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押して参る
しおりを挟む森の中に居る人種は比較的簡単に見付かる。街道を往く商隊に冒険者。森の中を獲物を探して彷徨う狩人に冒険者。ケブ一匹を囲んでボコってるのも居るな。街道の脇で複数人でじっとしてたり、穴の中に複数人で居るのは多分野盗か冒険者。マーキングして確認に行くと、毛皮の塊を発見した。連れションしてる冒険者じゃ無くて良かった。人数は十人、上からは丸見えだが街道の左右に隠れてて、街道の前後に一人ずつ斥候を置いて報告を待っていた。
暫くしたら商隊が来ちゃうので、此処は俺がサクッとします。
全員纏めて《収納》に入れた。
「…え?消えたんだけど?」
「後で出すよ」
「出す?どゆこと?」
「信じられない…」
理解したくないキュルケスに、理解の追い付かないワーリン。
「キュルケス分かんの?説明してくれよ」
「カケルさんの《収納》に仕舞われたんだと思う、多分」
「へー、凄いな」
「生き物は入らないって聞いた事あるんだけどね」
「生きてないから入ってるぞ」
「楽で良いけどオレも働きたい!」
「ワーリンはブレないわね」
「この人は人外だもん。そのくらい出来るさ」
「俺なんてまだまだ。龍なんて、超遠い場所に居る獲物をコレで狩るんだぜ?」
「人以上ドラゴン以下だったよな」
「そんなの絶対近付きたくないわ」
「近付く前に死んじまうよ。そろそろ商隊が来ちゃうから移動しようか」
街道沿いにはもう居ないみたい。移動しながら巣を探そう。
穴の中に居る人種なんて、宝探ししてる冒険者以外なら苗床か悪人に決まってる。モンスターが多数入ってるなら苗床だろうし、モンスターが居なければ悪人だ。
橇風呂の直下にある穴は人しか居らず、入口に二人の門番が隠れてる。即ち、当たりである。奥の方には四十七人。攫われて性処理に使われてる女は…居ないか、残念。
「この穴は皆殺しで良さそうだぞ」
「行って良いか?」
「良いぞ」
俺の言葉を受けてワーリンが飛び降りた。俺は門番の後にそっと煉瓦の壁を作り通せんぼ。突然現れたワーリンに驚く門番。そして突然出来た壁に仲間を呼ぶ事も出来ず、抵抗虚しくボコボコにされた。
「ワーリン、顔は判別出来無くなるからダメだ。ボディとか側頭部にしな」
「そだね、わかったよ」
死に掛けの二人の顔を治療して、大鉈で首を撥ねた。吹き上がる鮮血に興奮してフーフーしてるワーリンを抱いてやる。よしよしよしよし…。
「少し落ち着け。これからもっと殺すから体が持たんぞ?ひっひっふー、ひっひっふー」
「ふっふっひっひっふー、ひっひっふー…。オレが、殺ったの…?」
「俺がやったんだよ。治療してただろうが」
「落ち着いて行きましょ。中には罠もあるかも知れないし」
「うん。オレ、人の討伐は初めてなんだ…」
「冷静に、殺す事と死なない事を考えろ。モンスターを殺るのと違うのは、相手に知恵があるかどうかだけだ」
ワーリンが落ち着くのを待って中に潜入する。
「カケルさん、この壁どうにかしてよ」
「押して参る」
「押すの?」
「押すよ」
床、壁、天井をレンガに変えながら、壁を前に押し出して後を着いて行く。人も罠も、コレで封じ込められる。ある程度遮音出来るし、しかも臭くない。分かれ道に着くと壁で蓋をして、お宝は回収し、人はワーリンのサンドバッグになった。
「私の出番は無さそうね」
「魔力は温存するのが基本だろ?」
「そうなんだけどね」
ワーリンに大鉈を一本持たせ、首を狩らせる。これが出来るかどうかで食える冒険者になれるかどうか決まる。掲示板に貼ってあるのを見たが、野盗の討伐依頼はCからなんだ。転がって来た首を来た方向に蹴り転がすキュルケスは経験済みなのだろう。
「慣れては無いけど、殺らないとヤられて殺られちゃうからね」
命の安い世界、情けは己の為成らず。
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