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目と、鼻
しおりを挟むレイドでの活動は今日が初日。なので今日は魔物の少ない外周歩きとなった。運次第で出るには出るが、出ちゃったのなら仕方が無い。街の北西側は色々と面倒なので、西門を出て南経由で東門に入るルートを取る事となった。
「腹の足しになる物を拾ってくから指示には従ってね」
「あ、ああ」「おう」
「足元には特に気を付けて」「薬草、踏まないように」
「おっおぼっ」「あうっわ」
相当だなこりゃ。元デブの2人の後ろに僕と気になる2人の3人で5人組となり、その後ろにはエリザベス様達とレイナ達が並んで歩き、周囲の警戒に当たる。
「あ、あっちに、木の実の匂いが、する」
「ああ。ウロの実だな」
よく分かるな。気になる2人も気付かなかったみたい。後ろの3人で顔を見合う。採集するのは僕達の仕事。あると言うなら摘んでおこう。
「ロシェール。あっちにウロの実が成ってるってさー」
「あーい。摘んで来るー」
木の上にいるロシェルに声を掛けるとヒョイヒョイと人ならざる動きで枝を飛び、地面に降りるとガサガサやって、あったーと答えた。
「ウロが生えてるなら開けてる場所なのか」
「そうよね。煮詰めると美味しいの」
「パ、パンに」「たっ、ぷり」
「ポーションの原料なんだけどね。ロシェルなら大丈夫だからゆっくり進もう」
年寄りの散歩くらいの速さで歩みを進めているとロシェルが目の前に落ちて来た。固まってあばあば言ってるが、敵が出た時大丈夫なのだろうか。
「ほらデブ、ご褒美。口開けれ」
「あ、あがっ」「はぶっ」
元デブだぞ。ロシェルは2人の口にウロの実を投げ込んで後続のパーティーに戻って行く。どれだけ採れたか分からんが、ジュンのカバンに押し込むつもりだろう。
「「んまぁ~」」
美味かったか。そうかそうか。2人は食に貪欲で、果物や木の実の他にも良い匂いの野草や薬草にも鼻が利く事が分かった。
「街の生まれでしょ?意外な才能ね」
「お、おぼ、俺」「く、すび、だば」
俺、だけしか分からん。聞き直すと、2人とも食品関係の家の子で、食べるのが好き過ぎて家を追い出されたのだと。入学費用より食う金の方が掛かるそうだ。
「こう言うのは、ダメっぽいね」
カシーが摘んだのは匂いが薄いタイプの薬草だ。元デブに踏まれたけど使うのは球根。葉を切り落とせば大丈夫だ。
「スープにするよねソレ。コッチにも生えてるんだ?」
「種に綿毛が付いてて飛ぶの。年2回は咲くから、どこでも増えるわ」
「キズ、ケシ」「だな」
キズケシ、キズケシソウ、キズカクシ等、色んな名前で呼ばれるこの薬草はどこにでも生えている。なんなら街の中にも生えている。街中に生える奴に薬効はないが、スープの具になるので庭先に植えている人も多い。
「ユカタ、前に1つ。よろし?」
「了解。敵が来た。数は1。構え」
「「おう」」
総指揮役からの声が風に乗って運ばれる。数は1だし、ここに出るのはブフリムくらいなので後ろのパーティーは僕達に任せるつもりだろう。元デブの2人は盾を横に構えて壁を作り、ジリジリと寄って行く。敵が女性じゃないとちゃんと出来るのな。僕は右側から抜けられるように抜剣して移動。気になる2人は戦いには不慣れだが、ナイフを抜いて左側を警戒する。
「グヒッ」
「うおおおおお」
「ギャヒッ」
「殺ったよー」
声を上げて寄せた所を後ろからロシェルが首をはねる。盾役の仕事は完遂した…って、僕達に任せたのでは無いのか?まあロシェルは遊撃だし、彼女の仕事でもあるか。
「お疲れ。埋める?」
「ジューン、やっといてー」「はぁーい」
ジュンの土魔法で空けられた穴に、袋の中身を奪われたブフリムを放り込む。耳は買い取ってもらえないから切らずに埋めた。
「オレもやりてー」
エヴィナが愚痴る。後続まで戦うような事は街の壁際では起こらんよ。今日はあくまで様子見なので我慢してもらった。
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