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カロが来た
しおりを挟む悪党をカウンターに乗せて買い取りを頼むが不可だそうな、残念。事の顛末を説明し引き取ってもらった。で、今は寝具店の客間で子供達の怪我を治したりお茶したりしてる。
「命があって良かったな」
「…旦那には世話になってばかりで返す恩が無いよ」
「ガキがそんな事気にすんなって。ギルドには適当な事言ったが実際どうなんだ?」
「カツアゲだよ」
ミミンの兄、アタル曰く。ブフリムの袋が拾えてホクホクしながら中身を改めていた所に悪党共がやって来て袋の中身を奪ったと。それだけに飽き足らず持ち物全部出せ…となり、反抗して殴られてた、との事。
「戦利品の確認は安全を確保してこっそりと行うべきです」
地元の先輩の言はリアルだな。
「冒険者さん…、助けてくれてありがと…」
涙目の女児が寄って来て謝辞を述べる。
「汚い物を見せてごめんな。俺の住んでる集落にもお前達くらいの子が居てな。其奴等が害されたらって思ったら我慢出来なかったんだ」
視線を同じにして詫びると泣きながら抱き着いて来た。よしよし。一頻り泣いて、「あげる」と言って渡して来た王金貨に貴族関係者は胸を撫で下ろした。俺は預かるだけで受け取らないと突っぱねたが、あげる断るの平行線になってしまう。あ、また泣きそう。
「カケル様、これを」
テイカが出して来た木の枝を加工した棒…。物々交換には差があり過ぎるが担保にでもするか。
袋から砂粒一粒取り出して、グリグリと棒の先端に押し込んでミミンに見せてやる。簡単に説明したら温くなったお茶を飲み干し、注いでみろとカップを差し出した。
「水…水ぅ…」
タラーっと鉛筆程の太さの水が出た。魔法を見慣れて無い者なのでこんなものだろう。若しくはカップから零れないように調整したのか?真相は解らないが使えたなら良しだ。依頼を終えたら報酬は渡すがそれまでの担保に持たせる事にした。
それから庭にテーブルを並べて昼飯を食べて、いつの間にかママ上殿が呼んで来たミミン達の母に経緯と棒の使い方を説明して解散となった。街に居る主婦達は家政婦組合の構成員なので大体知り合いなのだとか。ママコミュ恐るべし。
夜になり、さあカロ邸に向かおうか、と言う所でカロが来た。
「きゃっきぇりゅっしゃま~ん」
嗚呼、壊れてらっしゃる。
「キュアー!」
「ぎゃ!まぶしっ!」
イゼッタに依り突然放たれたキュアを顔面に喰らったカロは顔を押さえて蹲る。
「イゼッタ様、酷いです…」
「夜だけど外。解れ」
「うう、申し訳ありません」
目を開けられず明後日の方向に謝罪しているカロの手を引いて帰った。
「あ、すまない。アルネスに遅くなるって伝え忘れた」
「え?まあ、この位の時間でしたら問題ありません。深夜まで掛かると思ったので」
「それなら良かった。それにしても…、何か居るな」
「カケルさん、しますか?」
「俺でも良いけど」
「カケルさんのは直線的過ぎますから…」
「なら、お願いしようかな」
「願いされました。ふふっ」
《感知》に引っ掛かってた敵意を持つ六人の反応が、一瞬で消えた。リュネとは戦っちゃならん。
「昼間のもびっくりだったがとんでもないな」
「うふふ、カケルさんの《収納》と同じ物ですよ?無理矢理に押し込んでいるので人ですと壊れてしまいますけど」
「カロさんや」
「ギルマスのアホの手、では無いと思われます。後で賊の確認をすべきかと」
「とっとと帰って夕飯前にやっちゃおう」
カロ邸に着いて、裏庭。リュネに賊を出してもらうが、パッと見は庶民に見える。ひん剥いて持ち物と体を調べると毒の着いたナイフや暗器、体の一部に刺青が入ってた。
「ご主人…、これは国も使う暗部だ。国か貴族か教会が動いてるぞ」
さて困った。
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