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面倒から、逃げる

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「ユカタ君、これから暇?それともパーティーに戻る?」

「んー、どうしようかな」

 ギルドを出た所でカシーに問われるが、今から行っても何もせずトンボ返りしそうだし、正直外に出るのが面倒だ。そんな事を返しながら聞いた理由を尋ねると、2人は商業ギルドに顔を出すと言う。ペニーの親戚が商業ギルドで働いてるのだそうで、朝、僕が手紙を出すのを見て自分も出さなきゃいけないのを思い出したと言う。それで早上がりした訳か。もしかして売り先があるって言ってたのもソコか?護衛のついでに見てみるかって事で2人に同行した。

 商業ギルドは街の南門の近くにあり、大通りに面したデカい建物だ。お向かいにも大きい建物があり、そっちは薬事ギルドと治療院がくっついた物となっている。街歩きで何度か見てて、デカいなーとは思ってたけどここが商業ギルドだったのか。

「いらっしゃいませ。どなたかのお使いで?」

「親戚に会いに来たの。アーケードさんをお願い」

 中に入ると磨かれた床が上から注がれる魔法の明かりを反射して、施設内を明るく保っている。床にツバ吐いたりする奴もいないし、冒険者ギルドよりキレイだ。

 カウンターの外にいた女性は僕等が入ると寄って来て用向きを聞いて来る。お使いと思われたペニーは臆せずに要件を答える。しかし女性が動く前に親戚が現れた。

「あ、ペニー。ここよここここ。班長、その子去年話した私の姪です。少し席を離れますね」

「覚えてませんよ…」

 途切れぬ言葉遣いで班長?に意見を言わせぬまま、親戚の女性は個室のドアを開けて手招きする。呟き声を発して、班長は諦めた。

「あら、君もペニーのお友達?それとも良い人?卒業して身が落ち着くまでは我慢なさいね?もしかしてもうしちゃった?ダメよダメダメ~」

 何をして、何がダメなのか。とにかく一息で長い言葉を吐く人だ。

「叔母さん、私達まだ学生なんだから迂闊には出来ないわよ。こちらはユカタ君。一緒にレイドを組んだり依頼をする仲よ」

「僕ユカタ」

「ユカタ君ね。この子が一緒するって事は気があるのよね?それともカシーちゃんに気があるのかしら?2人でも良いけどその分しっかり稼ぎなさいね?所でちょ~っと歳上のお姉さんに興味は無い?今夜辺りどうかしら?」

「叔母さん!」

「叔母さんなんて聞こえが悪いわ。ユカタ君はお姉さんって呼んでね?そうそうお菓子食べる?お姉さんあ~んしてあげる」

「その前に、ペニーがお手紙出すんだって」

「あらそう。手紙は?持ってない?今から書く?なら紙を持って来てあげるわ。お茶とお菓子も持って来るから良い子で待ってなさいね」

 …慌ただしい人だった。アーケードさんが外に出ると途端に静かになった気がする。

「ごめんね。叔母さんお喋り好きなのよ。しかも一方通行で」

 アーケードさんは先の戦争で夫を亡くし、子供も無く独り身なのだそうだ。マッチョのどちらかに紹介してやるか…と思って止めた。アーケードさんにも好みがあるだろうしな。

 お茶とお菓子。そしてレターセットを持って来たアーケードさんはペニーを放ったらかしにして僕とカシーの傍で喋る。学園生活はどうかとか、依頼での出来事だとか、1つ答えると2倍3倍で返して来る。カシーが気配を消して離れて行ったの、見逃さなかったからな!?

「所で、ユカタ君」

「え?」

 急に短い言葉になって思わず聞き返してしまった。

「今夜、本当に空いてないかな?」

「寮に帰って飯風呂するくらいだけど、夜の外出はダメなんだ」

「叔母さん、私の仲間にいかがわしい事しないでよ」

「冒険者として依頼を頼みたかったのよ。私昼間は外出られないし朝はアソコ混むでしょ?夜なんて臭いし危ないしで行けたモンじゃないわ。夜に貴女達を呼ぶのも危ないし、男手が要るのよ。ね、お願いっ」

 仕方なく、明日外泊届けを出す事になった。






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