268 / 1,519
うっかりさん
しおりを挟むカロ邸に着いて、風呂に入って朝食を食べたら夜勤組は寝に入る。左にリュネが、右にはアズが陣取って微動だに出来無いし、ちゃっかり者のシトンは俺の股間できんた枕してやがる。此奴が臭うのって、いやまさかそんな!?…寝なきゃいけないので考えない事にしよう。
横になって目を瞑り、呼吸を整え睡魔を迎える準備は出来上がっていると言うのに色んな考えが頭を過り眠る事が出来無い。
この街に何で下水道があるのか?街の屎尿は肥料として使っているので一般家庭には下水道が通っていない。噴水と風呂屋、貴族の家と高い宿屋には風呂があり、その分の排水が出るにしても《感知》で見た排水路は広過ぎた。排水の流れてない場所さえある。かと言ってならず者が住んでる事も無く、ましてや悪の組織のアジトになりそうな広い空間も無い。虫とミズゲル、小動物が住んでるだけなのだ。
暗殺者と思しき十人のゴロツキは、あの後何処に向かおうとしていたのか?《洗脳》でも掛けて所属だけでも聞き出しておけば良かったかも知れないが、そこまでする程の興味は無い。知り合いも、死んで欲しくない人材も、戦争に出る連中の中には誰一人として居ないのだから。
興味があるのは専ら排水路の方だ。行き止まりになっている場所の上を一つ一つ確認して行くと、北側の一本が街の外に出た。地上では小さな山になっていて、山の中にも通路が走り、部屋と思しき空間もある。人もポツポツ歩いてるので、ここがアジトなのだろう。出入口と人物全てにマーキングをして、やっとお迎えが来た。おやすみなさい。
「クルルァ」
「…寝かせてよ」
胸の上に乗って来たマイエンジェルに睡魔は退散させられてしまった。目を瞑り脱力するも、顔をガジガジされるので痛くて寝られやしない。どうやら用事でもあって起きて欲しいらしいな。仕方無いのでそっと起き出し客間に赴いた。
「おはよう」
「考え事して寝られなかったよ。何か用でもあるのか?」
「カケル様、警備隊より呼び出しが掛かっております。先程アマルディなる女が見えましたがお休み中の旨を伝え退散しました。起こして向かうように、との事です」
「だれ?」
「新しい嫁ですか?」
「依頼先で組んだ小隊長だよ。呼ばれたのは俺だけか?」
「はい。そう申しておりました」
「で、何処に行けば良いんだ?」
「さあ?」
場所も告げずに来いとは中々のうっかりさん。それとも俺ならスキルで来れると踏んだのか?取り敢えず、お腹空いたし買い食いしながらアマルディの居場所に向かうかね。背中にへばり付いてるカラクレナイをサミイに託し、カロ邸を後にした。
串焼き買おうと思ったけど、露店無かったんだった。俺も大概うっかりさんだぜ。何時も露店の並んでいた噴水広場には荒くれ者やゴロツキが群れを成して歩いてる。皆それぞれの鄉に帰るのだろう。臭いので近寄りたくないが、此処を突っ切らないとギルドにもアマルディの居場所にも行けないのだ。そして何故かチラチラ見られる。隣にリュネが!?と振り返るも誰も居ない。キョドってると余計に見られそうだし路地裏に戻ると五…一人阻害系スキルを使ってるから六人、音も無く着いて来た。
「なんぞ?」
振り返り、陰に隠れてる奴等に誰何する。
「…お前、だいぶ出来るな」
「それなりにな。揉め事を起こすと俺まで捕まっちまうからすんなり出てってくれ。商売上がったりだぜ」
「へっ、よく言うぜ。モンスター並の魔力垂れ流してやがってよ」
「俺等を狙ってやがったな?国の暗殺者か!?」
ああ、それで見られてたのか…。俺が暗殺者なら相当なポンコツだな。
魔力を抑えたら六人に弱めの《威圧》を掛けて、怯んだ所をジャンプするように飛んで逃げた。《阻害》も掛けたので追っては来なかった。
0
お気に入りに追加
133
あなたにおすすめの小説
愚かな父にサヨナラと《完結》
アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」
父の言葉は最後の一線を越えてしまった。
その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・
悲劇の本当の始まりはもっと昔から。
言えることはただひとつ
私の幸せに貴方はいりません
✈他社にも同時公開
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。
水定ユウ
ファンタジー
村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。
異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。
そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。
生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!
※とりあえず、一時完結いたしました。
今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。
その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
ヒューマンテイム ~人間を奴隷化するスキルを使って、俺は王妃の体を手に入れる~
三浦裕
ファンタジー
【ヒューマンテイム】
人間を洗脳し、意のままに操るスキル。
非常に希少なスキルで、使い手は史上3人程度しか存在しない。
「ヒューマンテイムの力を使えば、俺はどんな人間だって意のままに操れる。あの美しい王妃に、ベッドで腰を振らせる事だって」
禁断のスキル【ヒューマンテイム】の力に目覚めた少年リュートは、その力を立身出世のために悪用する。
商人を操って富を得たり、
領主を操って権力を手にしたり、
貴族の女を操って、次々子を産ませたり。
リュートの最終目標は『王妃の胎に子種を仕込み、自らの子孫を王にする事』
王家に近づくためには、出世を重ねて国の英雄にまで上り詰める必要がある。
邪悪なスキルで王家乗っ取りを目指すリュートの、ダーク成り上がり譚!
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
魔境に捨てられたけどめげずに生きていきます
ツバキ
ファンタジー
貴族の子供として産まれた主人公、五歳の時の魔力属性検査で魔力属性が無属性だと判明したそれを知った父親は主人公を魔境へ捨ててしまう
どんどん更新していきます。
ちょっと、恨み描写などがあるので、R15にしました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる