上 下
10 / 1,519

ベッドで寝たい

しおりを挟む


 買い取りの美人さんと買取カウンターへ戻る。
前を歩く美人さんが心なしか弾んで見える。

「ワタウリのワタの件ですが…、美味しかったです」

「それは良かったね」

俺からすると薄味なのだが、シルケには甘味が足りないのだろうか?

「種の方は買取可能な種が二十八個取れましたので計三十四個。計千二十ヤンになります。買取合計は千四百六十一ヤンになりますが買い取らせて頂いてよろしいですか?」

「よろしいよ」

「フフッ、それではワタウリのワタ代を合わせて千五百ヤンをお受け取り下さい」

「ワタ代なんて良いのに」

「情報料も含まれていますので、もしかしたら更に支払う事になるかも知れませんが受け取って下さいませ」

「そう言う事なら貰っとくよ」

銀貨一枚と銅貨五枚貰った。
甘味についての情報料か…、これも金になるな。
美人の前で長居すると良くない事が起こる気がしたので安宿と道具屋を教えて貰いすぐにギルドを後にした。


 宿屋はギルドの裏手に併設されてた。入口が違うだけで同じ建物だったりして。
入ってすぐのカウンターにでかいハゲの筋肉が居る。

「…客か?」

「男一匹。飯は何時出る?」

「一泊三千前払い。飯は一食五百で朝晩二回、食う前に先払いだ」

「体を洗いたい時は?」

「湯は出せるが共同浴場に行け、どっちも五百だ」

カウンターに敷かれた地図をトントン指さす。

「一泊だ」

ブフリムの臭い袋をドシャッとカウンターに乗せる。

「ブフリム臭ぇ、そうかお前ぇ冒険者か」

「まだヒヨっ子さ」

「だろうな。鉄貨と銅貨以上は分けておけ。皮袋に入れておけばいざと言う時武器にもなるからな、あとギルドで両替しとけ」

銅貨三十枚が筋肉ハゲに拉致された。
飯代と風呂代含めて一泊で持ち金が三分の一以下になるな。

「二階の二つ目だ。ドアに同じ絵が貼ってある。出掛ける時は持って来い。盗まれる物は置くなよ?」

可愛らしい花の絵の木札を受け取った。

「ああ、すぐ出るから問題無い」

「女は呼ぶなよ」

「呼ぶならもっと稼いで良い宿に泊まるさ」

「くくくっ、違いねぇ」

 ウケたので二階に上がる。
ドアに花の絵が貼ってある。識字率が良くなかったりするのかな?
ドアノブを押したり引いたりスライドさせてみるが開かない。鍵はかかるみたいだ。
ドアノブの下に丁度木札の入りそうな穴があるのでググッと奥まで差し込むと、ドアが押し開くようになった。木札は鍵なんだな、理解。
部屋の中から木札を差した所を見ると、引っこ抜ける感じに木札が飛び出てる。引き抜くと閂が出る。穴から覗けない工夫もしてあるし、生活の知恵が詰まってるな。足元に内鍵もあった。

ドアを閉めて、木札を抜いて、内鍵掛けて、ほっと一息部屋を見渡す。
部屋の広さは三平米くらいで実家の六畳より狭い感じ。シングルベッドに椅子と机。机の上にランタンが置いてある。寝るだけならこれで充分だな。
ベッドに腰掛けいらない装備を外していく。と言っても売り忘れた十メートルのワタウリの蔓と、持ち過ぎてポケットを圧迫する投擲武器石ころと飴のゴミだけだが。

(石二つとナイフと財布と臭い袋は所持しておこう。棒はどうすっかなー)

金は三千ヤンと価値の解らん鉄貨五十三枚。
鉄貨一枚一ヤンとして、百枚で一銅貨と予想しておく。鉄貨以下の硬貨があるやも知れんし。

(両替はさっき銅貨を払ってする必要無くなったし、鉄貨用の皮袋と昼飯と、明日泊まる為のまとまった金が欲しいなー。
一日街で過ごすと飯・風呂・寝るで五千ヤン。銀貨5枚は最低必要になる。このままだと明日の朝飯を食ったら千五百ヤンと鉄貨五十三枚しか残らないぞ?
とっととベッドで寝たいけど、屋台で軽く食ったら金策するか!)

棒を持ってお出掛けする。



しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

RiCE CAkE ODySSEy

心絵マシテ
ファンタジー
月舘萌知には、決して誰にも知られてならない秘密がある。 それは、魔術師の家系生まれであることと魔力を有する身でありながらも魔術師としての才覚がまったくないという、ちょっぴり残念な秘密。 特別な事情もあいまって学生生活という日常すらどこか危うく、周囲との交友関係を上手くきずけない。 そんな日々を悶々と過ごす彼女だが、ある事がきっかけで窮地に立たされてしまう。 間一髪のところで救ってくれたのは、現役の学生アイドルであり憧れのクラスメイト、小鳩篠。 そのことで夢見心地になる萌知に篠は自身の正体を打ち明かす。 【魔道具の天秤を使い、この世界の裏に存在する隠世に行って欲しい】 そう、仄めかす篠に萌知は首を横に振るう。 しかし、一度動きだした運命の輪は止まらず、篠を守ろうとした彼女は凶弾に倒れてしまう。 起動した天秤の力により隠世に飛ばされ、記憶の大半を失ってしまった萌知。 右も左も分からない絶望的な状況化であるも突如、魔法の開花に至る。 魔術師としてではなく魔導士としての覚醒。 記憶と帰路を探す為、少女の旅程冒険譚が今、開幕する。

性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。

狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。 街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。 彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

第三王子に転生したけど、その国は滅亡直後だった

秋空碧
ファンタジー
人格の九割は、脳によって形作られているという。だが、裏を返せば、残りの一割は肉体とは別に存在することになる この世界に輪廻転生があるとして、人が前世の記憶を持っていないのは――

異世界帰りの【S級テイマー】、学校で噂の美少女達が全員【人外】だと気付く

虎戸リア
ファンタジー
過去のトラウマで女性が苦手となった陰キャ男子――石瀬一里<せきせ・いちり>、高校二年生。 彼はひょんな事から異世界に転移し、ビーストテイマーの≪ギフト≫を女神から授かった。そして勇者パーティに同行し、長い旅の末、魔王を討ち滅ぼしたのだ。 現代日本に戻ってきた一里は、憂鬱になりながらも再び高校生活を送りはじめたのだが……S級テイマーであった彼はとある事に気付いてしまう。 転校生でオタクに厳しい系ギャルな犬崎紫苑<けんざきしおん>も、 後輩で陰キャなのを小馬鹿にしてくる稲荷川咲妃<いなりがわさき>も、 幼馴染みでいつも上から目線の山月琥乃美<さんげつこのみ>も、 そして男性全てを見下す生徒会長の竜韻寺レイラ<りゅういんじれいら>も、 皆、人外である事に――。 これは対人は苦手だが人外の扱いはS級の、陰キャとそれを取り巻く人外美少女達の物語だ。 ・ハーレム ・ハッピーエンド ・微シリアス *主人公がテイムなどのスキルで、ヒロインを洗脳、服従させるといった展開や描写は一切ありません。ご安心を。 *ヒロイン達は基本的に、みんな最初は感じ悪いです() カクヨム、なろうにも投稿しております

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

処理中です...