上 下
320 / 1,519

高校の修学旅行

しおりを挟む


 宛も無く飛びながら、俺は寝ていた。全身を覆う海竜の皮は高高度の高速移動にも余裕のある保温性でついウトウトしてしまったのだ。温かさに包まれて惰眠を貪り目を開けると雪国であった。

「イゼッタに以前聞いた気がするな…」

寒いのは嫌だと言う理由で行先から除外された大陸で、名前は何だったか思い出せない。日はまだ高いが食い物と寝床を確保したいので取り敢えず街を探そう。ダンジョン都市があるなら行ってみたくなるのが冒険者と言う物だろう、多分。

ダンジョン都市に向かう指示を出すと体が横に押されだした。あるのかダンジョン都市。向かう先は針葉樹っぽい、尖った木々の立ち並ぶ森が続く。樹冠の上迄降下して移動すると、意外と短い木である事が伺えた。若しくは積もった雪で埋もれているのか?
スキーは高校の修学旅行で行ったっきりだなぁ。野球に諦めが付いた頃で、スキーそっちのけで雪合戦してた思い出がある。枕を投げて投げた枕を破壊してしまったのも今では良い思い出だ。飛び散った蕎麦殻を掻き集める姿を見たクラスメイトに甲子園の負けチームみたいだと笑われたっけな。

過去を思って感慨に耽って居ると、少しずつ壁が見えて来た。木が同じ高さなら、大体八キロは先って事か。一キロ手前迄飛んだら後は歩いて行こう。
更に飛んで行くと、街道らしき広がりが見えた。伐採した道幅は結構広いが、積もった雪を避けてあるので歩ける道幅は五ハーンそこらだろう。轍が二本あるので片側一車線って事だな。
あ、轍の上にうんこ落ちてる。ホカホカでは無いが凍って無いのが鼻で分かる。足跡から見て前に居るみたい。絡まれたく無いからゆっくり行こう…。

左右は雪の壁。野盗や野獣だって寒い中狩りをするのは嫌な筈、と思っていた時期が私にもありました。絡まれたく無いなんて思うからフラグが建つんだよ俺のバカぁ。雪の壁の上から商隊の荷車に向けて矢を射掛ける毛皮の塊達。多分絶対野盗だろう。
荷車からは誰も出ず、籠城の構え。しかし荷車を曳いてた獣は横になっているし、荷物を置いて闇に紛れて徒歩で逃げる考えか?それとも伝書鳩的な鳥を飛ばして助けを呼んであるのか。何方にしても中の人等は肝を冷やしている事だろう。

「ぬっ!何だてめぇは!?」

「やっと気付いたか。旅の者だ」

「へ、へへっ、てめぇ一人で助太刀かぁ?」

「頼まれても無いのにするかよ。敵対するなら相手してやっても良いが、お前等の賞金なんてあるかどうかも分からんし、この商隊が得するだけだから出来れば俺には構うな」

「威勢が良いじゃねぇか!」

「お前等は消極的だな。とっとと降りて来て扉をこじ開けて女ぁ犯したり男を殺したりすりゃあ良いのに」

「いやー!」「お助けー!!」

中からそんな声がする。ガチャガチャする音は夜明け前に宿屋からする音だ。護衛も何人かは入ってるのだろうな。《感知》で中を見てみるとそれなりに強い奴も居るじゃないか。雪国生まれはビビりが多いのか?

「中に居る護衛、聞こえるか?此奴等大した事無いぞ。ちゃんと給料分の仕事しろー」

「てめぇ!面倒事増やすんじゃねえ!!」

野盗共から何故かブーイングを受けた。解せぬ。

「誰かが死ねば貰いが多くなるぜ?ほれほれ、どっちもとっとと戦う準備しろって」

荷車の壁を叩いて急かす。俺だってそんなに暇じゃ無いのだよ。

「開けたら矢が…」

「飛んで来てから言えバカモン。俺が来てから一発も飛んで来てねーだろーが。バーンと開けれ、バーンと」

「ばーん…」

口で言いながら出て来たのは、うちの少年隊程しか無いお子様でした。多分、男の子、かな?ズボンだし。見た目が良いのでどっちかわからん。

けど俺を除いたこの連中の中で、此奴が一番強いんだ。それこそ見た目じゃわからんな。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

俺の性癖は間違っていない!~巨乳エルフに挟まれて俺はもう我慢の限界です!~

一ノ瀬 彩音
ファンタジー
ある日突然、見知らぬ世界へと転移してしまった主人公。 元の世界に戻る方法を探していると、とある森で偶然にも美女なエルフと出会う。 だが彼女はとんでもない爆弾を抱えていた……そう、それは彼女の胸だ。 どうやらこの世界では大きな胸に魅力を感じる人間が 少ないらしく(主人公は大好物)彼女達はコンプレックスを抱えている様子だった。 果たして主人公の運命とは!? ※この物語はフィクションです。 R18作品ですので性描写などが苦手なお方や未成年のお方はご遠慮下さい。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

追放シーフの成り上がり

白銀六花
ファンタジー
王都のギルドでSS級まで上り詰めた冒険者パーティー【オリオン】の一員として日々活躍するディーノ。 前衛のシーフとしてモンスターを翻弄し、回避しながらダメージを蓄積させていき、最後はパーティー全員でトドメを刺す。 これがディーノの所属するオリオンの戦い方だ。 ところが、SS級モンスター相手に命がけで戦うディーノに対し、ほぼ無傷で戦闘を終えるパーティーメンバー。 ディーノのスキル【ギフト】によってパーティーメンバーのステータスを上昇させ、パーティー内でも誰よりも戦闘に貢献していたはずなのに…… 「お前、俺達の実力についてこれなくなってるんじゃねぇの?」とパーティーを追放される。 ディーノを追放し、新たな仲間とパーティーを再結成した元仲間達。 新生パーティー【ブレイブ】でクエストに出るも、以前とは違い命がけの戦闘を繰り広げ、クエストには失敗を繰り返す。 理由もわからず怒りに震え、新入りを役立たずと怒鳴りちらす元仲間達。 そしてソロの冒険者として活動し始めるとディーノは、自分のスキルを見直す事となり、S級冒険者として活躍していく事となる。 ディーノもまさか、パーティーに所属していた事で弱くなっていたなどと気付く事もなかったのだ。 それと同じく、自分がパーティーに所属していた事で仲間を弱いままにしてしまった事にも気付いてしまう。 自由気ままなソロ冒険者生活を楽しむディーノ。 そこに元仲間が会いに来て「戻って来い」? 戻る気などさらさら無いディーノはあっさりと断り、一人自由な生活を……と、思えば何故かブレイブの新人が頼って来た。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

処理中です...