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青臭く、仄かに甘い
しおりを挟む飛んだまま眠ってしまっていた様だ。
目を開けると星明かりがキレイで意外と明るい。月は無いが星の帯がある。
砕けて散らばった月の破片が輪を成してるのか?
落ちてきたらチョーメテオ。
地上を見渡すとかなり広い草原だ。真っ直ぐな道があり、隣接した畑が柵で囲われている。
その奥には壁に囲まれた街もあった。頑張って開墾したんだな。
移動は止まっているのでこの場所が弱いモンスターなどの生息地と言う事になる。
(女神のヤツ、落とすなら初めからこう言う所に落として欲しいよな)
しかし降りても街には入れなそう。腹は減っても金がないしな。
明日の事、今夜の事をどうしようかと悩んでいると、逃げ方の更なる発想を思いつく。
(加速してして森に向かい逃げる。障害物やモンスターなどの攻撃を避けながら生で食べられる木の実の前まで移動してクリープ)
早過ぎないように速度は加減して目的地に向かう。
これは一つ目巨人から逃げる時の指示をヒントにした。逃げた後の指示はだいぶ甘いのできっと飯にありつける。生食できる所も重要だ。
同じ指示を続けていれば腹も脹れる事だろう。
夜の森は暗い。がギフト様々。
森の木々をするりと避けつつ奥へ奥へ…。
今は高度五メートルくらいで飛んでいるが、地上には犬っぽいのやゴブリンっぽいのが結構居る。
犬っぽいのが野獣でゴブリンっぽいのはモンスターだと思う。
目線が合わないとなかなか気付かれないものでスルー推奨。相手がこちらを見付けても目もくれず飛んでいたら追いかけて来なかった。
攻撃範囲外の獲物を無理に襲う必要は無いのだろう。犬がゴブリン食ってたし。腹減った…。
しばらく飛び続けると五十平米あるかどうか、ちょっと広めの草地に出た。高度が落ちたのでこの辺りが俺の餌場なようだ。
草の中に歪に丸い三センチ程の玉がある。草から伸びたつるに付いているので実なのだろう。触った感じ柔らかい。
数歩の範囲で似た感じの色艶をした玉を十個拾えた。
玉洗った?洗う水が無い。ギフトを信じて前歯で齧る。
プチッ、ドロー…。
ミニトマトの中にみたらし団子のタレが入っている様な感覚。味はまるで違うが。
中身は青臭く、仄かに甘い。そして小さな種がヌルヌルで噛み砕けない。地球で食った何かに味が似てるなー。
「そうだ、クコの実だ!」
小学生の頃、野に生えてるのを食った事があるが、それ以来中華食材やミックスナッツに入ってるクコの実を回避してたのだった。
「やっぱり不味い」
不味くても、腹を満たしたいので三つだけ食べて残りはキープしズボンの膝上ポケットに入れておく。他の所に行けばもっと美味い実が拾えるかも知れんしな!
(加速しつつ高度五メートルを維持して森の奥に逃げる。障害物やモンスターなどの攻撃を避けながら今食った以外の生で食べられる木の実の前まで移動してクリープ)
他の味を求めたので指示の使い回しが出来なかった。
暗いけど慣れてきたので速度やや早目で移動する。回避は自動だし、曲がる時のGだけ気にすれば問題無い。
暫く行くと高度が上がった感覚が来る。今度の獲物は木の上か。
てっぺんまで上がってみると、枝に蔓草が絡んでて、手のひら大のマクワウリみたいなのが付いていた。手に持つとふわっと柔らか、そして軽い。両手で瓜もどきを割ってみると、中には白い綿状のものがこれでもかと詰まっていた。二センチ程のわたわたを一つつまみ取ると中に種が見える。
種が熟したら皮が破れて、乾いたふわふわが風に乗って飛んで行きそう。シルケにもケセランパサラン居るのかな?
(このわたわたを食えば良いのか?)
摘んだわたわたを咀嚼してみる。
繊維状でシャクっとした歯応え。種は硬くてペッ。味はまあ、仄かに甘く、仄かな酸味。青臭さがないのでだいぶマシ。けど何だろう、みかんの筋食ってるみたい。瓜もどきはその場で二つもげた。一つは完食してもう一つはジャンパーのポケットへ。種も大きめのを六粒取っておく。
人が交配しないと木の実なんてこの程度の味なんだろうな。美味ければ果樹園で育てられてるだろうし。
つーか、木の実を指示したのに二回とも草の実だったのは何故か?
それなりに腹も膨れたし、朝になるまで木の枝と瓜もどきの蔓に引っ掛かって寝る事にする。明日は弱そうな野獣など狩って、あの街で金策しよう。
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