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医食同源

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 ワーリンが居なければ死人が出ていたかも知れん。《威圧》を解いて魔力を抑え、ぐったりしたワーリンを抱えて床に座らせた。

「ぶはっ!はっ、はぁっ…。な、なんつー《威圧》だっ…」

荒い息を吐き出してジョンくんが感想を述べる。喋る気力があるだけ大した者だ。他の者は皆ぐったりだからな。

「ジョンくん、あんまり仕事を舐めるなよ?」

「……」

項垂れるジョンくんを後目にワーリンを回復して立たせたら、倒れてるキュルケスの元に向かい回復する。

「キュルケス、ワーリンもごめんな。制御出来んかった」

「《威圧》って、レベルじゃ…、無いわね…。抱っこしてくれると、助かるんだけど」

「一階に上がりたく無いねぇ。誰も降りて来ないのが逆に不安だよ…」

気にしても仕方が無いのでキュルケスを抱えて階段を上がると、静まり返ったフロアには動けなくなった職員と冒険者が机や床に伏していた。その内起きるだろうから放置しても良いや。外には《威圧》や魔力が漏れて無いようでほっと一息。
宿に帰って寝よう。

宿に着き、各自部屋に戻ったのを見届けて、一人ベッドに横たわる。

「仕事を舐めるな、か…」

自分が言われて不快になった言葉を人に使ってしまった…。次に会ったら一言詫びよう。目を瞑り、気付いたら午後を過ぎていた。部屋の外から聞こえるノックの音で目が覚めたようだ。

「お前さーん。お昼にしないかーい?」

「今行くー」

部屋を出るとキュルケスも居て、二人で待っていた。

「寝てたのに起こしちゃってごめんね」

「俺は大丈夫。二人はもう平気か?」

「ワーリンのご飯に付き合える程度にはね」

「ご飯一杯食べれば直ぐに良くなるぞ」

医食同源。とは言え限度はあるのだが。苦笑いのキュルケスの手を取って宿を出た。
ギルド前の人集りを避けながら強面主人の店に向かう。なかなか大事になってしまったようで沢山の人がギルドを出入りしてた。
飯屋の店内もギルドでの惨事について持ち切りで、強面主人の顬がピクピクしておられる。俺はスープとソーサー、キュルケスはスープのみ具少な目。ワーリンは肉とスープとソーサーのセットに俺の焼肉を重ねてペロリと平らげてご満悦であった。

「早くランク上げてダンジョン行きたいぜー」

満腹でアヘ顔になってるワーリンが呟く。

「一度は行ってみたいわねー」

「なあキュルケスー、キュルケスは何回くらい依頼やってDとかCになったんだー?」

それは俺も聞きたい。

「んー、あんまり覚えてないけど、普段から三日に一回くらいの間隔で依頼やってたわね。半年ちょっとは続けてたかしら」

六ヶ月として三十回以上か。道程は険しいな。

「内容の濃さは皆と一緒にやった依頼の方が断然濃いけどね。野盗の討伐も、野良ゾーイ捕まえるのだって数パーティ合同だったし。ケブに壊滅させられた護衛依頼だって三パーティ分は居たのよ?」

「それでもまだ足りない感じなのなー」

「どうかしら?後少しなんじゃない?カケルさん達だけなら言えばDに上げてくれるかもだけど」

「お前さん、オレが足引っ張ってるっぽくてごめんよ?」

「ワーリンが居なかったら大好きなおっぱい枕が出来無くなるだろ」

「ああ、勘違いさせてごめんね?おっぱい枕は置いといて、ワーリンのせいじゃ無いのよ?Cランクの私に寄生してると思われてるのかもって意味ね?寄生してるのは私の方なのに」

「依頼のランク上げが出来てとても役立ってるんだがな」

「そう言ってもらえるなら有難いわ」

「明日からまたシコシコ頑張るしか無いね」

「それしか無いか」

昼食を食べ終えた俺達は買い物して帰る。ワーリンの部屋着と、二人にナイフを買ってやった。俺の大鉈は良いヤツなので、借りパクされる訳にはいかんのだ。
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