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大きな声で言えよ

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 ドアを外して荷物を積んだら出かける準備は完了だ。

「この木、どうする?」

「放置で良いだろ、人も来なそうだし」

皆を命綱で縛って新たな島に向かった。
荷車が壊れない速さで移動しているが、時間が掛かるので暇だ。

「…なあ、これ何時治まるんだ?」

「カケル様、見ているだけで幸せな気分になります」

「しかしなテイカ、これじゃ街にも行けないぞ」

「力を誇示する為、敢えて大きく見せる者も居ると聞きますよ」

「それ、盗賊」

  「是非そのままで!」
「元気なら大きな声で言えよ」

「あれだけヤって治まらんのなら隠す方法を模索するのが良いと思うぞ、ご主人様」

「いざとなったらそうなるかー」

「私なら何時でも犯して良いからな」

「なら口で頼む」

島に着くまで皆横になり、チュパチュパされながら仮眠した。
で、気付いたら島に着陸していた。イゼッタが風魔法で動かしてくれたようだ。撫でてやったら涎塗れなのを水で洗ってくれた。

 今は滝のある小川に居るが、ここに家を建てる訳にはいかない。雨が降ったら大瀑布になるからな。
この島は砂浜が無く、完全な断崖絶壁だ。岩の隙間をチムニーして登ってこないと島に入る事は出来ない。なので海沿い、崖の上は論外となる。
尖った山があるが、山頂もダメだ。
そんな訳で、滝の上流にある、森の中の平地を建築場所とした。
広さは申し分ないが、生えてる木は低・中木が多いので建材としては使えない。低木の実は食えたので、皆が木の実を採取してる間に高木の枝を取ってこよう。

真っ直ぐ生えてる高木から、片手斧で三十本の枝を集めて戻ると、木の実の収穫を終えた建築現場はすっかり更地になっていた。
五ハーン四方に苗木を差して三十本。枝を払いながら成長させて、真っ直ぐ伸びた立派な柱が出来上がった。

「前みたいな高床にする?」

「上がまだ細いから一旦切り詰めて太くしたらな」

「わかった」

風魔法でふわりと浮いて、三十ハーンくらいの高さでバッサリ水平に切り落とす。
落ちて来る枝葉。逃げ惑う俺達。怪我無くて何より。
光でぶっとく成長させて、一ハーンくらいの高さで水平に切り飛ばす!
ガラガラと音を立てて落ちて来る丸太。流石に避難済みだ。死んでしまう。

転げ落ちた丸太を土台に上げる。
触っている物ごと飛べるようになったので、空飛ぶ丸太になった。そして羽のように軽い。
丸太を乗せて当たりを見たら、土台の柱に溝を彫り、合いを調整する。
更にイゼッタが成長させると、モサモサとひこばえを生やしながら丸太と密着した。


 二十ハーンの六箇所に丸太を乗せた所で昼飯の時間となった。

「あたしも魔法が使えればカケル様のお手伝いが出来るのに…」

「カケル様のお役に立てずお恥ずかしい限りです…」

「二人とも他の事で役に立てば良い。テイカは家具とか作って欲しいし、王女は火の魔法を極めたら良い。俺の方こそ魔法使いたいぞ」

「どんな?」

「土とか石の魔法で土台をドカッ…とな」

「カケル様、お疲れですね?おっぱいをどうぞ」

「はむっ、つあえてあないあ…ハムハム…」

「暫く休憩」

 午後の作業は床作り。並べた丸太を半分にスライスし、使ってない丸太諸共板にする。
出来上がった板を二十五ハーンの方向に隙間なく敷いて行き、木釘を打ったら床の完成だ。
家を建てるには木材が足りないので今日の作業はここまでにして、余ったスペースに植樹した。

ここからはテント作りだが、テイカがやると名乗りを上げた。俺はお肉取って来る係ですか。やる気を大事にしたいので、ナイフを持って狩りに出た。

この島は、辺り一面見渡す限り海、そして海。なので何時ものゴーラが取れない。鳥も居ないしドラゴンなんて滅多やたらに飛んでない。
ギフトに指示して食べられる肉の場所まで飛んで行くと海沿いに出た。海産物でも取れるのかな?

貝でも居るかと海面に近付いた所で、何者かに丸呑みにされた。
噛まれてたら死んでたぜ…。
暗闇の中、テントに向かった。





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