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兄んちゃん、ウチでやんねーか?
しおりを挟むイゼッタ温かいなりーで寝た筈なのに、起きたら四つのおっぱいに顔を挟まれて居た。
けれど至福の時間は短い。髭ミドルに会う予定があるのだ。今日もお留守番なテイカに口でして貰い、朝飯食べて装備を纏め、イゼッタと木のモンスターを結わえて行ってきます。
昨日同様大人しい木。森を歩いて門に着いても大人しかった。門兵はギョっとしてたが許可貰ってるし堂々入りますよ。とは言え寄り道は出来ないので真っ直ぐ造船所へ向かう。当然注目を集めた。仕方ないね。
造船所前には既に受付嬢が待っていて、今日は工場の事務室で話をすると案内された。製造途中の大型船があってとてもカッコイイ。事務室には髭ミドルと一緒に髪と髭が繋がった、厳つい顔した小柄なおっさんが居た。工場長のガイモンと紹介を受けた。お茶を飲み飲み昨日の説明をする。
「で、ソイツが例のモンスターってか」
俺達が座るソファの横で観葉植物の如くじっとしてる木を指差した。
「モンスターだとは思いますが敵意が薄いので分類が判りませんね」
「使えるんなら問題無いわい。試しに一丁原液とやらを見せてくれ」
部屋の隅に用意してあった木桶を指差した。
指差しは癖なのか?木の横に周り、そっと傷を付けるとどろっとした白濁が木桶を汚しだす。
「あんまり出ないが大丈夫なのか?」
「大きく切ると部屋がドロドロになるので加減しています」
切りすぎると枯れて死ぬが、少しの量なら回復する旨伝えると、大人しいならある程度中庭に住まわせてみようかと言う話になった。殺すのも帰すのも、労力は変わらんからな。
木桶に溜めた原液を見た髭二人、やはり思う事は同じなのだろう。アレをイメージしてる。
「原液そのままですと木に染み込んでしまうので二度塗り三度塗りが必要になります。少し時間をおくと粘りが増しますので、その状態で塗ると厚塗り出来るので一度塗りで済ませる事が出来ます」
「へぇ、それがこの板か。目地剤ありの方は時間が経った物か?」
「目地剤は原液そのままです。使い方は既にご理解頂けていると思うので省略します」
肩掛けカバンから木皿と木ベラ、木の粉を取り出し木桶から原液を少し取り、木の粉と混ぜて行く。
「結構細かい粉だな」
「おが屑だと練り混ぜ難いので粉の方が良いかと思います」
「その通りだ。若ぇのによく知ってんな」
「壁の補修の手伝いをした程度ですよ」
壁と言っても護岸とかだが。
板の裏にナイフで深い切込みを入れてパテを塗り込める。これは体育館でやった。
「兄んちゃん、ウチでやんねーか?」
「カケルは私の」
「そりゃあ悪かったわ」
ワシはこれで失礼する、と言って木桶とパテと、木の粉を持って出て行ってしまった。きっと自分でもやるつもりだろう。
「カケル殿、その様子だと既に浴槽の目処は立ってしまっていると思うが」
「はい。板に塗る試作をしている段階で、この二種類の材料だけで解決してしまいました」
「どうしてハイネルマールに教えた?出来ませんでしたで済ませても良かったものを」
「約束を違える事をお嬢様は良しとしません。それに、この技術があれば街の更なる発展となりましょう」
「街の為、か」
「長く住み続けたいのです。逃げるのはお嬢様に負担をかける事になりますから」
「解った。ハイネルマール家次男グラウン・ハイネルマールが誓約する。イゼッタ・シンプロン・ナーバーグの存在を死ぬまで秘匿すると」
「ハイネルマール殿、感謝に堪えません」
イゼッタよ、嘘泣きすんな。髭ミドルにバレてないから良いけど。若しくはこれが貴族の交渉テクか?
契約書と誓約書を交わし造船所を後にした。木のモンスターの棲家も教えたし、後は勝手にやってくれるだろう。
お土産買って、窓を受け取って帰ろう。
夕飯の時間に帰って来られた。お土産の鳥肉は焼肉になりました。
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