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惚れてまうやろ

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 拾った指輪を売払いにギルドの買取カウンターへ戻って来た。何時もの美人さんじゃない。猫耳のかわい子ちゃんだ。眼福の双丘!

「あ、ワタウリ売りの人。いらっしゃいませー」

語尾がニャンじゃない!

「カバンの中に売り残しがあったんだ。見てくれるか?」

「どぞどぞー」

カウンターから身を乗り出すとたわわがたゆんとするのでお止め頂きたい!
心を鎮めて指輪をそっと乗せる。

「女性向けの指輪だね」

「臭い袋の小銭の中に紛れてたんだ」

「鑑定料掛かるけどどうする?」

鑑定には金が掛るが価値が上がったり売りたくなくなったりするそうな。鑑定料は五百ヤン。
鑑定しないと地金や石の価値のみらしい。

「鑑定して、良い物だったら意中の相手にプレゼントするとかねー。例えばあたしとか」

上目遣いすんな、惚れてまうやろ。

「上目遣いすんな、惚れてまうやろ。プレゼントするかは置いといて運試しに一つやってみるかな」

「前向きに検討してね!じゃあ隣のカウンターで見てもらってー。マーニャンお仕事ー」

やっと猫っぽいセリフが聞けた。

「マーニャン呼ぶな!お客様こちらへどうぞ」

マーニャンは男だ。正しくはマニアであると自己紹介された。好きな物に猪突猛進しそうなイメージ。フードで顔はわからんが。
鑑定料の五百ヤン払ってやってもらう。自前のスキルと水晶珠みたいな珠を組み合わせてより詳しいデータを取るそうな。

「え?ああ、これ持ち主居ますね。ちょっと捜査依頼来てるか調べますね」

厚いファイルを取り出してペラペラ捲ると中程で目的の依頼書を見つけたようだ。
二年程前に亡くなった女性冒険者が身に着けていた物で家族が遺品として探しているらしい。
依頼料は一万ヤン。九千五百ヤンの儲けだな。
拾った場所など詳しい状況を説明してその場で金貨を受け取った。初両替の金貨はちょっと大きくずっしりしてた。

「そんなに価値のある物なのか?」

「物より思い出ですね」

「なるほど」

「プレゼント貰えると思ったのにー」

何れまた、機会があれば、その内に。
すまんと伝え、俺は出て行く。翔、心の短歌。


 思わぬ金まで入ったので買い物しよう。昨日聞いた雑貨屋に向かう。
商店がある場所は露店の周りなので迷う事が無い。
入った店は刃物から古着まで、中古を扱う店だった。

「いらっしゃい。何をお探しで?」

中古の老婆が一人、売り物に紛れていた。

「上着とマントとタオルあるかな?」

「ちょっと待っとくれ…」

ウロウロゴソゴソ持って来た。上着とマントはその場で試着する。
上着は厚手の布製。ポケットが無いのがネックかな。マントは皮製で重い。フード付きで雨風に強そうだ。タオル含めて全て茶色だ。
タオルが二百八十ヤン、上着が六千八百ヤン、マントは二万二千五百ヤン。しめて二万九千五百八十ヤンをお買い上げ。
おまけに小箱を貰った。中に炭になって潰された綿が入ってる。

「火口箱だよ。冒険者なら持ってて損は無いよ。濡らさないようにして持ってお行き」

どうやらこの世界では値切るのが一般的らしく、老婆が値切り分おまけしてくれたようだ。
昨日のおばさんが火打石と打ち金をくれたのもそう言う事なのだろう。

背負いカバンはここにも無いそうで、買うならここ、と防具屋を教えて貰った。
盾のマークを目印に上を見ながら歩いて行くと、二分ちょっとで店に着く。
中はしっかり防具屋だ。鎧と盾が半ば崩れて陳列されている。

「客かー?」

「客だ。雑貨屋の婆さんに聞いてきた。背負いカバンが欲しい」

「ありゃあ俺のかーちゃんだ」

「店の作りが同じだもんな」

「こっちの方が整理されてるぞ。それより背負いカバンだな、ちと待て」

どこがじゃ。ウロウロゴソゴソ探す姿がそっくりだ。
そんなこんなで持って来た背負いカバンは帆布みたいな分厚い布製。角に皮が当ててあって丈夫そうだ。

「良いな。けど高いんだろ?」

「それなりにな」

「そのカバンを買うって目標が出来たぞ」

「そりゃあ良かったな。六万五千だ、がんばれよ」

高い!銀貨六十五枚!臭い袋を狩りまくるか?それともよりコスパの良い採取をするか…。ワタウリは四千個も取ったのでもう売れなそうな雰囲気だったし、ポーションの原料で稼ぐか?ギルドの図書室で儲かりそうなものをチェックしなければ。
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