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曲っがーれ
しおりを挟む奥に進み、脇道を制圧し、略奪と殺戮を繰り返して最奥の小部屋に辿り着く。俺が煉瓦で固めたから小部屋に見えるだけで、本来は唯の行き止まりの空間だ。
部屋に詰めてた十人の野盗は問答無用でボコボコにされて、無事首になった。
「ひっひっふー、まだ…、居る?」
「……大丈夫だ。もう居ない。お宝も全部頂いたよ」
「四十九人、一人で片付けちゃったわね。ワーリンはCランクの実力あるわよ」
「オレだけの力じゃ無いけど。そうか、やったぜ」
「後は経験を積むだけだな」
「経験?」
「そうね。今回は増援が来ない状況での密室だったけど、外で足場が悪かったり、増援が来たり、逃げたり隠れたりして間合いが詰め切れない状況で、どう判断するか。そんな感じよね」
「不意打ちとか痛いからなー。あ、街道沿いに居た奴等も首にしてしまおう」
《収納》から取り出すと、吐息か声か判らぬ音を発しながら虚ろな目で棒立ちする十人が現れた。戦士の目になるワーリンを手で制す。
「私?そうね、働かないとね。…カケルさんの鉈、貸してくれます?」
「魔力は温存か?」
「切れ味良くないのよ。肉は削れると思うけどね。岩を切るなんて概念すら無かったのよ?」
「じゃあ、此処で練習してみるか」
「えー…」
的がアレなのを予想してドン引きのキュルケスであるが、殺らないとヤられて殺られるんだろ?
切るイメージが掴み切れて無いそうなので、具体的に見せてやる。煉瓦を薄い円盤にして、縁を鋭くギザギザにした物を用意した。普通に触っても切れはしないが、回転したら凶器に変わる。掌に浮かせて回転させると、的に向かって投げ付けた。円盤が腕を吹き飛ばし、血吹雪が上がる。
「傷付けたく無いなら一発でキメてみれ」
「回転する鋸みたいだったな。お前さん、あれ、刃じゃダメなの?」
「ワーリンは賢いな。刃でも良いが縁を鋭く出来無いと切れ味が落ちるんだ。それに骨が切り辛い」
「薄く…回して…切る!」
ぶれぶれの円盤が的の太ももに当たり、食い込んで止まって消えた。
「くっ、もっと早く回さなきゃ…。それに、魔力を均等に…」
ぶつぶつ言いながらも魔力を練って、綺麗に回る円盤を作り出した。
「良い感じだ。速さよりコントロール重視で投げてみ」
「わかったわ」
キュルケスが放った円盤が、的の首をゆっくりと切り離した。
「ふぅ…。刃物の方が早いわね」
「そもそも早く打ち出す魔法じゃ無いしな。木を伐採する為に出来た魔法だし。慣れれば岩も切れるようになるさ」
「遅いおかげでまだ飛んでるよ?」
「まだ使えるわね。んっ、くう…曲っがーれ…」
スパスパと二つ首を切り飛ばして円盤は消えた。余力は残したいのでここまでにしよう。残りは俺が斬りました。
煉瓦で穴を埋めながら来た道を戻り、入口には更に土砂をぶちまけておく。これで野盗やモンスターが住み着く事は無くなった。
飛ぶ練習をしながら宿営地に戻り、此処を中心として、街までの範囲に野盗が居ないのを確認した。
「良し。今回はこれにて帰還しよう」
「「はーーい」」
キュルケスと手を繋ぎ、ワーリンを背負って再び空に上がった。
遊び過ぎて昼飯を食いそびれた夕方。ギルドの買取カウンターで首を確認してもらう。五十九個もあるので今回も直接解体場に連れてかれた。
「あみゃりうろうろしちゃダメにょ?」
賞金首の資料を持った猫ちゃんが、テーブルに首を置けとの指示を出し、少しずつ取り出して置いてやる。
「顔を向けるにゃ!気持ち悪いにゃろ!」
判別し易くしたつもりだったのだがな…。
手の空いたマッチョも手伝って、全ての首を確認し、受付に移動して手続きが終わる頃にはすっかり暗くなっていた。
「私お風呂入りたい!」
「オレもー」
偶には俺も風呂屋に行くか。
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