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泣いた

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 昼飯は茹で肉とスープとツイストソーサー。
シルケに来てから主食はずっとソーサー、即ちマタル粉なんだよな。他に主食足り得る炭水化物は無いのだろうか?
マタルの粒入りスープは食った事あるけど、麺だとか団子とか、他の料理のバリエーションがあっても不思議では無い筈だ。

「テイカよ、マタル粉やマタルの種ってソーサー以外で料理法は無いのか?」

「はい。茹でた種をスープにしたり、ソースで絡めて食べたりしますね。粉に関してはツイストソーサーにビックリしたくらいに薄いソーサーしか知りません」

「私も」

「ならマタル以外で主食になる物ってあるか?」

「「肉」ですね」

良い笑顔で答えよる、可愛い肉食獣共め。

「穀物とか根菜とかないの?」

「大体スープの具ですね」

「丸焼きの具とか」

なるほど。食休みを長めに取ってその間に少し試してみよう。

「カケル、食べ物で遊んだらダメ」

泣いた。泣いてテイカに泣き付いた。

「よしよし、カケル様は悪くないですよ。真面目に主食の種類を増やしたかっただけなんですよね。悪いのは残り少ないマタル粉ですから泣かないで下さいね」

「ゴメンねカケル」

撫でられて、慰められて、膝枕で昼寝した。
目覚めるとイゼッタが肉布団してた。


 午後の作業はテンション上がらず、木材の加工は二人に任せ、俺は組み上げの時重い物を持つ係と上の方の釘を打つ係だけやった。
後輪の車軸受けの取り付けと、船の上部、壁と屋根を組んで穴埋めしてた。
乾燥したら進水式と試乗だがもう明日で良いや。窓も付いてねーし。


 朝起きて、目を閉じて、荷車の窓について考える。防具を注文してるとは言え、もう街に行くの面倒なんだよな。窓を発注しても数日掛かるし。この家を引き払うなら家の窓をバラして使うかな。ソファーや絨毯もバラしてフェルトにすれば乗り心地も変わるだろう。取り敢えず窓だな。

二人を起こさずベッドから抜け出し、キッチンで干し肉を齧っていたらイゼッタが起きて来た。

「昨日は、ごめんなさい」

「何について謝ってる?」

「カケルの…、気に障る事、言った」

「そうだな。泣く程悔しかった」

「本当にごめんなさい」

「俺は必要だと思った事をやっている。たとえそれが失敗してもだ」

「うん…」

「マタル粉でソーサー以外の主食を作れ。それまで荷車作ってるから」

「うん…」

「起きてるんだろ?テイカはどうする?イゼッタとやるなら工具を返せ」

ドアを開けて出て来たテイカは涙ぐんだ目で工具を差し出して来た。
無言で受け取り居間の窓を外した。

 荷車のフロントに外した窓を当て、ボールペンで当たりを引く。鑿で少し内側から掘り進め、穴が空いたらキレイに整えて行き、樹液を付けて嵌め込んで、更に隙間を埋めてって、乾燥したら窓の完成だ。
家に戻りたくないので荷台で寝る。板の間なので背中が痛いが気にしない。
もう、味とかそんなの気にせずに、肉だけ食って生きようか…。鬱々とした気分で目を閉じていると、テイカが朝食だと呼びに来た。足が重い。腰も重い。テイカに支えられ家に連れて行かれた。

「がんばって、作ってみ…ました」

マタル粉で作った何かが皿に乗っている。
ソファーに座らされ、仕方なく食べるが、何だこれ?蕎麦掻きか?肉のスープに入れて混ぜましたって感じのネトネトだ。麺の文化は無さそうだし、原点と言えば原点か。

「どう…ですか?」

「年寄りなら良いかもな」

三口食べて俺は食事終了。二人は頑張って残さず食べた。

「変な物作って、ごめんなさい」

「構わない。俺がやれって言ったんだ。だが俺はほぼ同じ工程で、もっと美味い物を作れたがな」

「教えて!…下さい」

「そのうちな」

「カケル様、あたしも叱って下さい。あたしは、何も出来ませんでした…」

「出来ないのが当たり前だ。知識も概念も無いんだからな。そして無理して作ったのが、アレだ」

「ごめんなさい…」

「もう謝るな。因みにあれは蕎麦掻きって名前だ」

「カケル様は知っておられたのですか?」

「味付けは違うがな。ガキの頃食べてあまりの不味さに親に怒られても手を付けなかった」

「二度とあんなの作らない!」

「是非そうしてくれ」

暫く休んだら進水テストだ。それまで寝よう…。
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