366 / 1,519
のんべんだらり
しおりを挟む「義父上!ご帰還心よりお待ちしておりましたぞ」
「待っていたのなら外で待て。其方のお嬢さんは何方かな?貴様の隠し子で無い事だけは判るが」
「私はカケル様のお世話をさせて頂きますキュルケスと申します」
「む、そうか」
なんかあっさり。バサッとマントを翻し、ゾーイ車に向かって歩き出してしまった。俺も…と思ったがキュルケスが睨んでるので止めました。
上座から、義父上、ゴモランさん、俺、キュルケスと乗り込んでゾーイ車が走り出す。そんなに急ぐ必要はあるのだろうか?
あった。夕飯に間に合わせる為だなこれ。何人家族か知らないが、焼肉くらいは提供したいのだろう。
貴族街の制限速度は如何程か?そんな感じでぶっ飛ばしてデカい門前に停車した。此処からは歩きで行くそうだ。全員降りてギロチンみたいな門を抜け、走り出す貴族二人。歩くって言ってたのに競歩するでも無く普通に走ってる。置いて行かれたら不審者扱い待った無しなのでキュルケスの手を取り飛んで追い付く。
「既に貴様らが待機している体で話をしてある。なので急ぐのだ」
「流石義父上である」
追い付いた事に反応し速度を上げる貴族達。貴族ってもっとのんべんだらりとした生活送ってると思ってたよ…。
城の中を見回す事も出来ず、エントランスから最短距離と思しき速さで謁見の間に通された。
「カケル様」
何故か様付けのキュルケスが正面を見据えたまま囁く。
「謁見の作法は私を見て真似てね」
頷いて、《並列思考》をフル回転させておく。キュルケスを真似て膝を折り待つ事暫し、聞き慣れぬ野太い声に、この家の主の入室を告げられた。その後はキュルケスを真似て表を上げたり名乗ったり、トカゲの頭を出して見せたり仕舞ったり。驚きとやっかみの声が混じって聞こえていたが、正直よく覚えていない。部屋の左右から飛んで来る敵意に嫌気がさしていたのだ。お肉のお裾分けのつもりだったのに、横からの妄言で全部献上する事になってしまったし、ホント、貴族と関わるとろくな事が無い。
謁見が終わるのを告げられると、俄に奥の扉の方が騒がしくなり、扉が勢い良く開かれた。
「カケル!」
聞き馴染みのある可愛い声が、駆け寄って来て膝立ちの俺の頭を抱き締めた。
「お前達!カケルになんて事するんだ!?父上も奪うだけ奪うこいつらに何故何も言わないの!?」
「ハークよ、入室を許した覚えは無い」
そんな声にハークの魔力が膨れ上がる。
「良いんだ。元々食べてもらう為に持って来たんだ」
「それにしたって貰い過ぎだよ…」
「初めて会って話した事を覚えているか?」
少し小声でハークに告げる。
「勿論だよ」
ハークも小声で返してくれる。
「初めての仕事はしっかりこなせ。それでチャラだ」
「…解った。必ず全うするよ」
ぎゅっと抱き締め直すと静かに離れ、再び扉の奥に帰って行った。この家の主が退席し、俺達も退室する。ゴモランさん、キュルケスの後ろに並び、城を後にした。
「カケルよ、すまん!」
ジョービリン邸に寄ってライガーの肉と皮を置いてった後、ゴモラン邸に帰って来て早々、玄関前にてゴモランさんが頭を下げた。
「ははは、高い授業料と思えば大した事は無いさ」
「頑張ったわね、いいこいいこ」
メットの上から撫でられても感触が無いのだが、此処は素直に褒められておこう。
「皆おかえりー。夕飯の支度は出来てるぜー」
鎧にエプロンと言う不可思議な格好のワーリンがメイドに混じって現れた。
「貴女、何その格好?」
「飯作るの手伝ってたんだよ」
ワーリンは実家に居る頃から母の手伝いをしている良い子であった。
家主は着替えに行き、俺も借りたマントを返しに行く。キュルケスはメイド等に連れられて食堂に向かったようだ。
0
お気に入りに追加
133
あなたにおすすめの小説
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
追放シーフの成り上がり
白銀六花
ファンタジー
王都のギルドでSS級まで上り詰めた冒険者パーティー【オリオン】の一員として日々活躍するディーノ。
前衛のシーフとしてモンスターを翻弄し、回避しながらダメージを蓄積させていき、最後はパーティー全員でトドメを刺す。
これがディーノの所属するオリオンの戦い方だ。
ところが、SS級モンスター相手に命がけで戦うディーノに対し、ほぼ無傷で戦闘を終えるパーティーメンバー。
ディーノのスキル【ギフト】によってパーティーメンバーのステータスを上昇させ、パーティー内でも誰よりも戦闘に貢献していたはずなのに……
「お前、俺達の実力についてこれなくなってるんじゃねぇの?」とパーティーを追放される。
ディーノを追放し、新たな仲間とパーティーを再結成した元仲間達。
新生パーティー【ブレイブ】でクエストに出るも、以前とは違い命がけの戦闘を繰り広げ、クエストには失敗を繰り返す。
理由もわからず怒りに震え、新入りを役立たずと怒鳴りちらす元仲間達。
そしてソロの冒険者として活動し始めるとディーノは、自分のスキルを見直す事となり、S級冒険者として活躍していく事となる。
ディーノもまさか、パーティーに所属していた事で弱くなっていたなどと気付く事もなかったのだ。
それと同じく、自分がパーティーに所属していた事で仲間を弱いままにしてしまった事にも気付いてしまう。
自由気ままなソロ冒険者生活を楽しむディーノ。
そこに元仲間が会いに来て「戻って来い」?
戻る気などさらさら無いディーノはあっさりと断り、一人自由な生活を……と、思えば何故かブレイブの新人が頼って来た。
巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。
転移ですか!? どうせなら、便利に楽させて! ~役立ち少女の異世界ライフ~
ままるり
ファンタジー
女子高生、美咲瑠璃(みさきるり)は、気がつくと泉の前にたたずんでいた。
あれ? 朝学校に行こうって玄関を出たはずなのに……。
現れた女神は言う。
「あなたは、異世界に飛んできました」
……え? 帰してください。私、勇者とか聖女とか興味ないですから……。
帰還の方法がないことを知り、女神に願う。
……分かりました。私はこの世界で生きていきます。
でも、戦いたくないからチカラとかいらない。
『どうせなら便利に楽させて!』
実はチートな自称普通の少女が、周りを幸せに、いや、巻き込みながら成長していく冒険ストーリー。
便利に生きるためなら自重しない。
令嬢の想いも、王女のわがままも、剣と魔法と、現代知識で無自覚に解決!!
「あなたのお役に立てましたか?」
「そうですわね。……でも、あなたやり過ぎですわ……」
※R15は保険です。
※小説家になろう様、カクヨム様でも連載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる