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ぐへへ

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 屋根を伝って噴水広場の反対側に渡ろうとするも、何故か矢が飛んで来てギリギリ躱す事になる。命の取り合いをしようとしてた奴等なので敏感になってるのかな?俺の《阻害》が見破られてしまった。
それでも追い掛けて来る者は現れず、矢を射った者は姿を消して、無事アマルディの居る建物に辿り着いた。屋根から飛び降りて来たら驚かれてしまうので、一旦降りてから向かう。

「ん?何だお前は?此処はお前のような薄汚い奴の来る所じゃ無い」

「捕まりたく無ければとっとと失せろ」

呼ばれたのにこの扱いである。きっと此奴等も姿を消すのだろうな。

「アマルディに呼び出しを受けた冒険者なんだが、帰れと言われたなら帰るよ」

《阻害》を掛けて飛び上がる。目の前の男が急に消えて驚いていたが、温い生活してる奴にはちゃんと効果あるんだな。何度も飛び道具で狙われたくないので高度を上げて帰ったよ。つーか初めから飛んで行けば良かった。


「何故呼び出しに応じなかった!?」

夜勤の始まる夕方、ギルドにてアマルディに詰め寄られた。

「場所の指定はしたのか?」

「…………すまん」

「で、要件は何だったんだ?」

「呼び出しを命令されただけで要件は聞いていない」

まあ、そうだろうな。俺もそこまで興味無いのでスルーした。
今夜の業務は艦船からこっそり抜け出して来るだろうゴロツキに加え、街に居残った浮浪者も居るので治安が増々悪くなると言う。女ばかりのこの小隊、大丈夫なのか?普通の女ならぐへへな感じになるのだが、こっちはリュネが居るし問題無いだろう。問題はもう一つ居る小隊だ。

「小隊長殿、彼処に居るのも女だけの小隊だな?」

「なんだ?好みの女でも居たか?」

「また嫁が増えるんですか?」

「妾かな?」

「体足ります?」

「これだから男は…」

総ツッコミである。もう口聞いてやらん。不貞腐れて持ち場に向かった。

「カケルさん、ごめんよう」

昨日の持ち場に着いて、ベッタリのシトンである。とても歩き難く、彷徨いてるゴロツキに注視される。それでも態々絡んでくる者は居らず、隙間の住民が増えた程度なので汚さないよう注意喚起してぐるっと一回り。
街に居残ったゴロツキ共は、悪い事する為に残った訳では無いようだ。傭兵は戦場になる場所の、冒険者は儲かりそうな狩場の情報集めをしてから移動をするそうで、とにかくナンパされ易いナイニャイちゃんが情報を集めて来た。ぐへへされなくて良かったな。
休憩しながら《感知》で見渡していると、それなりにいざこざしてるようだ。

「南二番と三番に救援。直ぐに向かうぞ」

「どちらが近い?」

「三番だ」

「女の小隊は?」

「…二番だ」

「リュネ、頼む」

「あら、格好良く助けて妾にしたりしないのですか?」

増やそうとすると怒るくせに…。南三番に合流した頃には二番に居たゴロツキは無力化されていた。ホントマジパネェ。こっちは俺が《威圧》で脱糞させて終了。《洗浄》されて連行された。
此処の小隊はゴロツキ共に高圧的な態度で接していたらしいとアマルディに聞かされた。加勢しなきゃ良かったかな。もう一つの女小隊はあわやぐへへな所で急に動かなくなったので無事確保されたようだ。

「冒険者と一緒に仕事をすると本当に驚かされるな」

「冒険者と言うよりそのおとグェ…、カ、カケルとリュネ様に、驚かされてますね」

「俺より凄い奴なんて沢山居るけどな」

「我等は明日より内勤だ。最後まで一緒に仕事が出来無くて残念だよ」

「私はナンパされる量が少なくて有難かったわ」

「明日、明けたら出掛ける用事があるので呼び出しには応じられないかも知れん」

「用事では仕方無いな。行先は警備隊の詰所だ。依頼が終わったら来ると良い」

アマルディの笑顔にキュンとして、リュネの《威圧》にギュンとした。





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