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魔物以外の、敵
しおりを挟む不意の戦闘で気合いが入った所で元々行こうと思ってた通路へ向かう。
「後方、よろし?」
「問題ありません。引き締めて参りましょう」
「よろしい。では、前へ」
指示役同士声を掛け合い通路の中へと入ってく。薄ら明るい洞窟内は、湿度が高く少し気温が低いと思う。
「止まれ。しくじった」
「説明は正しくなさい」
「足元に紐が張ってあるのを盾役が踏んじまった」
「足を離さないでっ!」「今行くから。レイナさんっ」
「気を付けて」
指示役に確認を取って、気になる2人が飛び出した。足を離すなって事は鳴子辺りを想定しているのだろう。
「僕達は背後を見ていようか」
「脇道も無いのにか?」
クリスは疑問を投げ掛けるが、ダンジョンに絶対は無いと習った以上気を付けて然りだ。レイナも賛同してくれて、マキとレイナは引き続き前を、ロシェルには全体を見る事になった。
通路の前方では、元デブのロナンが片足を前に出した状態で固まっていた。
「動かないで」「声も出さないで」
ペニーとカシーの言葉にビクビクしてしまうのを必死に堪えるロナンの右足に、左右から2人の足が伸びてロープをゆっくり踏み付ける。
「ミルコ君。彼を退がらせて」
「おう。だが、大丈夫か?」
「コレ、勢い良く離すと音が出るのよ。カシー、行くよ?」
「うん。魔物を呼び寄せるのだろうね、きっと」
ペニーは新調したナイフを抜くと、2人の足の間に張られたロープを切り離す。それを見て、カシーは足元のロープを掴んでゆっくりと持ち上げた。そしてペニーも同じ動作で持ち上げると、張らぬよう、弛ませぬよう慎重に、ロープの元があるであろう壁に向かって歩き出す。
「おい…」
「準備はしててね」
「…盾構え」「「おう」」
「コッチはハズレ」
「ならコッチが当たりね…。一応注意して」
カシーの持っていたロープは罠に繋がっていなかった。地面から突き出た小さな岩に縛られたロープを凝視して、結び目から離れた所でロープを切り離した。
「コッチは終わったわ」
「コッチも」
ペニーのロープはダンジョンの壁に空いた穴に入っていて、強い衝撃を受ける事で何かが起こる仕掛けが施されているようであった。ペニーはロープの付け根を捻り、グルグルと元のロープに巻き付けてコブにすると、余った分を切り離す。
「売れるかな?コレ」
「3mじゃ荷造りくらい、だよ」
「持ってくのかよ…」
「解いたら紐になるしね」
緊張の面持ちの男達に比べ、一仕事終えた2人は気楽なものだ。クルクルとロープをまとめると、自分達の持ち場に戻るのだった。
「戻ったわ」
「多分鳴子ね。戦った方が稼ぎになると思うけど、どこから来るか分からないから封じておいたわ」
「お疲れ様」「貴女達に解ける罠で良かったわ」
「は、はい。良かったです」
踏んだ時点で発動しないのだから、本来足を引っ掛けるくらいの衝撃でないと発動しない罠であると、2人は確信して動いたそうだ。それよりも、気になる事がある。
「僕達より先に行った人は掛からなかったのかな?」
「発動して敵と殺りあってよ、放ったらかしてったんじゃね?」
気になって口に出た言葉にエヴィナが予想を口にする。
「冒険者の稼ぎ口を減らしちゃったね」
「…コレ、しまっといて欲しいんだけど」「私も…」
怒られると思ったのだろう。2人はそそくさとロープをジュンのカバンに詰めてもらっていた。ダンジョンの罠ならまた復活するでしょ。
「お前は下を、エヴィナは上を見ろ。俺とソイツは前を見る」
「「「おう」」」
罠があると知って前衛達が慎重になる。進みは遅くなるが安全には替えられない。
「ユカタ」「左に3。右にも3。このまま行くと挟まれましてよ?」
ロシェルとエリザベス様が敵に気付く。突き当たり、左右の通路にいると言う。
「パーティー毎に対応しましょう。3匹ずつなら私達にもこなせるハズです」
レイナの言葉にエリザベス様は頷いた。
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