女神に嫌われた俺に与えられたスキルは《逃げる》だった。

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カロさんや

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 カロが筒状に巻かれた紙を持って来た。買い取りの目録だそうな。サインしてくれれば後はギルカに自動振込してくれるのだと。
…と、言うのが建前で、ギルドは出来るだけ金を出したくないらしい。破産する程度に引き出してやろうかと思うが、今から出掛けるのに荷物を増やしたくはないな。
ちょろまかしが発生しないように、ちょろまかしたら報復するようにカロに伝えると、既に数人、強制労働者へ転職したと言われた。
金は人生を狂わせるな。

書類にサインしていると、ノックと共に親父殿が入って来た。

「カケル様にお客さんです。女二人の…」

ガタガタッと此方に注目が集まる。取り敢えず客間へ呼んでもらうとアズとシトンだった。

「カケルさん、すまねぇ。多分つけられてる」

「もう少し詳しく話せ」

「教会が金貨をお布施した冒険者を探しているそうです。心当たりありますよね?」

「ある。お布施したヤツを襲って金でも奪うつもりか?」

「囲ってお布施がっぽがぽ」

「成程」

何処に行っても追いかけられるな。

「まさか…、司教がそんな…」

「あたい等がカケルさんと別れて直ぐに情報提供の依頼がギルドに来たんだ」

「私達の所にも直接来ました。嘘は魔道具でバレてしまうので言える範囲で事実を言いました。すみません」

「アズの事だから殆ど有耶無耶にしてそうだな」

「シトンも頑張ってましたよ」

「そうか、偉いぞ二人とも」

シトンの頭を撫でてやる…臭い。アズも寄って来たので撫でておく。此方はあまり臭くない。

出掛ける用があるので二人を連れて行けないがどうしよう?

「カロさんや」

「何でしょう?カケル様」

「俺が帰るまで、この二人を囲ってやってはくれまいか?仕事はギルドで適当にやれるだろうし、今は急いでいるが二人に用もあるんだ」

「…わかりました。ギルドでの仕事の他に、我が家の護衛として雇いましょう。カケル様は今からお出になられるのですか?」

「そのつもりだ」

その後、荷車に全員乗り込みギルド前で三人降ろし、街を出た。確かに数人追って来てるが上空千ハーンでは何か出来る訳も無く、無視して海へ向かって飛んだ。八千ハーンも移動すれば人の目では見えなくなる。方向転換してメルタル大陸へ飛んでった。


 今回は一人で飛んでる訳じゃないから少しだけ速度を落としている。そのおかげで寒くは無いが、暇だ。

「俺等の居た街、何て名前だっけ?」

「ん?エディアルタ。私の住んでたのはナーバーグ」

「領主家でしたのですね」

「ん。きっともう無い」

イゼッタを撫でてやると抱き着いて来たので肉布団にして横になる。俺は貴族でもシルケ人でも無いので何も言えない。言えないが、涙を拭うティッシュの代わりくらいにはなってやる。
多分、今のイゼッタや俺なら仇討ちや復讐なんて簡単だと思う。だがイゼッタはしたいとは言わない。言ってくれたらあの国の敵になってやるのに。

暫くすると泣き疲れて寝てしまったようで寝息が漏れる。
テイカがタオルを差し出してくれたのでぐちゃぐちゃの顔を吹いてやり、そっと横に寝かした。俺の服もベチャベチャだ。《洗浄》してキレイになる。

「カケル様、今の魔法は《浄化》で御座いますか?」

「否、スキル《洗浄》だ。練度が高いと洗濯と乾燥が一瞬で済むらしい」

  「メイド要らずですね…」
「一瞬だがパンツビシャビシャになるのは気持ち悪いぞ?それに、逃げてる最中でしか使えない」

「それではメイド無しでは生きられない体にしてやろう。いっその事貴族になるか?」

「成金の冒険者で充分だよ」

今の俺は人間相手にマジになる訳には行かないし、それに根無し草の方が逃げやすいしな。








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