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ケブの巣

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 キュルケスの部屋の前に着き、家主から忠告を賜わる。

「部屋に灯り無いから、躓かないように気を付けて」

照明はケブに捕まった時に紛失したんだと。鎧戸を閉じてあるので入口を閉めたら外より暗い、真っ暗だ。

「灯り着けるから暫し待て」

「助かるわ」

光の棒を天井付近に浮かせて灯りを灯す。女部屋とは思えぬ汚部屋だった。

「ケブの巣かな?」

「私の部屋よ!」

「物はともかく埃が酷いよ。お前さん、洗っとくれ、くしゃみ出そう!」

埃を巻き上げると大変だ。直ぐ様《洗浄》した。

「「冷た!」」

…服もキレイになっちゃった。

「洗濯物、キレイになって助かるわ…。寒いけど」

「二人共すまん。鍋にお湯沸かすから足の踏み場を確保してくれ」

「お前さん、パンツ踏んでるよ」

「おうふ」

ふわりと浮いて、《収納》から鉄板と水の棒を取り出すと、煉瓦で鍋を作って湯を沸かす。

「カケルさんの《収納》で全部仕舞ってくれない?どうせ明日には出るんだし」

「汗拭こうとして取り出したらパンツでしたってオチが見えるぞ?」

「…分かったわよ。鞄に詰める間だけで良いからお願い」

部屋に散らかる色んな物を片っ端から《収納》し、鞄を出してやった。

「何て事だい、あんなに散らかってた部屋が一瞬で何も無い空間に早変わりしたよ」

「服を少しずつ出すから、どんどん仕舞って行くぞー」

「お願いね。後、ベッドと椅子とテーブルは此処のだから、持ってかないでね」

「荷物が片付いたら出すよ。先ずはパンツからな」

小さく畳める物から次々出して行き、下着と部屋着で鞄は一杯になってしまった。

「終わったわね」

「終わってねーよ。外着が全くの手付かずだよ」

「そんなに服持ってたかしら…」

「出すぞ?」

「…ごめんなさい、持ってました。けど鞄が無いのよ」

「明日鞄を買って、移動先で詰めようや。オレお腹空いたよ」

「それしか無いか。飯にしよう」

部屋にベッドと家具を配置したら再び一列で降りて行った。RPG感を出したいのでは無く、廊下が狭いのだ。フリフリとペニスケに当たるワーリンの尻尾がモフモフで撫でたい。

「ワーリン、後で尻尾撫でて良いか?」

「んもう、馬鹿」

尻尾ビンタがペニスケに当たり捲ってる。それは嬉しい表現なのだろうか?一階の食堂にて夕飯を食べ、再び部屋に戻って来た。

「部屋が暖かいのはありがたいわー」

「飲みそびれたお湯をそのままにして出ちゃったんだな」

グツグツと沸き立つ鍋の蒸気で結露になりそうだが、暖かさには替えられない。水を足して温めとこう。

「それにしてもカケルさん、やっぱり三人でこのベッドじゃ狭いわね…」

「暖かいし、オレは床でも良いぜ?」

「俺は浮けるぜ?」

「ちょっと止めてよ。私が追い出したみたいじゃない」

「まあまあ、冗談だ。寝床くらい作ってやるよ。ちょっと端に寄ってな」

家具を一旦仕舞ったら、雑木の板を箱型に。箱の中にはおが屑を敷き詰めて、上から厚目の雑木紙を数枚敷いてベッドの完成だ。ワーリンの巨体も伸び伸び寝られるサイズに仕上がって、テーブルと椅子を置いたら歩くスペースはほぼ無い。

「木の塊に見えるけど…」

「これは布なのかい?板なのに柔らかいんだね」

「強度は木と変わらないから無理に引っ張ったりしないでくれよ」

ベッドに乗り上げ、雑木紙を畳んで枕を作って横になる。

「良い出来だ。何より素早く出来るのが良い」

「掛け布団も木なのに結構温かいのね」

「気に入ってもらえたかな?」

「枕は、お前さんの腕枕じゃ…ダメかい?」

「此処、壁薄いから今夜は大人しく寝ましょ?」

「仕方ないねぇ」

少しだけ乳繰り合って尻尾を撫でたりしたら、三人川の字になって直ぐに寝てしまった。
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