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唯の土魔法

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 歓声の中に潜む殺意や害意を容赦無く一気に消す。周りの市民に気付かれない程の一瞬で七十六の悪意を《収納》した。漏れが無いかを確認し、息を吐く。しかし警戒は怠らない。プロなら無心で事を成すだろうからな。アルアを撫でて落ち着かせてやろう。なでなでなでなで。撫でてる感触はあるが何処を撫でているのかは分からない。ゾーイ車はゆっくりと進み、北東の壁に突き当たり、南下する。俺達からも確認出来るようになって、周りから歓声が上がる。

「カケルさん!上!」

キュルケスが逸早く反応した。俺にも確認出来た。空から石が落ちて来る…、石に見えるが実際にはもっとデカい、巨岩だ。魔力にて生成された岩、メテオ?馬鹿らしい。唯の土魔法だ。魔力の出処を探るとかなり高い所から飛竜に乗ってる奴から出ているようだ。スキルをケチった訳じゃないが、あんな高高度から狙ってくるなんて思ってなかったからな。キュルケスお手柄いいこいいこ。飛竜を《収納》すると乗ってた奴は自由落下して行った。そのうち何処かに着地するだろう。岩?あんなモン浮かせて放置だよ。

「カケル様!」

窓を開けて身を乗り出すアルアの笑顔が眩しい。目配せして頭を下げる。アルアも理解したようで、礼を執り窓を閉めた。東門の門前で護衛依頼の冒険者が離脱する。キュルケスも名前を知ってる有名Aランクパーティだそうな。皆ジョンくん並に派手だ。
二言三言言葉を交わし、ゾーイ車は東門の中へ消えて行った。平民達も解散だ。俺は集中してて動きたくないのでもうちょい此処で屯ったむろ てよう。

 平民街とは違って貴族街は静かなものだ。騒がしいのは《威圧》の閉鎖空間の中で酸欠になり掛けてる馬鹿共だけだろう。閉鎖空間を《集結》させて、人の塊を宙に浮かせる。貴族街の敵はこれで終了だ。簡単。

「カケル様、よろしかったらお茶でも御一緒に如何かしら?」

アルアが通ったばかりだと言うのに、門の中から夫人が手招きしてる。門番さんもタジタジだ。

「ぼ、冒険者殿、この門は夕方迄閉じられる故、入るならば速やかに行動されたく」

夫人の様子からしてずっと待ってそうだし、仕方無いな。お呼ばれされよう。
門を潜ろうとして有名Aランクパーティから声を掛けられたが、無視した。と言うより構ってられない。平民街と貴族街と城の中を《感知》して、色んな場所に《威圧》して、岩や馬鹿共を浮かせたり、更には倒れたメイドを回復したりアルアを撫でたりしているのだ。もうパンク寸前である。

「ささ、どうぞ上がって?何やらお顔が優れないのね?」

「男は顔じゃないから気にすんな」

「多分、そう言う事じゃないと思うのよ?」

お顔のが優れないだけです。
屋敷に上がらせてもらったら、客間のソファーに腰掛けて色々チェックする。平民街は取り敢えず問題無さそうなので岩を《収納》して《感知》を切る。貴族街も馬鹿共を浮かせとくだけでもう良いや。これで城に集中出来るぞ。地下に居る黒幕と思しき奴等は出入口に《威圧》の壁を建てて出られなくした。紛れ込んだ奴等にはまだ動きは無い。メイド達は倒れているが回復は終わってるようなので《威圧》の玉を消した。戦闘中のブルランさんは手をこまねいているな。魔法防御に物理防御。魔法使いはこれがあるから厄介だ。ならばスキル防御はあるのかね?デルクラーヘンの周りに《威圧》の壁を《纏》わせる。動けなくなった所で関節を逆側に折って動けなくしてやった。そこをブルランさんの連打がアタタタターっと入り、動かなくなった。アルアは頭を撫でて欲しいようだ、よしよし。
 それにしても、何でこんな事するのか。これ以上首を突っ込むのはやめておこうかな。

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