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鍛え抜いた己の拳
しおりを挟む二人乗りとは言うが、実際は一人乗りのノーズコーンだ。少人数乗りの高速移動用輸送機を作らねばならなくなってしまった。島迄の使い切りでも良いし、イゼッタが気に入ったらくれてやっても良いかもな。二人を置いて先に寝具店を後にした俺は、一人南の森に入って行った。
南の森は比較的日照があるので木が真っ直ぐ伸びている。捏ねくり回して雑木材にしちゃうのであまり関係は無いが、以前イゼッタに刺客毎切らせたのが良き感じに転がっているので、太いのを数本頂いてカロ邸に帰って来た。
「今度は何を作られるのですか?」
「荷車持って来るのを忘れてなー、簡単なのを作ろうかと」
何時もの装備に着替えてカロ邸の裏庭へ。洗濯物を取り込むアルネスに怪訝な顔をされたがタマゲル小屋もちゃんと取り壊すので許して下さい。
《収納》に入ってる枯木から樹皮と枯葉を取り除いて取り出すと、艶やかな木肌の材木が現れる。キレイに板材にして使いたいが、道具の殆どはテイカが持っているので、使えるのはスキルと鉈、そして鍛え抜いた己の拳だけだ。
木材を一本、《伸縮》で捏ね回して八×八ハーン白木色の四角い板にした。厚みは二ドン程なのでこのまま使えそうだな。両辺をくっ付けて管状にしたら、回転を掛けて開口部を押し込み穴を狭めて行く。素手だと摩擦で熱いので、鉈の腹で押し込むと先端に丸みを帯びた円錐が出来上がった。内側を確認すると結構凸凹してるので、回転させたまま内側も鉈で撫で付けて、キレイでつるつるなノーズコーンにしてやった。
「カケル様、サミイさん達が戻られましたよ」
「お魚みたいですね、それ」
「お、中々鋭いじゃないかサミイよ。空気抵抗を減らすにはこう言う形が良いんだ」
「丸いと座り難くはありませんか?」
「そうだな。座る側には板を張って平らにするぞ。窓と入口も付けるしな」
円筒の内側に、新たな白木材を練って作った角材を貼り付けて板で床張りすると一気に部屋っぽくなった。次の作業の前に、一旦此処で作業を止めて、直線を引く為の治具作り。細い角材を三角にするだけだ。それを大小二つと、垂線を引く為のT型定規を一つ作った。
「カケル様は器用なのですね」
「デザインセンスは無いけどなー」
「シンプルで使い易いって、奥さん方が言ってましたよ」
報われた所で引き続き作業再開だ。窓を付けるための穴を開ける。鉈と治具で四角く穴を開けて、Rを合わせたゲル版を埋め込んだ。円筒の左右各二ヶ所と、ノーズコーンは前二ヶ所と下一ヶ所を取り付けた。
「んー、外から中が見えにくいです」
下向きの窓からサミイが覗いてるのが内側からは良く見える。
「明るさが違うと暗い方が見えなくなるのだよ」
「へぇー」
「カケル様、アルネスさんがお茶を淹れてくれましたよ」
お盆にお茶を乗せて来たシャリーと、覗きに集中しているサミイを中に招いてお茶の時間となった。
「さっきとは逆で外がよく見えますねー」
「敷物が欲しいな。挨拶がてら後で買いに行こう」
「お買い上げありがとうございます!」
「サミイ様のお店って絨毯等置いてましたっけ?」
「旦那さまはこう言う時、大体毛布かクッションなので問題無いのですよ」
絨毯は、絨毯としてしか使えないからなぁ。その点フェルトは有能だ、加工しないとエロい事になるけどな。
お茶を飲んだら入口作り。先ずは壁として、円筒に嵌るよう丸く切った板を嵌め込んだら、入口を四角く切り出し更に縦半分に。ドアノブと、更にゲル版で窓も付けておこう。丁番の収まる凹みを付けたら鉄釘で止め、内側に閂を付けたら硬化させて背面が完成した。
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