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ズブズブの関係
しおりを挟む《収納》からバスケットを取り出して、今日のお昼はサミイ作、昨日の残りサンドである。煮込まれた海獣の肉と野菜がソーサーに挟まれ、しっとりして食べやすい。…にしても多いな。
「食べ盛りとは言えこれは多いな…」
「お残しは許しません!…ってのは冗談で、子供達が来たら一緒に食べようかと」
「だそうだぞ。こっちゃ来ーい」
昨日みたいに海獣が来てサミイが襲われたりしたら嫌だったので《感知》していのだが、ずっと此方を伺って居たようだ。暇な奴等め。声を掛けると昨日の女の子がわーいと走って来た。他の二人もゾロゾロと。
「ねーねー、おねーちゃんお布団屋さんの人だよね?冒険者さんと付き合ってんの?」
食い気より色気なおませさんめ。ズブズブの関係な事を詳しく語ってやりたいが簡単に嫁な事を教えてやると、テンション上がって出産予定など聞いてくる。残り物サンドで口封じした。
ちなみにこの子等は寝具店の通りに住んでるらしく、サミイも知ってるようだった。
「妹が、なんかごめん」
「良いさ、食え食え」
五人で昼飯を囲みながら、昨日女の子に見せてもらった宝物が落し物で、探してる旨伝えてみた。
シルケでは、基本拾った人の物と言うルールがあるので男の子達は憤慨してたが、貴族絡みのやばい代物である事をこっそり教えると静かになった。
女の子は人間が出来てるみたいで、返すと言っているが心で泣いてるなこれは。
せめて依頼料をふんだくってやらないと浮かばれないな。依頼料が幾らになるか判らんが代行してやる事にした。
夕方までミズゲルをべシャりながら、主にサミイが子供等と遊び、皆を家に送って現在カロ邸。
「カケル様、私の出番で御座いますね?」
夕飯を食べながらリアがやる気を出している。
「折角隠れてるのに見付かるような真似をさせて済まないな」
「カケル様と一緒なら何処にでも逃げられますから」
「カロさんや、そう言う訳で正式に受ける事にした。詳細を聞かせてもらうよ?」
「はい、承りました。事務処理は明日と言う事で、先ずは詳細ですが…」
依頼人は公爵家当主、アルザリア・インシャル・クライムベル。次男のバーゼル・シラー・クライムベルが三ヶ月程前、船を買う為にバルタリンドに来る途中モンスターに襲われ全滅。形見の品と共に王金貨の捜索を依頼したと言う。とは言え平民、貴族の三男程度の冒険者では王金貨なんて見た事も無く捜索は難航、塩漬けにされていたそうだ。
「公爵家って親戚筋とか?」
「はい。バーゼル・シラーの葬儀にも参列致しました。美術に明るく物静かでお優しい兄の様な方でした」
「既に亡くなってる者は斬首出来んわな」
「ええ。宰相も父に仔細報告済みで、バーゼル・シラーの死と捜索の継続を以て罪を償う物とされました」
「有能だったっぽいな」
「爵位無しの者が父に進言して許された程度には…、ふふっ」
思い出して笑ってる。良い男だったのだな。
「で、依頼料は?」
「王金貨に関しては確か三百万ヤンとなっている筈です」
「へー。中々気合いの入った金額だな。一割程度なら吹っかけてやろうと思ったがリアの親戚筋だし良しとするかー」
「カケル」
黙々とお肉をハムハムしてたイゼッタがソース塗れの口で口を挟む。
「どうした?」
「良い人は、戦争しない」
「確かに、そうで御座います…。バーゼル・シラーは戦争には反対の姿勢を貫いて居りましたが宰相は戦争に前向きです」
「警戒を怠るなって事だな。ありがとうイゼッタ」
「ん、ご褒美キスして」
「口拭いたらな」
依頼に関する予定を詰めた。
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