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龍
しおりを挟むリュネの笑い声に辺り一面の音が掻き消され、ガキンチョ共のお漏らしの音も聞こえない。甘酸っぱ臭い湯気を立ち上げ、立ち上がる事も出来ない勇者達に告げてやる。
「ボッコボコにしないのか?」
「かひぇるひゃま…」「むりむりむりむり…」「……」
中々子供らしくて可愛いじゃないか。俺もそっち側に行きたいよ。
「ギュルキャァオアーー」
「丸腰でやれるかよ!ちょっと待ってろ!」
とは言え大鉈や解体ナイフだけじゃ大分不安だ。漏らしたら恥ずかしいので家に戻ってトイレに篭ったら、装備を着込んで外に…、良いのがあった!入れられるだけ袋に詰め込み外に出た。
「本気で行くから手加減しろよ!?」
空に上がって大鉈を構え、いざ尋常に…。
クパァ。
逃げるよ!いきなりブレスとか小手調べのレベル高過ぎだろ。人が居るから下には避けられない。地面に当たらぬように上向きに、偏差射撃されないようにジグザグに、緩急を付けて飛び躱す。
リュネの方も真面目に逃げなきゃ当たる軌道でブレスを曲げたり拡散させたり、本気で遊んでやがる。しかも一箇所でじっとしてないので寄る事も出来ず、刃物はほぼ封じられている。避けるだけでマジ余裕無し吐きそう。当たったら塵になるからなっ!
刃物を仕舞い、早々にアレを使う事になってしまった。
袋から一掴みしたソレをスキル増し増しで投げ付ける!以前無駄に拾って来たミスリル分少な目の石ころだ。纏めて数個投げたのでブレスで塵にならなかった幾つかが体に当たる。
カチンと良い音鳴らして弾け飛ぶ。が、それだけ。多分ダメージになって無い。よしんばダメージがあったとしても秒で回復するだろうがな。だが当たる事は確認出来た。まだやれる。
星、超高度に浮かせてるトカゲ同様に石ころを浮かせて体の周りに纏わせる。ノーモーションからの投擲ならば避けられまい。更に一つずつ《集結》で押し固めて貫通力を高めると、それを見たリュネは飛翔速度を上げた。流石にコレに当たると痛いのだろう、拡散ブレスで弾幕張って来る。スペースに余裕を持って避けないと折角のファンネルが溶けてしまう。かと言って、石ころを一つずつ動かすのは俺の脳が溶けてしまう。回復魔法で直ると良いな…。とにかく体が持つギリギリの速度でリュネの周りを飛び、背後から狙撃したり、それを躱すのを見越して軌道を曲げてみたりと先読み合戦を繰り返す。
小さくなって貫通力の増した石ころはやはり痛いらしい。背中の硬い鱗でさえ、当たると鱗が弾け飛ぶ。
「ガギャーギャグルルァー」
痛いそうだ。
「こっちは当たると痛いじゃ済まないんだぞ!!」
「もっと力を見せて下さいなー」
龍の姿での人語は随分低い声なのな。残弾も少ないし、そろそろ終わらせないと死んでしまう。
脳みそ溶ける覚悟で石ころ達を操作する。《並列思考》が無ければ完全に溶けてるな。猛スピードで逃げながら、石ころを操作してリュネを撃つ。だが当たらない!
「慣れない事するんじゃ無いな!とんだ無駄弾だぜ」
「グギャギャギャギャー!」
高笑い。からの、とどめのブレスを溜めだしたリュネ。お前の負けだ。
リュネの頭を掠めて行く石ころを停止させ、限界まで《散会》すると、石ころは麩のようにスカスカになってリュネの頭を包み込む。飛び去って行った石ころも操作してリュネの鱗を消し飛ばした。俺は大鉈を構えてリュネに接近戦を挑む。
…振りをして、飛んで来た超質量の極太ブレスを避ける!リュネは俺の魔力を追って攻撃してるので目が見えなくても困らないのだ。大回りで逃げる俺にリュネの極太が迫る!
ドガッ!
ブレスに溶かされた俺の音では無い。
リュネの頭に星が衝突した音である。
骨と肉の凍った塊が、自由落下でぶつかったのだ。ただで済む筈も無く、リュネは星諸共地面に落っこちて行った。
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