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終の住処
しおりを挟む切断された石が避けられ、二千本余りの石柱が整然と並ぶ様は、壮観であるがちょっとお墓みたい。とっとと床梁を敷いてしまおう。五十ハーン側の列に石柱を互い違いに並べ、《伸縮》で圧着する事百五十本。未使用の石柱は多分千本も無いし、今日の作業はこれでお終いだ。明日は更に石材を切り出して来なきゃならん。
「カケルー、ごはーん」
イゼッタが斜面の上から呼んでいる。もうそんな時間か。おが屑塗れのイゼッタに抱き着いて《洗浄》する。スキル一回で二人洗えてお得なのだ。
「お漏らしした気分になる」
「そうだな。老人の介助とかに使えそうだ」
「かいじょ?」
「生活の手伝いって事」
「カケルー、私も《洗浄》するが良い」
これ、構って欲しいパターンだ。抱き締めて《洗浄》してやったよ。
「気持ち悪い!」
「普通は服だけとか、裸になってやるもんだからな」
「お勧めはしない」
普段裸族の龍にとって、人ですら気持ち悪い服の張り付く感じは相当気持ち悪かったようだ。四の五の言いつつ三人並んで食堂に飛んだ。
「カケル様、私と赤ちゃんのお家の具合は如何ですか?」
これは拗ねておられる。慈愛に満ちた笑顔が怖い。
「もう少ししたら俺たちの赤ちゃんの家も作ろうな」
「っ!待ってますね?」
「カケル、ジゴロ」
「お世話し甲斐があります」
「確かに、お子が出来たら今までみたいに皆で寝るのは難しくなるだろう。ご主人、家の建て増しなり改築なりを考える時期ではなかろうか?」
「夜泣きとか?」
「貴族家では乳母に育てられるので親としての知識は御座いません。お役に立てず申し訳ありません」
「おなじく」
「ふむ、例えば?」
「城だと部屋が離れているし、主立った部屋には防音魔法が施されている。此処だと部屋が近いから防音魔法は必須と言っても良いだろうな」
水問題を魔石に依存すれば多少地形を弄っても問題は無い…か。タマゲル式下水システムも、土や石を加工出来るようになったし、そろそろミズゲル式に変えても良いかも知れん。
「良し、ミーネの家が出来たら同じ高さで建て直そう」
「今の家も壊すの?」
「名残惜しいか?」
「みんなで作った」
「また作ろうぜ。終の住処だ」
「みんなで部屋の絵描く」
設計図の事かな?賢者ノーノも居るしきっと大丈夫だろう。皆に任せて俺は今の作業に集中しよう。
翌日、朝食を軽く済ませた俺は午前の内から柱状節理の海岸に赴き石材回収に勤しんでいる。ミーネみたいにスパスパ切れないので、前回と同じく《散開》を使ってじっくり切って、切れたそばから《収納》して行く。龍の巣は床を石張りにするし、斜面に埋め込む柱も沢山必要になるだろうから多目に取っておきたいのだ。薄切りにすれば石畳にもなるしな。巨大になり過ぎないように、二十×二十ハーンのブロックを十個切り出して島に戻った。
昼飯食って仮眠して、建築の続き。六角形の柱を四角にしなければならず、結構面倒臭い。
空中で、横に寝かせた柱を縦に重ねて、高い壁のようにすると壁面がギザギザになる。この部分だけを《散開》させて床梁に乗せると、自重でめり込むので《集結》して圧着する。これを床全面に行い、上部のギザギザを《伸縮》で平らに熨せば床の完成だ。
「ミーネよー、家にドアは付けた方が良いかー?」
テイカと一緒に男の子達とバトルを繰り広げているミーネに聞いてみる。
「出入りは人の姿でするぞ。それに卵が孵ったら倉庫にすると言うのなら、ドアはあった方が良いだろう」
馬鹿デカい扉を作らなくて済んだが、気を使わせたな。
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