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ソーサーにお酢かける人

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 家に戻り昼飯に干し肉を齧った後は、接着剤も雨で濡れたのもすっかり乾いているので工作の続きをする。
先ずは車輪。センターに印を付けて、四枚合わせで十ドンの穴を開ける。車軸に挿して回るのを確認したら二枚ずつ、回しながら丸く切る。径は大体二.八ハーン。これを二回やり、小さい方に合わせて調整した。
イゼッタが右手の風で回転させ左手のグラインダーで削ると言う器用な事をしてのけた。やるな。
だいぶ削ったので二.七ハーンくらいになっちゃった。

車輪のパテ盛りはテイカに任せ、俺達は箱のパテ盛り。
四角を内側と外側、三角は外側を埋めて乾燥待ちとなった。

乾燥待ちの間に幅のある板を量産する。一×三ハーン四枚と、三×三ハーン一枚作り、パテで隙間を埋めて本日の作業を終了した。


 ゴーラを狩って焼肉にしよう。
二匹狩って家に戻ったらイゼッタが飛びながらマシンでオフロードレースしてた。

「イゼッタ、お前飛べたのか」

「おかえりカケル。やったら出来た」

マシンと一緒に飛び込んで来た。マシンが脛に当たって地味に痛い。
風魔法使いまくってたし、レベルも上がってんだろうなー。
聞くと、マシンをジャンプで飛ばそうとしてたら自分が浮いてた、と。子供のおもちゃ侮れんな。

「おかえりなさいカケル様。お肉お待ちしてました」

ナイフ片手にお喜びのテイカが玄関越しに迎えてくれた。

「一匹は油を取るから肉を茹でてくれ」

「食用油ならまだありますよ?」

「車輪の潤滑油にするんだ。茹で肉も美味いぞ」

早速塩茹でにされた。煮込みが足りないので歯応えがあったが美味かった。肉食女子も大満足。油用のはもっとホロホロになっているに違いない。少し夜更かしして肉を茹で、朝には糖の実の殻にこんもりとラードが盛られた。


 勿論朝飯はホロホロ茹で肉。ソーサーと挟むと食べやすくて美味し。マヨネーズ欲しいが売ってないので酢で食べた。

「ソーサーにお酢かける人、初めて見た」

「流石カケル様です」

「カケルだけに?」

「イゼッタは飛行の特訓をしてもらう」

「罰ゲーム?」

「違うぞ。せめて俺と同じくらいまで加速出来る様になって貰う。物を飛ばすのも同じくな」

「鬼教官」

「それと、俺の名前は空高く飛ぶって意味だ」

「素敵なお名前です」

「テイカには後で中にぶっ掛けてやろう」

「ありがとうございます」

「ぬ…、ずるい…」

「一緒に飛べたら空のデートしてやるよ」

「が、がんばる…」

とは言え工作の続きが先だ。食休みしたら作業を始めるぞ。

 箱と三角を組み合わせる。
二つの箱の間に五十ドン程の太い角材を挟んで止める。この角材も芯のある良いのを使ってる。
後ろは五十ドン程はみ出させ、前は二.五ハーン飛び出した。
下には幅を合わせた板を二箇所水平に打ち付けた。

ここまで来てパテ盛りに難儀した。片方はよく見えるので普通に出来たが、箱二つ合わせるとパテ盛りし難い。
原液を流し込んで何度か乾燥させて…と思ったが、イゼッタが解決してくれた。
水魔法でパテを飛ばし、風魔法と木っ端でパテを隙間に押し込んだのだ。
偉い!撫でたる。

「えへー」

よしよし。その調子で三角も頼むぞ。

 四角と三角の間には車軸の入る隙間が出来る。
車軸を噛ませて三角を合わせ、樹液と釘で止めて行く。強く擦れる場所なので、少し隙間に余裕を持たせた。
イゼッタがドヤ顔で奥のパテ盛りをして行くのを見て、やっちまった事に気付いてしまった。

「車軸を通す溝、切るの忘れた…」

「カケル様、お任せ下さい」

シャキンと鋸を取り出すテイカ。折角だから任せてみよう。寸法を告げて丸投げした。

鋸の入るギリギリで切り始め、二十五ドンの深さに届いたら、ハンマーと、借りパクされた鑿で切り取った。そこから更に両端から掘り進め、車軸の底面の接地部は十五ドン、上に行くにつれテーパーを掛ける見事な掘り方をしてくれた。底面を山にする加工も鋸と鑿ですんなりこなしてしまった。
偉い、と言うか凄い。撫でたる。借りパクされてるけど!

「うふ、気持ち良いですね」

うん、ハンマーは返せよ?引き続き同じ感じで後輪の車軸もお願いした。

 センターを繋げたので、次は両サイドの二箇所を止める。
角材を打ち付けてからだと板バネが嵌められないので、一旦船に角材を置いてマーキングし、先に板バネを取り付けた。

 残るは車軸と車輪だ。
一旦車軸を通し、片側の車輪を嵌める。反対側から車軸を動かし、車輪が荷台に当たらない場所まで調節したら、削ってない方にマーキングして車軸を外し、余分を切ったら十ドンの太さの円柱に削る。車軸の真ん中に少し削りを入れて差込み、テイカが切った山に嵌めたら車輪を嵌めて四輪の完成だ…、と思ったらまだタイヤ止め作って無かったわ。

「「任せて」下さい」

任せましょう。
テイカは鑿で、イゼッタは魔法で穴を開け、細い角材差し込んで楔打っただけでした。確かに止まってりゃ良いからこれで良いわな。考えすぎてたわ。

車軸の稼働と接触しないかを確認したら再び車軸をバラし、パテ盛りして昼の部終了。飯飯。

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