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あたたかい、ぬくもりの中で
しおりを挟む横向きになった背中が温かく、頭には柔らかい物が乗っている。覚醒して、ロシェルと気付くのにさほど時間は掛からなかった。それよりも、誰かに左手を掴まれて伸ばした先が、脈打つ物に押し付けられてる。目が開いてもソレを認識する事が出来なかった僕は、柔らかい感じのする脈動に、自然と手を動かしていた。
「ん…」
スベスベしてる。掌の真ん中辺りにはプリっとしたのがある。僕は再び目を閉じる…。
「ふぅ…。居候は早起きしないとご飯食べられないんだぞ?起きて服着ろ。ロシェルも離せ」
「生殺しかよ…」
「僕の事だよなソレ」
「ユカタァ…ごあ~ん」
「自分達で作るんだ。起きないとエヴィナのおっぱい吸うぞ」
「あぅ、ダメェ…起きう…」
いつも早起きなロシェルが珍しくグズる。よく寝られたんだろうな。
「離してくれないとみんなが着替えられないから。ね?」
「あ~…あっ」
腕を上げ、仰向けになったロシェルに覆いかぶさり、柔らかい物に顔を埋める。バランスを崩しただけで他意は無い。無いぞ?
「ユカタ君…」「するの?ここでしちゃうの?」「朝からお盛んね」
「早起きもしてみるものね。私の番はいつかしら」
ロシェル以外は皆起きてたようだ。起きてたなら起きて働け。
「ロシェル、柔らかかったよ。みんなもご飯作りに行こ」
「うん…」
しおらしくなったロシェルは素直だ。
「オレは?」
「貴族でなければおっぱい吸ってたよ」
「遠慮しねーでちゅぱちゅぱしれや」
「よだれ臭くなっても知らないぞ?」
服着ないガサツ者を軽く流して階段を降りる。途中2階でドアをノックし、返事を待たずに下へと降りた。
勝手知ったるセーナの家だ。竈の中を掃除して、新たに薪をくべたら灰の中から生き残った燃えさしを竈に戻し、息を入れて煙を上げる。削ってクルクルになった木片に火が着くと、後は細い順に燃え移る。太いのに火が着いたら使う時まで蓋をして、中を温めておいてもらおう。
「早いじゃない」
「早起きする程火が残るってね」
セーナが起きて来たので竈を代わり、僕は水を汲みに出る。
「お、何だ坊やかい」「見掛けに寄らずお寝坊なのかねぇ」「んま、それはそれで」
水汲みに来てるのか、それとも出待ちをしてるのか。主婦達は僕が家から出て来ると、期待した目を曇らせて、水汲みバケツを持って立つ。
「起こしたからその内出て来るよ」
「良い子だよ坊や」
僕は良い子だ。そして僕は大人の男だ。水汲みを2往復した所でやっと降りて来たガサツ者を、顔を洗って出直せと放り出した。外がうるさくなった。飯作ろ…。
朝食は干し肉と野菜のスープに串刺し丸パン。乾物は早めに使い切って新しいのを補充したいのでたっぷり使った。串刺し丸パンは金串に刺したパン生地を竈の中に立て掛けて焼いた物だ。野外用のミニテーブルに配膳し、丸まった絨毯に座って頂きます。
「ブへの感謝を」
「「「ブへの感謝を」」」
セーナの言葉に皆が続き、食事が始まる。量は多いがスープとパンだけなので、食事はすぐに終わってしまった。食事の時間の大半って、肉を噛んでる時間なんだよね。
「あンた達、今日は何するの?」
食器等を片付けながら、セーナは予定を聞いて来た。
「僕は昨日言った通り、草摘みしようと思ってたけど」
「私達もユカタに倣おうかと」
「外の様子も知っておきたいし、ね」
「じゃあオレも旦那に付いてくわ」
「アタシも~」
「そうね。しばらくは離れない方が良いかもね」
「セーナは?」
「店番しながら魔道具を作るわ。帰りに食材を買って来てちょうだい」
「ゴーラでも狩れりゃ良いけどな」
「居たら良いわね」
魔道具を作るのは見たいけど、まずは借金を返さないとな。手持ちでスパッと返せるが、それでは皆が借金を返したとは言えないからね。皆で草摘みする事が決まり、装備に着替えて街を出た。
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