上 下
348 / 1,519

曲っがーれ

しおりを挟む


 奥に進み、脇道を制圧し、略奪と殺戮を繰り返して最奥の小部屋に辿り着く。俺が煉瓦で固めたから小部屋に見えるだけで、本来は唯の行き止まりの空間だ。
部屋に詰めてた十人の野盗は問答無用でボコボコにされて、無事首になった。

「ひっひっふー、まだ…、居る?」

「……大丈夫だ。もう居ない。お宝も全部頂いたよ」

「四十九人、一人で片付けちゃったわね。ワーリンはCランクの実力あるわよ」

「オレだけの力じゃ無いけど。そうか、やったぜ」

「後は経験を積むだけだな」

「経験?」

「そうね。今回は増援が来ない状況での密室だったけど、外で足場が悪かったり、増援が来たり、逃げたり隠れたりして間合いが詰め切れない状況で、どう判断するか。そんな感じよね」

「不意打ちとか痛いからなー。あ、街道沿いに居た奴等も首にしてしまおう」

《収納》から取り出すと、吐息か声か判らぬ音を発しながら虚ろな目で棒立ちする十人が現れた。戦士の目になるワーリンを手で制す。

「私?そうね、働かないとね。…カケルさんの鉈、貸してくれます?」

「魔力は温存か?」

「切れ味良くないのよ。肉は削れると思うけどね。岩を切るなんて概念すら無かったのよ?」

「じゃあ、此処で練習してみるか」

「えー…」

的がアレなのを予想してドン引きのキュルケスであるが、殺らないとヤられて殺られるんだろ?
切るイメージが掴み切れて無いそうなので、具体的に見せてやる。煉瓦を薄い円盤にして、縁を鋭くギザギザにした物を用意した。普通に触っても切れはしないが、回転したら凶器に変わる。掌に浮かせて回転させると、的に向かって投げ付けた。円盤が腕を吹き飛ばし、血吹雪が上がる。

「傷付けたく無いなら一発でキメてみれ」

「回転する鋸みたいだったな。お前さん、あれ、刃じゃダメなの?」

「ワーリンは賢いな。刃でも良いが縁を鋭く出来無いと切れ味が落ちるんだ。それに骨が切り辛い」

「薄く…回して…切る!」

ぶれぶれの円盤が的の太ももに当たり、食い込んで止まって消えた。

「くっ、もっと早く回さなきゃ…。それに、魔力を均等に…」

ぶつぶつ言いながらも魔力を練って、綺麗に回る円盤を作り出した。

「良い感じだ。速さよりコントロール重視で投げてみ」

「わかったわ」

キュルケスが放った円盤が、的の首をゆっくりと切り離した。

「ふぅ…。刃物の方が早いわね」

「そもそも早く打ち出す魔法じゃ無いしな。木を伐採する為に出来た魔法だし。慣れれば岩も切れるようになるさ」

「遅いおかげでまだ飛んでるよ?」

「まだ使えるわね。んっ、くう…曲っがーれ…」

スパスパと二つ首を切り飛ばして円盤は消えた。余力は残したいのでここまでにしよう。残りは俺が斬りました。
煉瓦で穴を埋めながら来た道を戻り、入口には更に土砂をぶちまけておく。これで野盗やモンスターが住み着く事は無くなった。
飛ぶ練習をしながら宿営地に戻り、此処を中心として、街までの範囲に野盗が居ないのを確認した。

「良し。今回はこれにて帰還しよう」

「「はーーい」」

キュルケスと手を繋ぎ、ワーリンを背負って再び空に上がった。

 遊び過ぎて昼飯を食いそびれた夕方。ギルドの買取カウンターで首を確認してもらう。五十九個もあるので今回も直接解体場に連れてかれた。

「あみゃりうろうろしちゃダメにょ?」

賞金首の資料を持った猫ちゃんが、テーブルに首を置けとの指示を出し、少しずつ取り出して置いてやる。

「顔を向けるにゃ!気持ち悪いにゃろ!」

判別し易くしたつもりだったのだがな…。
手の空いたマッチョも手伝って、全ての首を確認し、受付に移動して手続きが終わる頃にはすっかり暗くなっていた。

「私お風呂入りたい!」

「オレもー」

偶には俺も風呂屋に行くか。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する

美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」 御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。 ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。 ✳︎不定期更新です。 21/12/17 1巻発売! 22/05/25 2巻発売! コミカライズ決定! 20/11/19 HOTランキング1位 ありがとうございます!

分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活

SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。 クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。 これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた! 精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

漫画の寝取り竿役に転生して真面目に生きようとしたのに、なぜかエッチな巨乳ヒロインがぐいぐい攻めてくるんだけど?

みずがめ
恋愛
目が覚めたら読んだことのあるエロ漫画の最低寝取り野郎になっていた。 なんでよりによってこんな悪役に転生してしまったんだ。最初はそう落ち込んだが、よく考えれば若いチートボディを手に入れて学生時代をやり直せる。 身体の持ち主が悪人なら意識を乗っ取ったことに心を痛める必要はない。俺がヒロインを寝取りさえしなければ、主人公は精神崩壊することなくハッピーエンドを迎えるだろう。 一時の快楽に身を委ねて他人の人生を狂わせるだなんて、そんな責任を負いたくはない。ここが現実である以上、NTRする気にはなれなかった。メインヒロインとは適切な距離を保っていこう。俺自身がお天道様の下で青春を送るために、そう固く決意した。 ……なのになぜ、俺はヒロインに誘惑されているんだ? ※他サイトでも掲載しています。 ※表紙や作中イラストは、AIイラストレーターのおしつじさん(https://twitter.com/your_shitsuji)に外注契約を通して作成していただきました。おしつじさんのAIイラストはすべて商用利用が認められたものを使用しており、また「小説活動に関する利用許諾」を許可していただいています。

処理中です...