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増える、借金
しおりを挟む上の階をやっていた面々が1階に合流し、最後に残った店舗の掃除に取り掛かる。
「あれ?棚しかない」
「行く前に掃除したのよ。物盗りが来てもがっかりさせられるしね」
カウンターと椅子の他には、中身を全部抜いてあると言う引き出し棚が店舗の端に立っているだけで、掃除は簡単なモノだった。居間とキッチンの方がおばあちゃんのベッドを解体したり8人で食事出来るようにレイアウトを変える算段で時間が掛かった。おかげですっかり昼を過ぎ、ロシェルの腹が皆を急かす。
「昼食を終えたら買い物に行くからユカタを借りるわよ?」
「ちゃんと返してよね」「オレ達ゃ自由か?」
「大通りでも見て来たら良いわ。脇道には入らない事。迷っても助けに行けないし、その分ユカタとイチャイチャするから」
する気もないクセに煽りよる。ジュンの背嚢に納められている、最後の作り置きを食べ切って、女子達は自由行動。ロシェルはその場で寝た。絨毯も敷いてない板の間でだ。村の子だってそんな事しないぞ。エヴィナは僕等と一緒に外に出ようとして、主婦達に捕まり、井戸端に連れて行かれた。エヴィナは男兄弟の中で育ったから、女の人が好きなのかも知れない。3人衆とエリザベス様は外に出たが、ギルドに向かうと途中で別れた。街と周辺の地図を見に行くんだと。
「久しぶりに2人になったわね」
「イチャイチャする?」
「買い物が先ね」
どこから行くのかを問うと、掃除の時に1度行った木材商に向かうとの事。食卓用のテーブルと椅子を新調するのと、店舗の棚に縦置きと平置きの陳列棚を揃えたいと言う。
「あンた勘違いしてそうだけど、家って魔道具店。ポーションと装身具の店なのよ」
「お薬しか売れてなかったね」
「お薬しか置いてなかったからよ」
ポーションと装身具も置いてただろ。まあポーションもお薬だし、アクセサリーみたいなのはカウンターの前に小さなアクセサリースタンドが1つあるだけだったな。冒険者も稀に来てたけど売れなかったのは、店のオブジェだと思われていたに違いない。
「お、また来たな。今度は旦那を連れて来たか」
木材商のオッサンは店に入ったセーナと僕を見て、僕を旦那と思ったようだ。セーナはオッサンの言葉を無視して注文を始める。僕は黙って見てるしかない。
「低い椅子に、ソレに合わせた8人用のテーブル。と、陳列棚にアイランドだな」
壁に付けない棚はアイランド棚って言うんだな。ずっとテーブルだと思ってた。2人は作業場のテーブルの上で、端材を積みながら大きさや形を決めている。端材は子供のおもちゃにされたりするが、ここでは商売道具らしい。仮設でも形を見ながらの方が具体的なイメージが浮かびやすいのだろう。2人から出たイメージを紙に挙げ、デザインは決まったようだ。
「図案と見積もりは明日持って行く。それで良ければ作り出して、完成には少し時間をもらうぞ?」
「テーブルセットは早めに欲しいわね」
「そっちは板に脚付けるだけだから出来次第向かわせる」
椅子の方が数あるし工数も多いのだが、出来合いの型があるから脚を短くするだけで済むそうだ。
木材商を出て、次に来たのは寝具店。さっきも来た客に、遅かったわね、なんて言っている。また来る話をしてあったようだ。
「ふぅん、可愛い坊やじゃないの」
「私の方が可愛いわ」
「2人ともキレイだし可愛いよ」
「あらヤダ。この子良い子ね。たまには貸しなさいよ」
「他の子が許すなら良いわよ?」
「見掛けによらず、なのね」
店主の女性が、体が空いたら来なさいだって。暇になったら草摘みするだろうし、なかなか会いには行けなさそうだ。
寝具店ではクッションを人数分買った。後で箱詰めして持って来てくれるそうだ。
「だいぶ使ったよね。いっぱい稼がなきゃ…」
「明日にでも摘んでらっしゃいな」
今度はクモノスワタも採って来い、だって。
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