女神に嫌われた俺に与えられたスキルは《逃げる》だった。

もる

文字の大きさ
上 下
43 / 1,519

工具は武器屋で買う

しおりを挟む


 街に来た俺達三人は武器屋に来ている。

「バトルハンマー?そんなモンここじゃ売れねぇから作ってねえよ」

重いだけの武器は海で使えないと言う。海のある街ならではの理由だ。

「ぶっちゃけ掛矢かけやでも良いんだが」

「何だ?お前ぇ家でも建ててんのか」

「家は出来たんだが外階段を作り忘れてな。後、窓もドアも無い」

「鉄で良いなら蝶番と釘はあるぞ。掛矢は左の奥にある」

「小さいハンマーはあるか?」

「お前ぇどうやって家建てたんだ?」

「主に魔法とスキルでな」

「魔法で家が建つなら大工は必要ねぇな」

「大工の知識も技量も大切だぞ」

「お前ぇ、分かってんじゃねーか。これも買ってけ」

掛矢、蝶番十個、鉄釘五十本、ハンマー、そしてかすがいを百本も買わされた。重い!
流石にこれ持って二人を運ぶのは無理なので、二人が風呂に入ってる間に一度戻る事にした。掛矢を持って来た俺を見たババァが冷や汗かいてた。

急いで帰って戻って来たが、まだ二人は出てないそうで俺も風呂に入れた。きっと気を使って長湯してくれたのだろう。愛い奴らめ。

 風呂でまったり建築について考える。ドアの鍵どうしよう、とか、窓ガラスどうしよう、とか。
ドアは鍵付きのユニットを買うしかないかなー。窓も一緒に買って値下げの交渉に使うか。それより何処に売ってるか、だよなー。
まあ、ギルドに行けば教えてくれるだろ。

ちゃんと教えてくれました。ギルド有能だな、馬鹿も居るけど。

 で、街の真ん中にある建築ギルドにやって来た。冒険者ギルドと違って家屋の並びにあるこじんまりとした建物だ。
売り物がデカいから商品が置けないからか…と思ったが、ギルド加盟者が各々個人の店を持っていて、ギルドは依頼に適う店を斡旋してくれるインフォメーション的な役割を担う施設なのだそうだ。

受付のおばちゃんに要件を伝えるとパラパラっと名簿を捲り、ここが良いわと別紙に依頼書と行き先を書いてくれた。紙と案内料で千ヤン。街には紙が売ってないので裏はメモ書きに使おう。

 教えて貰った店は所謂建具屋だそうで、窓やドアの他にクローゼット等の木製品を得意としているそうな。

「いらっしゃい。何か入り用で?」

ガタイの良い逆モヒカンの親父が意外と丁寧な態度で接客してきた。

「家を建ててる最中なのだが窓とドアを作って貰いたい」

「サイズは如何しましょう」

「ドアは俺が屈まず入れるだけあれば良い。ドア自体は作れるのだが、ノブや鍵が作れなくてな」

「成程」

「それと窓だが、そっちは全くの無知なので匠の手に頼らざるを得ない」

「因みに、どう言った造りの家で?」

「丸太を組んだ物だ」

「昔ながらの製法ですな、趣深い」

窓のサイズと予算と納期を話し合い、まずはドアを優先し、窓はその後作る事になった。ドアは明日一枚、残りは四日後。窓はそれから十日後の納期となった。ドア五つと窓四つ、小窓一つで金貨九枚。
ついでに箪笥やクローゼットを見せてもらい、構造を把握する。プロは凄いな。

帰りに道具屋でランタン二つと油を買い、ちょっと早目の夕食を食べて帰った。


 イゼッタが嬉しがって居る。明日、ドアを付ければ《ほぼ家》が《家》になるからな。

「子種子種~」

「楽しみか?」

「私はカケルに全てをあげたいの。けどテイカばっかりだったから…」

「明日はたっぷり楽しんで下さい。あたしもお手伝いしますので」

やる気満々だな、良い事だ。
明日は俺だけで街に行くので家具を作る為の柱と板、木釘を量産しておいて貰う事にした。

夜は軽く、二人に飲んでもらうだけで寝た。


 朝から街に来た俺は建具屋で寝具店の場所を聞き出して向かっていた。朝一でまだ完成していなかったのだ。正確には、鍵のユニットを付ければ完成するのだが焦る事は無い。
ベッドの看板の店、ここが寝具屋だ。多分。
店に入って、正しかった事にほっとする。宿屋の看板もベッドが描いてあるので紛らわしいのだ。

「いらっしゃいませー、お一人用ですか?」

可愛らしい少女が接客に来た。

「見栄を張って三人用のを探しているんだが」

「寝相が悪いのでしたらベッドより布団タイプをお勧めしますよ」

フローリングだらけのシルケにも布団文化があるのか。いろいろ見せてもらうと、ベッドの他にもマットや布団、シーツなど布製品が多くあった。ただ、布製品は手間がかかる分高い。木製品より高い。そんな中、気になる物を発見。

「このベッド、シーツの下は草なんだな」

「草の他には、獣の毛やおが屑などが使われますね。わたしは良い匂いがするのでおが屑派です」

確かに草のベッドは干し草の香り、おが屑のベッドは木の香りがする。

「確かにこれは良い匂いだな」

「お買い上げ?」

「残念だがサイズ的に見送りだな。シーツだけでも欲しいので三枚頼む」

「お買い上げありがとうございます」

二×三ハーンのシーツ三枚で金貨二枚と銀貨四枚。
再び建具屋にてドアを受け取り、街の人に注目を浴びながら街を出た。空飛ぶドアの噂などされたら堪らないので森の中を滑るように進む。あの時の熊が居たけど無視された。敵じゃないけど危険でもない扱いって事か。
森の中頃から空飛ぶドアになり島を目指した。

「ドア買ってきたぞ」

「おかえりなさい」

「ドアはよ」

柱を持って待っていたイゼッタに急かされて工事に取り掛かる。
ドアに合わせて柱を切って、柱に合わせて壁を切り、壁と柱を鉄釘で打ち付ける。ドアに蝶番を付けた状態で稼働を確認し、柱と蝶番をくっ付けて、ドアの開きと鍵の様子を確認したらドアの完成だ。

「成し遂げた」

「まだ外側だけだけどな」

「しよ?」

「まだ昼前だぞ?」

「…カケルぅ…」

「あたしからもお願いします」

よしやろうすぐやろう!
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

【完結】ポーションが不味すぎるので、美味しいポーションを作ったら

七鳳
ファンタジー
※毎日8時と18時に更新中! ※いいねやお気に入り登録して頂けると励みになります! 気付いたら異世界に転生していた主人公。 赤ん坊から15歳まで成長する中で、異世界の常識を学んでいくが、その中で気付いたことがひとつ。 「ポーションが不味すぎる」 必需品だが、みんなが嫌な顔をして買っていく姿を見て、「美味しいポーションを作ったらバカ売れするのでは?」 と考え、試行錯誤をしていく…

スライムからパンを作ろう!〜そのパンは全てポーションだけど、絶品!!〜

櫛田こころ
ファンタジー
僕は、諏方賢斗(すわ けんと)十九歳。 パンの製造員を目指す専門学生……だったんだけど。 車に轢かれそうになった猫ちゃんを助けようとしたら、あっさり事故死。でも、その猫ちゃんが神様の御使と言うことで……復活は出来ないけど、僕を異世界に転生させることは可能だと提案されたので、もちろん承諾。 ただ、ひとつ神様にお願いされたのは……その世界の、回復アイテムを開発してほしいとのこと。パンやお菓子以外だと家庭レベルの調理技術しかない僕で、なんとか出来るのだろうか心配になったが……転生した世界で出会ったスライムのお陰で、それは実現出来ることに!! 相棒のスライムは、パン製造の出来るレアスライム! けど、出来たパンはすべて回復などを実現出来るポーションだった!! パン職人が夢だった青年の異世界のんびりスローライフが始まる!!

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。

狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。 街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。 彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

処理中です...