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臨機、応変

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 ムルザバ方面に駐留させている部隊に連絡を飛ばし、王都に向けての部隊を用意する。エリザベス様はやって見せると言ってのけるが実際にはかなり難しいだろう。駐留部隊を移動させ、王都方面の町村に配置換えするのは現実的ではない。

「気にしなくて良いのに」

 客間のソファーでお茶を1口。セーナは対面で静かに頭を捻り続けるエリザベス様に感想を漏らす。

「しますのが貴族なのですわ」

「そう言うのがお堅いのよ。冒険者になったのでしょ?1つに固執すると危険よ?」

「…そうかも知れませんね。ですが…」

 再び考えに浸り始めてしまったエリザベス様に、セーナは1つ息を吐き、1つの道を示す。

「ここからムルザバに行って、アッゼニに戻るまで何日を予定していたの?」

「え、22…23日を予定しておりましたわ」

「なら23日短縮出来た訳ね。なら、ここから王都までは何日掛ける予定?」

「6日となっております」

「乗り合いだと泊まり含めて19日掛かるのよ?早いわねー。乗り合い馬車の速さで移動しても4日も早く着くわ」

「ですが、護衛の替えが居りません」

「ムルザバ側に居る護衛が貴女の馬車と合流するのに、この19日では足りないかしら?ローウィラーにも留めているのでしょ?」

「それならば3日でアッゼニへ。なるほど、2隊で交互に走らせるのですね」

「走らせる必要も無いわ。私達はゆっくり行くのだもの」

 駐留部隊をアッゼニに戻す指示はしてしまっているので、部隊がアッゼニに戻り次第速歩で追えば2日後には1番近い部隊が合流出来るだろうとセーナは言う。

「それに、護衛の足しなら居るじゃない」

「オレだな?」

「あの、お言葉ですが」

 エリザベス様がエヴィナのネタ明かしをする。

「貴女、貴族だったのね」

「女性なのには驚かないんだ」「おいユカタこら」

「あンた男色の趣味無いじゃない。ソレに男はもっと臭いわよ」

「えっ!?僕臭い!?」

「もっと体を擦りなさい」

 僕は、臭いらしい…。ショックだ。

「ともかく、貴族なら護衛の数人囲ってるでしょ?貸してもらいなさいな」

「エヴィナ、いかがしますか?」

「護衛と言うか、家はメイドを兼務してっから、それでも良いなら使えっけど」

「馬車が1台増えるわね。エリザベス様はそれで良くって?」

私にわたくし異存はありませんわ。急ぎ文を出します。誰か」「はっ」

 部屋にいたメイドさんに文具セットを持って来させてサラサラと手紙を書くと、エヴィナのメイドの下宿に持って行かせた。後はそちらの準備にいか程掛かるかの問題になるが、今日はここに泊まる事となった。護衛部隊との合流が更に早まるな。

 遅い昼食を食べ、慌ただしかった時間が収まると、僕はもう外に出ない、と言うか出られないので装備を外す。

「良いの買ったじゃない。硬皮ね」

「実はこれ、金属の革張りなんだ」

「奮発したわね。ちゃんと見せなさいよ」

 外したヴァンブレスを持たせてやると、重みでセーナの腕が沈む。それでも結構軽く作られているんだ。

「良いお店で…、オーダーメイドねコレ」

「良いコネが出来たんだ」「女?」

「店主はオジサンだよ」

「お胸の大きい女性でしたわね」「やっぱり」

「仕事出来ればどっちだって良いじゃねーか。なあユカタさん」

「そうだね。整備もあるし、長い付き合いになるね」

「3番目の嫁にするんだろ?」「節操ないわね」

私はわたくし4番目ですの?」

「僕貴族になれないよ?」「豪商にはなれるわね、良かったじゃない」

 僕冒険者が良いんだけど。豪商になるとなると商会の婿にならなきゃいけないんだけど、尻馬に乗るのは嫌だなぁ。せめて自分の店を持ちたい。

「家で働いて店を大きくする?」

 薬師…じゃなくてポーションと魔道具の店か。それも良いね。

「僕まだ疲れてないけど良いの?」

 バリバリ働いて疲れなさい。だって。






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