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洗脳は禁呪
しおりを挟む野良ゾーイの群迄後五百ハーンの位置で空に上がる。匂いで気付かれなくなるし上は死角だからな。
「お手並み拝見」
「オレも見てる」
「見ても真似出来んけどな」
《感知》で確認してる十二頭を《集結》にて一箇所に集めてやると、ゆっくり集まりおしくらまんじゅうが始まる。ギュウギュウとひしめき合う迄に集まった所で弱い《洗脳》を掛けて空に浮かせる。
捕獲完了。七百二十万ヤン也。
「凄い凄い!」
「何したの?」
「浮かせるだけでも良いんだが、暴れると調教に影響が出そうだったから落ち着くように洗脳したんだ」
「魔法の洗脳は禁呪だから注意してね?スキルの洗脳なんて初めて聞くから何とも言えないけど」
「敵以外にはしないさ」
「それが良いわね」
これ以上捕まえても買い叩かれる可能性があると言うので街に戻ろう。昼飯に間に合うに越した事は無いからな。ダンジョンの五百ハーン程手前で街道に降り、野良ゾーイの背中に乗ってゾロゾロ移動します。一応、用心の為に四頭ずつ雑木製のロープで繋いで、これまた雑木製の目隠しをしてあるが、視力以外の感覚でも普通に歩けてるみたいだ。
「おいおいおい、お前等そのゾーイ多過ぎだぜ?俺達に半分よこしなー」
野盗と思うだろ?冒険者なんだぜ?パッと見五人、《感知》で八人のゴロツキ…否、野盗に囲まれてしまった。
「お前さん…」
「ヒヒッ。その犬っころ雌みたいだぜ?俺等と一緒に来いよ。良い目見させてやんぜ?」
「三人隠れてるから気を付けとくれ」
「安心しろ、バレバレだ」
「それはご愁傷様ね」
「お前ぇ等ダンジョンにも入れねぇ低ランクのクセに物分りが悪りぃみてぇだな」
「御託は良いから早く得物を抜けよ。昼飯が遅れるだろうが」
抜かせないけどな。
隠れて魔法を使おうとした奴を筆頭に、全員を《威圧》にて動けなくさせると、全員の装備を《収納》して全裸にひん剥いた。《集結》で一箇所に集めて《洗脳》し、解放した。
「お、お前さん。これどうするつもりだい?」
「此奴等は変態だから裸で街に帰ると思うぞ?」
「入れたら良いわね…」
変態共は俺達がその場から見えなくなる迄、物言わず立ち尽くしていた。
「大儲けしたわね!」
「金銭感覚狂いそうだよ…」
街の南西、ゾーイの厩舎に野良ゾーイを持って行くと、その状態の良さから報酬に色が付いた。全十二頭、内子ゾーイ三頭で八百四十万ヤン。三人で割って二百八十万ヤンをギルドにて振り込んでもらい、今はギルド横の安酒場で昼飯中である。腹が減ったワーリンの鼻にヒットした店で、量も多くて味もそれなり。店の主人が怖いのか、フラグを立てれば直ぐにでも絡んで来そうなゴロツキ顔も、目の前の肉に集中している。
ドウドウの肉を切らずに被り着くワーリンはやはり犬系獣人だな。長い舌を出しながらガジガジしてるのだが、舌を噛まないか不安になるな。一方、ちまちま切ってつまつま食べるキュルケスは何だかエビやカニみたいだ。歯に詰まるのが嫌だと言う。
お腹一杯。客も増えて来たし、食後の水では一息着けないので宿に戻ってお茶にしよう。道具屋で獣人をダメにしないお茶っ葉を買って帰路に着いた。
「くぅ~ん、お前さぁん」
俺の部屋に集まりお湯を沸かす間、ワーリンにデレられた。背中を俺の胸に擦り付けてくねくねすりすり。ちゃんと獣人をダメにしないお茶っ葉を買ったんだがなぁ。
「よーしよしよし。しかし随分とデレデレしてるな」
「ご飯をお腹一杯食べられたからじゃない?」
「そうなのか?」
「違うけど、違わないかも?」
「もしかして、発情期とか?獣人の事詳しくないけどそう言うのあるんでしょ?」
「人とラビアンは万年発情期だが、ワーリンの種族はどうなんだろうな」
「わう~、子供は雪の降り始めくらいによく産まれてたかもぉ?」
季節感が分からないから何時が発情期か分からない。
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