74 / 1,519
ソーサーにお酢かける人
しおりを挟む家に戻り昼飯に干し肉を齧った後は、接着剤も雨で濡れたのもすっかり乾いているので工作の続きをする。
先ずは車輪。センターに印を付けて、四枚合わせで十ドンの穴を開ける。車軸に挿して回るのを確認したら二枚ずつ、回しながら丸く切る。径は大体二.八ハーン。これを二回やり、小さい方に合わせて調整した。
イゼッタが右手の風で回転させ左手のグラインダーで削ると言う器用な事をしてのけた。やるな。
だいぶ削ったので二.七ハーンくらいになっちゃった。
車輪のパテ盛りはテイカに任せ、俺達は箱のパテ盛り。
四角を内側と外側、三角は外側を埋めて乾燥待ちとなった。
乾燥待ちの間に幅のある板を量産する。一×三ハーン四枚と、三×三ハーン一枚作り、パテで隙間を埋めて本日の作業を終了した。
ゴーラを狩って焼肉にしよう。
二匹狩って家に戻ったらイゼッタが飛びながらマシンでオフロードレースしてた。
「イゼッタ、お前飛べたのか」
「おかえりカケル。やったら出来た」
マシンと一緒に飛び込んで来た。マシンが脛に当たって地味に痛い。
風魔法使いまくってたし、レベルも上がってんだろうなー。
聞くと、マシンをジャンプで飛ばそうとしてたら自分が浮いてた、と。子供のおもちゃ侮れんな。
「おかえりなさいカケル様。お肉お待ちしてました」
ナイフ片手にお喜びのテイカが玄関越しに迎えてくれた。
「一匹は油を取るから肉を茹でてくれ」
「食用油ならまだありますよ?」
「車輪の潤滑油にするんだ。茹で肉も美味いぞ」
早速塩茹でにされた。煮込みが足りないので歯応えがあったが美味かった。肉食女子も大満足。油用のはもっとホロホロになっているに違いない。少し夜更かしして肉を茹で、朝には糖の実の殻にこんもりとラードが盛られた。
勿論朝飯はホロホロ茹で肉。ソーサーと挟むと食べやすくて美味し。マヨネーズ欲しいが売ってないので酢で食べた。
「ソーサーにお酢かける人、初めて見た」
「流石カケル様です」
「カケルだけに?」
「イゼッタは飛行の特訓をしてもらう」
「罰ゲーム?」
「違うぞ。せめて俺と同じくらいまで加速出来る様になって貰う。物を飛ばすのも同じくな」
「鬼教官」
「それと、俺の名前は空高く飛ぶって意味だ」
「素敵なお名前です」
「テイカには後で中にぶっ掛けてやろう」
「ありがとうございます」
「ぬ…、ずるい…」
「一緒に飛べたら空のデートしてやるよ」
「が、がんばる…」
とは言え工作の続きが先だ。食休みしたら作業を始めるぞ。
箱と三角を組み合わせる。
二つの箱の間に五十ドン程の太い角材を挟んで止める。この角材も芯のある良いのを使ってる。
後ろは五十ドン程はみ出させ、前は二.五ハーン飛び出した。
下には幅を合わせた板を二箇所水平に打ち付けた。
ここまで来てパテ盛りに難儀した。片方はよく見えるので普通に出来たが、箱二つ合わせるとパテ盛りし難い。
原液を流し込んで何度か乾燥させて…と思ったが、イゼッタが解決してくれた。
水魔法でパテを飛ばし、風魔法と木っ端でパテを隙間に押し込んだのだ。
偉い!撫でたる。
「えへー」
よしよし。その調子で三角も頼むぞ。
四角と三角の間には車軸の入る隙間が出来る。
車軸を噛ませて三角を合わせ、樹液と釘で止めて行く。強く擦れる場所なので、少し隙間に余裕を持たせた。
イゼッタがドヤ顔で奥のパテ盛りをして行くのを見て、やっちまった事に気付いてしまった。
「車軸を通す溝、切るの忘れた…」
「カケル様、お任せ下さい」
シャキンと鋸を取り出すテイカ。折角だから任せてみよう。寸法を告げて丸投げした。
鋸の入るギリギリで切り始め、二十五ドンの深さに届いたら、ハンマーと、借りパクされた鑿で切り取った。そこから更に両端から掘り進め、車軸の底面の接地部は十五ドン、上に行くにつれテーパーを掛ける見事な掘り方をしてくれた。底面を山にする加工も鋸と鑿ですんなりこなしてしまった。
偉い、と言うか凄い。撫でたる。借りパクされてるけど!
「うふ、気持ち良いですね」
うん、ハンマーは返せよ?引き続き同じ感じで後輪の車軸もお願いした。
センターを繋げたので、次は両サイドの二箇所を止める。
角材を打ち付けてからだと板バネが嵌められないので、一旦船に角材を置いてマーキングし、先に板バネを取り付けた。
残るは車軸と車輪だ。
一旦車軸を通し、片側の車輪を嵌める。反対側から車軸を動かし、車輪が荷台に当たらない場所まで調節したら、削ってない方にマーキングして車軸を外し、余分を切ったら十ドンの太さの円柱に削る。車軸の真ん中に少し削りを入れて差込み、テイカが切った山に嵌めたら車輪を嵌めて四輪の完成だ…、と思ったらまだタイヤ止め作って無かったわ。
「「任せて」下さい」
任せましょう。
テイカは鑿で、イゼッタは魔法で穴を開け、細い角材差し込んで楔打っただけでした。確かに止まってりゃ良いからこれで良いわな。考えすぎてたわ。
車軸の稼働と接触しないかを確認したら再び車軸をバラし、パテ盛りして昼の部終了。飯飯。
0
お気に入りに追加
133
あなたにおすすめの小説
没落した元名門貴族の令嬢は、馬鹿にしてきた人たちを見返すため王子の騎士を目指します!
日之影ソラ
ファンタジー
かつては騎士の名門と呼ばれたブレイブ公爵家は、代々王族の専属護衛を任されていた。
しかし数世代前から優秀な騎士が生まれず、ついに専属護衛の任を解かれてしまう。それ以降も目立った活躍はなく、貴族としての地位や立場は薄れて行く。
ブレイブ家の長女として生まれたミスティアは、才能がないながらも剣士として研鑽をつみ、騎士となった父の背中を見て育った。彼女は父を尊敬していたが、周囲の目は冷ややかであり、落ちぶれた騎士の一族と馬鹿にされてしまう。
そんなある日、父が戦場で命を落としてしまった。残されたのは母も病に倒れ、ついにはミスティア一人になってしまう。土地、お金、人、多くを失ってしまったミスティアは、亡き両親の想いを受け継ぎ、再びブレイブ家を最高の騎士の名家にするため、第一王子の護衛騎士になることを決意する。
こちらの作品の連載版です。
https://ncode.syosetu.com/n8177jc/
婚約解消して次期辺境伯に嫁いでみた
cyaru
恋愛
一目惚れで婚約を申し込まれたキュレット伯爵家のソシャリー。
お相手はボラツク侯爵家の次期当主ケイン。眉目秀麗でこれまで数多くの縁談が女性側から持ち込まれてきたがケインは女性には興味がないようで18歳になっても婚約者は今までいなかった。
婚約をした時は良かったのだが、問題は1か月に起きた。
過去にボラツク侯爵家から放逐された侯爵の妹が亡くなった。放っておけばいいのに侯爵は簡素な葬儀も行ったのだが、亡くなった妹の娘が牧師と共にやってきた。若い頃の妹にそっくりな娘はロザリア。
ボラツク侯爵家はロザリアを引き取り面倒を見ることを決定した。
婚約の時にはなかったがロザリアが独り立ちできる状態までが期間。
明らかにソシャリーが嫁げば、ロザリアがもれなくついてくる。
「マジか…」ソシャリーは心から遠慮したいと願う。
そして婚約者同士の距離を縮め、お互いの考えを語り合う場が月に数回設けられるようになったが、全てにもれなくロザリアがついてくる。
茶会に観劇、誕生日の贈り物もロザリアに買ったものを譲ってあげると謎の善意を押し売り。夜会もケインがエスコートしダンスを踊るのはロザリア。
幾度となく抗議を受け、ケインは考えを改めると誓ってくれたが本当に考えを改めたのか。改めていれば婚約は継続、そうでなければ解消だがソシャリーも年齢的に次を決めておかないと家のお荷物になってしまう。
「こちらは嫁いでくれるならそれに越したことはない」と父が用意をしてくれたのは「自分の責任なので面倒を見ている子の数は35」という次期辺境伯だった?!
★↑例の如く恐ろしく省略してます。
★9月14日投稿開始、完結は9月16日です。
★コメントの返信は遅いです。
★タグが勝手すぎる!と思う方。ごめんなさい。検索してもヒットしないよう工夫してます。
♡注意事項~この話を読む前に~♡
※異世界を舞台にした創作話です。時代設定なし、史実に基づいた話ではありません。【妄想史であり世界史ではない】事をご理解ください。登場人物、場所全て架空です。
※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義なのでリアルな世界の常識と混同されないようお願いします。
※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。
※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
※話の基幹、伏線に関わる文言についてのご指摘は申し訳ないですが受けられません
引退したオジサン勇者に子供ができました。いきなり「パパ」と言われても!?
リオール
ファンタジー
俺は魔王を倒し世界を救った最強の勇者。
誰もが俺に憧れ崇拝し、金はもちろん女にも困らない。これぞ最高の余生!
まだまだ30代、人生これから。謳歌しなくて何が人生か!
──なんて思っていたのも今は昔。
40代とスッカリ年食ってオッサンになった俺は、すっかり田舎の農民になっていた。
このまま平穏に田畑を耕して生きていこうと思っていたのに……そんな俺の目論見を崩すかのように、いきなりやって来た女の子。
その子が俺のことを「パパ」と呼んで!?
ちょっと待ってくれ、俺はまだ父親になるつもりはない。
頼むから付きまとうな、パパと呼ぶな、俺の人生を邪魔するな!
これは魔王を倒した後、悠々自適にお気楽ライフを送っている勇者の人生が一変するお話。
その子供は、はたして勇者にとって救世主となるのか?
そして本当に勇者の子供なのだろうか?
もふもふで始めるVRMMO生活 ~寄り道しながらマイペースに楽しみます~
ゆるり
ファンタジー
ようやくこの日がやってきた。自由度が最高と噂されてたフルダイブ型VRMMOのサービス開始日だよ。
最初の種族選択でガチャをしたらびっくり。希少種のもふもふが当たったみたい。
この幸運に全力で乗っかって、マイペースにゲームを楽しもう!
……もぐもぐ。この世界、ご飯美味しすぎでは?
***
ゲーム生活をのんびり楽しむ話。
バトルもありますが、基本はスローライフ。
主人公は羽のあるうさぎになって、愛嬌を振りまきながら、あっちへこっちへフラフラと、異世界のようなゲーム世界を満喫します。
カクヨム様にて先行公開しております。
【完結】8私だけ本当の家族じゃないと、妹の身代わりで、辺境伯に嫁ぐことになった
華蓮
恋愛
次期辺境伯は、妹アリーサに求婚した。
でも、アリーサは、辺境伯に嫁ぎたいと父に頼み込んで、代わりに姉サマリーを、嫁がせた。
辺境伯に行くと、、、、、
亜人至上主義の魔物使い
栗原愁
ファンタジー
人生に疲れた高校生――天羽紫音は人生の終止符を打つために学校の屋上に忍び込み、自殺を図ろうと飛び降りる。
しかし、目を開けるとそこはさっきまでの光景とはガラリと変わって森の中。すぐに状況を把握できず、森の中を彷徨っていると空からドラゴンが現れ、襲われる事態に出くわしてしまう。
もうダメかもしれないと、改めて人生に終わりを迎えようと覚悟したとき紫音の未知の能力が発揮され、見事ドラゴンを倒すことに成功する。
倒したドラゴンは、人間の姿に変身することができる竜人族と呼ばれる種族だった。
竜人族の少女――フィリアより、この世界は数百年前に人間と亜人種との戦争が行われ、死闘の末、人間側が勝利した世界だと知ることになる。
その大戦以降、人間たちは亜人種を奴隷にするために異種族狩りというものが頻繁に行われ、亜人種たちが迫害を受けていた。
フィリアは、そのような被害にあっている亜人種たちを集め、いつしか多種多様な種族たちが住む国を創ろうとしていた。
彼女の目的と覚醒した自分の能力に興味を持った紫音はこの世界で生きていくことを決める。
この物語は、限定的な能力に目覚め、異世界に迷い込んだ少年と竜の少女による、世界を巻き込みながら亜人種たちの国を建国するまでの物語である。
「僕は病弱なので面倒な政務は全部やってね」と言う婚約者にビンタくらわした私が聖女です
リオール
恋愛
これは聖女が阿呆な婚約者(王太子)との婚約を解消して、惚れた大魔法使い(見た目若いイケメン…年齢は桁が違う)と結ばれるために奮闘する話。
でも周囲は認めてくれないし、婚約者はどこまでも阿呆だし、好きな人は塩対応だし、婚約者はやっぱり阿呆だし(二度言う)
はたして聖女は自身の望みを叶えられるのだろうか?
それとも聖女として辛い道を選ぶのか?
※筆者注※
基本、コメディな雰囲気なので、苦手な方はご注意ください。
(たまにシリアスが入ります)
勢いで書き始めて、駆け足で終わってます(汗
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる