ゲットしたのはうさぎのモンスターだったはず…
『モンスターカード』というスキルがある。
それは、弱ったモンスターをカードに取り込む事により、いつでも、どこにでも呼び出す事が出来るようになる神スキルだ。
だがしかし、実際に取り込んでみるとなぜか現物と掛け離れたものがカードに描かれている。
「もしかしてこれは、ゲットしたらエロいお姉さんになる18禁モンスターカード!?」
注)当作品は決してエロいお話ではありません☆
小説家になろう様、カクヨム様でも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる