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全部で一万
しおりを挟む馬鹿共のガチャガチャに叩き起され俺の朝が始まる。
今日は買い物したら野宿する予定。
朝食の鳥と野菜のスープとソーサーを平らげ、出掛け越しに筋肉ハゲに挨拶しておく。
「明日まで野営してくる」
「女でも出来たか」
「そう言う時に言う言葉は《世話になったな》だろ」
「生きてたら帰って来い」
「死んだら化けて出てやる」
「聖水買って待っててやる」
ギルド、混んでるけど聞きたい事あるし行かないとなー。
で、やっぱり混んでた。鑑定カウンターのマニアで良いか。
「マニア、少し良いか?」
「おはようございます。鑑定ですか?」
「それは近い内に頼む。聞きたい事があるんだが…」
ポーションの精製に使うような器具について聞いてみたが中々の博識。染み出る液体を集める器具が買えそうな店を教えて貰った。
露店通りの風呂屋の反対側の路地を進むと、文字が消えた看板がある。ここが調合用品店と言われても初見じゃ素通りするだろう。
「客が来たぞ」
静かな店内に俺の声が響く。
どこの店も所狭しと商品を置くのが好きなのか?とにかく雑多。何処に何があるか分からない。
「本当に客かい?」
「ギルドのマニアにこの店を聞いた。簡単な装置を作りたいので材料を見繕って欲しい。高過ぎたら見積もりを出してくれ」
頭にホイップの乗った爺さんがカウンターに現れた。
「ドラゴンスケイルの樹液を採取したい」
「吸い出すのか?」
「自然と集まるのを待つつもりだ」
その程度なら…、とウロウロガサガサカウンターに乗せていく。ビーカーにガラス管。うーん、そうじゃない。
「ビーカーより瓶が良いな。あと柔らかい管はないか?蓋をしてゴミが入らないようにしたい」
それなら…、と再びガサゴソ。
蓋付きの薬瓶二つ、短いガラス管二本、動物の腸で出来た管、そして布切れと紐。全部で一万ヤン。端数はおまけしてもらった。
「上手く行くと良いの」
「いかなきゃ丸損さ」
買い物も済んだし…、行くか。山側の門に向かった。
門を出て暫くは森。そこから斜面が増えて禿げた岩山になる。近道は無く見通しが良い為飛んで行けない。森の中は楽をして、岩山からは仕方なく歩く振り。
山羊の野獣が居るけど襲っては来ない。草食だしな。
蛇を捕まえてた鳥の野獣も居るがクルクル飛んでるだけ。
モンスターが居ないと楽で良い。人も居なけりゃ早く行けるのにな。
山頂で昼飯食ってる奴らを横目に、ここからは尾根伝いに降りて行く。降りるのは早い。
こちら側には蛇が居るが棒でペッと弾いてやれば斜面を転がって行く。鳥のご飯だし殺生はしない。
山の昇り降りで午後をだいぶ過ぎた。早足っぽく飛んでドラゴンスケイルの実を取りに行く。ちなみにこれは俺のご飯だ。
実のあるドラゴンスケイルの前に辿り着き、樹液の採取に取り掛かる。
実をナイフで切り落とし、本体の切り口にガラス管を突き刺すと、汁がジワジワ流れて来る。
ぽたぽたしたのを舐めてみる。うん甘い。
ガラス管・腸管・ガラス管と繋ぎぽたぽたを確認。穴を開けた布に突き刺し、瓶にガラス管を差し、布を紐で縛り蓋をする。あとは倒れないように補強して完成。
暫く時間が掛かるので薪を拾ったりスケイルの実を取って食ったりして過ごす。
着火の練習もしなければ。
火打石の火花を狙った所に落とすのには苦労したが火自体はすぐに付けられた。火口のおかげだ。
火花の落ちた火口を鰹節にした枯れ木で囲み、優しくゆ~っくり息を吹いてやると、次第に白煙が上がり炎が上がる。あとは細い枯れ木から徐々に太くしてやれば良い。
火を見ると落ち着くな…。時間は夜になっていた。
で、樹液の様子確認してないじゃん。
瓶を見ると七割くらい溜まってた。一度瓶を外してガラスの蓋をする。ぽたぽたは続いているのでペロリ。うん、甘い。新しい瓶に変えて朝まで様子を見よう。
朝になり、瓶を見ると汁が溢れてた。
最初に取った物と後の物と、味を比べてみるがどちらも同じ感じだ。汁を無駄にしないように余裕のある方に少し足し、ガラスの蓋をする。まだ余裕があるのでガラス管を差して蓋しとく。
人が居ない内にスケイルの実を採取しまくろう!
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