72 / 1,519
ナイフ片手にご満悦な女子
しおりを挟む「お前ぇはまた面白ぇモン思いついたな」
俺は今、武器屋の親父に板バネを注文している。女子二人はお買い物。
板バネと言ってもただの板なら親父は感心しない。カッコを閉じた感じのデカい板バネは貴族や豪商が使っているのだ。俺の注文した板バネは比例曲線の如くV字に曲がっている。V字の片方はサイドに釘穴用の乳を付けてて貰う。これを四つ頼んだ。
「曲がるが戻り、折れない金属…」
唸りながらも二日でやると言う。板バネに打つ太めの釘も注文した。
女子二人のナイフを受け取り店を後にした。
が、やる事ない。
露店街をフラフラしながらスリを華麗にスルーしていると、皆手にキラキラしたのを持ってるのに気付く。わー、殺しに来てるなー。
間違って関係無い人を刺したら大変だし、少し揶揄ってやるか。左右から来るように誘導し、差し込まれる瞬間スッと後ろに回り込んでトンッとするとグサッと相討ち、二人はギャー。丸く人が捌けていく中、勿論俺もそっち側へ。なんぞなんぞと寄って来るマッチョ達。馬鹿・空間・マッチョ・一般の模様が出来上がる。
飯屋もあるし、先に一人で食べちゃおう。目の前の飯屋にそっと入った。
「いらっしゃいませ!お好きな席にどうぞー」
笑顔が可愛い看板幼女に誘われる。この流れ、理解した。
「イゼッタテイカ、何処に居る?」
ボックス席からニョキっとイゼッタが、横からススっとテイカが生えた。
「カケル?ここー」
「カケル様、よく此処と判りましたね」
「愛だよ、愛」
イゼッタの隣に失礼して昼食を楽しんだ。
「カケル様、先程外が騒がしく感じましたが、何かありましたか?」
「ああ、馬鹿が刃物で相討ちになってたようだ」
「平和が一番」
「二人は何も無かったか?」
「ナンパされた」
「良し、殺そう!」
スッと立ち上がる。
「問題ありません。既に警備に突き出してあります」
「命拾いしたな」
スッと席に着く。
「心配?」
「可愛い妻達だからな」
イチャコラしていると、テイカの目がスッとキツくなる。
同時にガチャガチャと騒がしい音が店内の雰囲気をぶち壊した。
「おい貴様、さっき店の前での騒ぎの時居ただろ?話を聞くから詰所まで来い」
「お前達は騒ぎがあったの気付いたか?」
「全然」
「だそうだぞ?」
「女共には聞いてない!貴様だ貴様」
「俺か?何で俺がその騒ぎの中に居たと思ったんだ?」
「そんなおかしな格好して居れば誰でも気付くわ!」
おかしな格好?皮のマントっておかしいのかな?
「なあテイカよ、俺の格好おかしいか?」
「特には。マントやローブは冒険者なら身に付けますし、詭弁ですね」
「女ぁ!」
「あ!そうそう、二人に特注の品が出来上がったので渡しておくわ」
二人に特注ナイフをこれ見よがしに渡してやる。この街の武器屋は全て親父の弟子だ。そして武器に銘を彫っているのは親父だけ。ナイフを見詰めうっとりしてるテイカの獲物に、男共は冷や汗を垂らす。
「折角だから試し斬り、してみるか?」
「うふ、うふふ…。それも良いですね」
陽に当たる刃に照らされる笑顔が怖い。
「私も」
鞘からナイフを引き抜いてキラキラさせてる。
イゼッタよ、お前のは純粋に料理用だ。
ナイフ片手にご満悦な女子二人に大の男が及び腰。捨て台詞を吐いて帰って行った。
「買い物が終わったらゴーラでも狩るか」
「買い物より試し斬り」
だからイゼッタのは料理用だってば。
「イゼッタ様に同意します」
無理に買い物する用も無かったし、すんなり街を出て行った。
南の森で雑魚を狩る。ブフリム、ゴーラ、ブフリム、ブフリム。
ナイフと小銭が貯まってく。人の気配も増えて行く。敵意を持って集まって、見えない範囲で群れていく。
「イゼッタ、あの方向の木、一撃で全部切れるか?」
「杖がある。余裕」
背中からの余裕の声に、発射の合図を躊躇わない。
「いつでも」
「て!」
幅五十ハーンもあるでっかい輪っかが膝の高さで飛んで行く。凄い速さでスパパパパーって。
真っ直ぐ切れた木々は動かない。暫くしたら切れた人々も動かなくなっていった。ギャーギャー喚いてたのも静かになった。
さあ、帰ろう。
0
お気に入りに追加
140
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

【完結】ポーションが不味すぎるので、美味しいポーションを作ったら
七鳳
ファンタジー
※毎日8時と18時に更新中!
※いいねやお気に入り登録して頂けると励みになります!
気付いたら異世界に転生していた主人公。
赤ん坊から15歳まで成長する中で、異世界の常識を学んでいくが、その中で気付いたことがひとつ。
「ポーションが不味すぎる」
必需品だが、みんなが嫌な顔をして買っていく姿を見て、「美味しいポーションを作ったらバカ売れするのでは?」
と考え、試行錯誤をしていく…
スライムからパンを作ろう!〜そのパンは全てポーションだけど、絶品!!〜
櫛田こころ
ファンタジー
僕は、諏方賢斗(すわ けんと)十九歳。
パンの製造員を目指す専門学生……だったんだけど。
車に轢かれそうになった猫ちゃんを助けようとしたら、あっさり事故死。でも、その猫ちゃんが神様の御使と言うことで……復活は出来ないけど、僕を異世界に転生させることは可能だと提案されたので、もちろん承諾。
ただ、ひとつ神様にお願いされたのは……その世界の、回復アイテムを開発してほしいとのこと。パンやお菓子以外だと家庭レベルの調理技術しかない僕で、なんとか出来るのだろうか心配になったが……転生した世界で出会ったスライムのお陰で、それは実現出来ることに!!
相棒のスライムは、パン製造の出来るレアスライム!
けど、出来たパンはすべて回復などを実現出来るポーションだった!!
パン職人が夢だった青年の異世界のんびりスローライフが始まる!!

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。
狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。
街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。
彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる