女神に嫌われた俺に与えられたスキルは《逃げる》だった。

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ナイニャイちゃん

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「私はこの小隊のリーダーとなるアマルディだ。指示に従わないとお前達が捕まる事になる。覚えておけ」

人種でリーダーのアマルディ。装備からして大した階級では無さそうだが人員不足で小隊長にさせられたって感じだな。人数的に見ても小隊では無く班と呼ぶべきだろうし。赤茶の髪を襟元で切り揃えて前髪ぱっつんの真面目ちゃんな見た目。の割に言葉はイケメン。家に帰って柴漬け食べたいとか言いそう。柴漬け無いけど。

「私はナイニャイ。その男が居座るなら私は他と変わって貰うか…が…」

むっつりしてた尻尾持ちが言葉を詰まらせる。脂汗を垂らして立ち尽くし、呻く事しか出来無いでいる。まあ予想は出来ますよ。

「リュネ、ありがと」

「はぁい」

ヘタリ込み、息を荒らげるナイニャイちゃんに目線を合わせ、優しい言葉を掛けてやる。

「命ある事に感謝しろよ?次は死ぬ」

「な!?」

「交代するなら何も言わずに行け。獣人のお前なら解るだろう?」

俺の後ろではリュネが恐ろしい笑みを浮かべているに違い無い。振り向きたくない。ナイニャイちゃんはコクリと頷いた。

「ナイ、交代なんて出来ると思ったか?女の隊員で今夜の組は私達だけだぞ?」

泣きそうなナイニャイちゃんに優しい言葉を掛けてやる。

「俺に敵意を向ければお前は死ぬ」

「!?」

「向けなければお前を守ってやる。それで良いな?」

頷くしか無いのだろう。項垂れるように頷いた。

「何をやってる、打ち合わせしたら任務開始だ。端に行くぞ」

一人でスタスタ行ってしまった。

「ナイニャイ、手を取って立ち上がれ。さもなくばお姫様抱っこするぞ」

「…今日は厄日にゃ…」

にゃ、頂きました。メットで頭を覆って居るが、きっと耳は垂れ下がっているな。肩に掛かる髪は白いが、尻尾は白茶紫の三毛になってるので髪も三色に違い無い。黄色い瞳のちょっぴりつり目が可愛らしい。

立ち上がらせてアマルディの所へ向かい、打ち合わせ。地図を見ながら割り当てられた区画を確認した。場所は港前、大通りの北側。ダンディな髭ミドルことハイネルマール商船会社のある区画である。

「打ち合わせは以上だ。質問が無ければ出発する」

「では一つだけ」

「聞こう」

「殺してはいけないのだよな?」

「殺す攻撃はしない方が良い。鉱山労働者が増えれば国も潤うそうだからな」

「心得た」

心得たよね?リュネ?ボツボツ移動を始めてる流れに乗って、俺達も出発だ。先頭をナイニャイ、中は二列で冒険者、最後尾にアマルディの隊列で歩いてく。

「明かりを点けたらゴロツキ共も居なくなるだろうなあ」

「他の場所に行くだけだな。それに寝てる者から苦情が来るぞ?」

「海岸沿いに住んでる人、居るんだ?」

「海岸沿いには居にゃ…居ない筈よ。と言うかうちの区画の話じゃ無いの!?」

「前を見て歩けー」

「艦艇から小舟を回収する話は通ったのか?」

「ん?よく知ってるな。あれはダメだった」

「残念だ、俺の提案だったんだ」

「へえ。私も良案だと思ったが、下っ端では何も言えん」

「海岸線に人が居ないなら、全体を明かりで照らせば少なくとも街には入れなくなる、と思う」

「お前みたいな奴が上に居たら良かったのだがな」

「そんだけの魔力が無いじゃない」

「あるかも、知れませんよ?うふふ」

「うひっ!」

「こーらリュネ、脅かすんじゃ無い。まあ、冒険者の能力を当てにし過ぎると兵隊の存在感が薄れるからな」

「その通りだ」

「軍隊と冒険者の戦い方の違いもあるけどね」

「我等は数で押す、お前等は個の力で…って事だな」

「そう。だから突き抜けた才能のある奴は冒険者では強いとされている」

「例えばお前なら?」

「兵隊さん、それは秘密なんだぜ?」

「否、少しだけ教えておくよ。俺は光の精霊に愛されてる」

「ぷふっ」

笑ったのは勿論彼奴だ。
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