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いざ、地下へ
しおりを挟む「ユカタ、知った顔が居りますわ。あそこ」
エリザベス様が指差す先には立派な鎧にマントを纏った兵士が1人、学生用の受付前に立っていた。
「本当だ。隊長さんだね。覚えてるよ」
「私が潜ると知って、出張って来たのでしょう」
「小隊で?」
「まさか。数を連れて来る程過保護ではなくてよ」
「お嬢様、お久しゅうございます」
「ええ、ご機嫌よう」
ある程度近付いた所で駆け寄ると、深く頭を下げて挨拶を交わす隊長さん。お嬢様がここにいる理由を尋ねると、予想通りお嬢様の護衛に来たと言う。
「戦列には加えられませんが、危うい時は頼みます」
率先して殴りに行かれると僕等の経験にならないからね。代表2人が受付を済ませ、ダンジョンの地上階を列になって進む。他のレイドや冒険者もいるので、長い列の状態で地下入口に着いた。
「穴の中なのに明るいね」
「僕も初めて入ったけど魔素が濃いのが分かるよ」
ロシェルの言葉に返す。2人の兵士に守られた入口を潜ると薄暗い外より明るくて、時間感覚が失われそうで不安になる。そして明らかに濃い魔素を感じて体が熱くなった。
「隊列と息を整えましょう」
手を挙げて指示を出すマキは、レイナの補佐として動いている。先頭に元デブの2人。次にエリザベス様達が前衛を前側に、後ろを僕達が後衛を前側にして隊列を組む。隊長さんは真ん中でじっとしててもらう。
「あ、あの。エリザベス様の家の隊長さんとお聞きしましたが…」
「ええ。何か?」
「ご伴侶様はいらっしゃいますか?わた、私コラリーと申します。16歳で学館ロザリオを卒業。卒業から現在まで学園アッゼニで事務員をしております。歳は21歳です」
「はぁ」
「エリザベス様よう、あンたントコの隊長がナンパされてっぜ?」
「放って置きなさい」
隊長さん、孫も居るってさ。
「ユカタ君!娶ってくださいっ!」「はーなーれーろー」
一々僕に抱き着いて来るなよ。僕最後尾だぞ?年上好きなマッチョが羨ましそうな目でこちらを見ている。良いだろ。
「隊長さん…、嫁取りしたい部下がいたら、取り成してあげてください…」
「…はぁ。お嬢様」
「好きになさい」「はぁ」
兵士は家庭を持つのも大事だとかで独り者は下っ端くらいなのだそうだが、種族問わずなら見付けといてくれるって聞いて、コラリーさんのルンルン具合が半端ない。
「ユカタ様とエリザベス様には何とお礼申し上げれば良いか…」
まだ決まってないのだからお礼もクソもないと思う。
「光魔法の使い手なんて昼間は役立たずでしょ?治療院に入れる程の回復魔法も使えないし…」
愚痴なのか?
「冒険者になれば引く手数多じゃねーか。このパーティーだってヒーラーいねぇしな」
「え?あ。あぁぁ…」
クリスに言われてハッとしてた。約5年、何してたのかと唸りを上げるコラリーさんであった。だが結婚出来るかは別の話だ。
隊列を組んで通路を進む。入ってすぐの広場から通路に入ると、尖った岩や垂れ下がった岩が視界を阻む、洞窟型のダンジョンが続いている。
「私には罠を見破る術がありません。前衛は特にお気を付け遊ばせ?」
「「おう」」「おぼっ」「うっ」
盾役2人が返事になってない。まあいつもの事だ。
「分岐の右に3。よろし?」
「おう」「デブ共、出番だぜ」「「おうっ」」
エヴィナ相手なら平気なのか。けど洗って着飾ったらきっと吃るんだろうなぁ。元デブ達は盾を構えて分岐の入口に陣取ると、覗き込むエヴィナの合図を待つ。遠距離からの斉射はしないみたいなのを見ると敵はブフリム程度だろう。ハンドサインで合図を送ると手に持つ中剣を振りかざして元デブの盾へ振り下ろす。
ガチンと打ち鳴らされた音に敵が気付き寄って来た所を盾役が突進して転がし、前衛が刺して戦闘を終えた。やはりブフリムだった。
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