274 / 1,519
知らない女
しおりを挟むこの日の夜も特に問題は起きなかったようで、明けて翌日。家に戻りたいと言うサミイと、一緒に居たいカラクレナイ、そして依頼料を受け取りに行く俺が出勤のカロと護衛と馭者を務めるアルネスと共に家を出た。ホルスト車を使うのは今日迄だろう。何か可愛く思えて来ただけに少し寂しい。
ホルスト車の後ろを付いて行く。街は居残りの荒くれ者が居るもののとても静かだ。
「店閉まってて露店も無いのに、彼奴等何食ってんだろうな」
「携帯食料じゃない?」
「外で狩りでもしてるのでは?」
狩りをさせてるのは《感知》で見てたけど、殆ど元戦闘奴隷に配ってたみたいなんだよな。荒くれ者とは謎に包まれた生態をしている生き物である。
ギルドに入ると久しぶりにすげー見られる。以前トカゲの皮を持って来た時くらいだろうか。俺の後ろではカラクレナイを装備したサミイがしがみついて怯えてる。
安心しろ、お前がこの場で一番強いから。
見て来るのは居座り組の荒くれ冒険者達だ。カラクレナイを見たら先日のあれを連想しない訳が無いよな。親戚だもの当たり前だが似てるからなぁ、赤いけど。
カロの指示を受けた受付嬢に依頼料を受け取り、俺とリュネのギルド証を更新してもらった。予定通りEランクに上がっちゃったぜ。
因みに、リュネが来なかったのは寝惚けてグズってたからだ。きっと慣れない仕事で疲れたのだろう。カラクレナイがグアグア言っても起きなかったので本物だ。多分。
ギルドでの用が済んだらシトンとアズは慣れた手付きで依頼を剥がしてささっと受付を済ませたらギルドを出て行った。俺とサミイとカラクレナイは寝具店に移動する。
「パパ達が襲われたりしてないか、ちょっと心配だったんです」
「良い時に来られて良かったよ」
裏口に入ってただいまーっとサミイが声を掛けるとママ上殿が出迎えてくれた。
「おかえりなさいカケル様、カララちゃん。サミイも」
「ママー」「クァアー」
俺も飛び付いてママみを味わいたい!が、俺は我慢の出来る子、飛び付かない。体を動けなくされて飛び付けないからでは決して無い。
「カラクレナイー、リュネが動きを封じる助けてー」
「ギュェーギャーイ」
リュネの霊圧が、消えた。よしよし。でも飛び付いたりはしないぞ?
「奥様、此方の方々は?」
ママ上殿の後ろから、知らない女が現れた。聞くと、昨日から住み込みで働く事になった元戦闘奴隷だそうで、名前はエージャだそうだ。くすんだ金髪に慎ましいお胸で男の子に見えなくも無いが、線の柔らかさは女のそれだ。結構細いのに戦闘奴隷だったのは驚きだが、身のこなしに隙は無い。結構やるようだな。
ママ上殿を介して紹介されて、客間でお茶を頂きます。サミイ達は自室で着替えをしてる筈。《洗浄》してるとは言え同じ服を着続けるのは嫌みたい。俺を含めて島の住民は着たきり雀だな。洗い替えを用意したらきっと喜ぶな。
「あの」
物思いに耽っていると、お茶を持ってエージャが入って来た。ノックはした方が良いぞ?
置かれたお茶を一啜り。
「ありがとう。それで?」
「貴方は冒険者ですか?」
「冒険者に見えないか?」
「店で働かないのですか?」
「それは今直ぐ店を手伝えと言う意味か?それとも冒険者を辞めて此処でサミイと住んで働けと言う意味か?」
「両方です」
「今直ぐ手伝うのは構わんが、外貨を稼ぐ方が金になるし、外に家を作ってしまったからな。それに、家に帰らないと皆が寂しがる」
「領地持ちの貴族様でしたか」
「唯の冒険者だよ」
「唯の冒険者が騎龍の雛を従えているのは無理があると思いますが?」
「冒険者やってりゃそう言う事の一つや二つあるさ」
「はぁ。無いとは言い切れませんね。言い切れはしませんが…」
「羨ましいだろー」
「私の人生よりは、ずっと」
お茶のお供に愚痴くらい聞いてやろう。
0
お気に入りに追加
134
あなたにおすすめの小説
RiCE CAkE ODySSEy
心絵マシテ
ファンタジー
月舘萌知には、決して誰にも知られてならない秘密がある。
それは、魔術師の家系生まれであることと魔力を有する身でありながらも魔術師としての才覚がまったくないという、ちょっぴり残念な秘密。
特別な事情もあいまって学生生活という日常すらどこか危うく、周囲との交友関係を上手くきずけない。
そんな日々を悶々と過ごす彼女だが、ある事がきっかけで窮地に立たされてしまう。
間一髪のところで救ってくれたのは、現役の学生アイドルであり憧れのクラスメイト、小鳩篠。
そのことで夢見心地になる萌知に篠は自身の正体を打ち明かす。
【魔道具の天秤を使い、この世界の裏に存在する隠世に行って欲しい】
そう、仄めかす篠に萌知は首を横に振るう。
しかし、一度動きだした運命の輪は止まらず、篠を守ろうとした彼女は凶弾に倒れてしまう。
起動した天秤の力により隠世に飛ばされ、記憶の大半を失ってしまった萌知。
右も左も分からない絶望的な状況化であるも突如、魔法の開花に至る。
魔術師としてではなく魔導士としての覚醒。
記憶と帰路を探す為、少女の旅程冒険譚が今、開幕する。
性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。
狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。
街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。
彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します
潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる!
トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。
アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。
第三王子に転生したけど、その国は滅亡直後だった
秋空碧
ファンタジー
人格の九割は、脳によって形作られているという。だが、裏を返せば、残りの一割は肉体とは別に存在することになる
この世界に輪廻転生があるとして、人が前世の記憶を持っていないのは――
異世界帰りの【S級テイマー】、学校で噂の美少女達が全員【人外】だと気付く
虎戸リア
ファンタジー
過去のトラウマで女性が苦手となった陰キャ男子――石瀬一里<せきせ・いちり>、高校二年生。
彼はひょんな事から異世界に転移し、ビーストテイマーの≪ギフト≫を女神から授かった。そして勇者パーティに同行し、長い旅の末、魔王を討ち滅ぼしたのだ。
現代日本に戻ってきた一里は、憂鬱になりながらも再び高校生活を送りはじめたのだが……S級テイマーであった彼はとある事に気付いてしまう。
転校生でオタクに厳しい系ギャルな犬崎紫苑<けんざきしおん>も、
後輩で陰キャなのを小馬鹿にしてくる稲荷川咲妃<いなりがわさき>も、
幼馴染みでいつも上から目線の山月琥乃美<さんげつこのみ>も、
そして男性全てを見下す生徒会長の竜韻寺レイラ<りゅういんじれいら>も、
皆、人外である事に――。
これは対人は苦手だが人外の扱いはS級の、陰キャとそれを取り巻く人外美少女達の物語だ。
・ハーレム
・ハッピーエンド
・微シリアス
*主人公がテイムなどのスキルで、ヒロインを洗脳、服従させるといった展開や描写は一切ありません。ご安心を。
*ヒロイン達は基本的に、みんな最初は感じ悪いです()
カクヨム、なろうにも投稿しております
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~
明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!!
『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。
無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。
破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。
「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」
【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる