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新しい《洗浄》の使い方

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 今日は朝から外出だ。《感知》を最大にして鉄鉱を探しながら飛んでいるのだが、何故かイゼッタが付いて来た。

「二人きりになりたかった」

可愛い事を言いよる。イゼッタを背中に張り付け鉄鉱を探していると、範囲ギリギリに反応があった。遥か彼方、水平線から煙が上がってる。

「またドラゴンの巣?」

「流石にそう何匹も…居たからなぁ、無断で入ると食べられそうだし、声掛けだけはしとこうか」

「安全第一」

近づくにつれ、島の姿が見えて来る。俺達が住んでる島より小さいな。それに緑も無いようだ。出来て間も無い島なのかも知れない。こんな所に龍が居るのか?なんて言わないぞ。用心に越した事は無いからな。近づく事、島から五百ハーン。卵持ちならすっ飛んで来るが、それも無い。

「イゼッタ、デカい声出すから耳塞いどけ」

「んー」

龍語で「誰か居るかー?」は、

「グルァーギョリャー」

である。

「どう?ドラゴン居そう?」

暫く待って返答が無いのでやっとほっと出来る。島に近付き、着陸しようとして地面からも煙が出ているのに気付いて急停止。上はサクサク、下はめっちゃホットで迂闊に乗ったら落っこちて死ぬヤツだ。
逆に、溶けてれば抽出も楽なのか。
含有量の多い所を《感知》で当たりを付けて、煙を吐いてる表面を《散開》でスカスカにすると、高い地熱で溶け落ちて、溶岩流れる穴になった。

「熱い」

俺の背中に隠れて言う台詞では無い。

「風で熱を防ぐとか、できるか?」

んー、と唸って出して来たのは風のグラインダー。熱風を押し返してるので少しマシになった。それでも熱いのは赤外線だな。焼き芋にはなりたく無いので素早く作業をこなしてしまおう。
溶岩に向けて《集結》を掛け、鉄分だけを集めて宙に浮かせる。真っ赤に溶けてて溶岩と見分けが付かんが多分鉄なのだろう。純粋な鉄ならステンレスかも知れない。ボーリングの球程の大きさに纏めたら空に上げて冷やす。十個作るのが精一杯、熱過ぎて敵わん。千四百度を超えてるんだぜ?熱風は防げてても赤外線が刺さりまくる。
服が溶ける前に離脱した。
全身を《洗浄》して、熱を持った体と服とイゼッタを冷やす。必要は発明の母、新しい《洗浄》の使い方だ。

「ちべたい」

「今度取りに来る時は赤外線対策をしないとな」

「盾とか?」

「そうだな、盾だな。その内街で探してみるさ」

空に上げた十個の星を俺達の居る高さ迄降ろすと、熱を失い艶々とした鉄色の球に変わっていた。中はまだ熱いかも知れないので《伸縮》で細い棒状に伸ばし、冷めたのを確認してから再び丸めて《収納》した。

 島に着いたのは夕方。昼飯をおやつの干し肉で済ませたのですっかり腹減りだ。背中に張り付くイゼッタも、静かにする事で体力の消費を抑えている。寝てるとも言う。

「おかえりなさい、カケル様、イゼッタ様」

一番乗りのテイカの胸に飛び込んで優しさに包まれた。

「たーだーいーまー」

「あらあら、カケルちゃまはお腹が空いても甘えん坊になるのでちゅね。食堂で、出来た分を先に頂きましょうね」

優しさに包まれたまま三人の塊は食堂に向かう。食堂は料理の真っ最中で野菜の煮える甘い香りと肉の焼ける肉の香りで空腹が限界を突破する。

「ごはーーーん」

普段滅多に出さない大声で自己主張したイゼッタは、椅子に座って動かなくなった。力を使い果たしたか。俺も同じく、椅子に座って消耗を抑える。

「キュルルキュアー」

「二人とも何でそんなに腹を空かせているのだ?途中で何か食べれば良いものを」

ミーネ母娘が尤もな事を言う。

「陸地が無くて調理も出来無いし、おやつしか食べられなかったんだ」

「床ならカケルでも作れるだろうに」

帰る事に頭が一杯で完全に抜けていた。キャンプ道具は《収納》に入ってたわ。
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