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会話のある、食事

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 明日の予定も決まってその場は解散、男衆は寮へと帰る。話し込んですっかり暗くなってしまっていたが、食堂を占拠する男共は数えられる程度にしかいなかった。それだけの数が潜り続けているのだろう。

「今更だがよ、俺も野営したかったぜ。な?兄弟」

「え?他のパーティーと連携出来てたら野営しても良かったかもね」

 クリスは食堂を見渡して口を開いた。確かに
これだけ減っていれば女子も含めて相当数ダンジョンに残っているに違いない。全員が固まって警戒すれば脅威を回避出来たのではなかろうか。

「気持ちは分かるぜ兄弟共。だがな」

 息を吸い、食事の乗ったトレーをテーブルに置いたミルコは声高に宣った。

「俺達のパーティーには女が居るからなっ」

「そうだな兄貴っ」

 マッチョ兄の発言に、その場にいた男達のほとんどが感嘆の声を吐き、弟マッチョも続く。そしてマッチョ兄は時折嘘を織り交ぜて、今日の出来事を冒険譚風に語り出す。意訳すると、

女の子達と一緒に冒険出来て楽しかったです。

 となる。勘違いは身を滅ぼすぞ?一緒になって盛り上げていた弟マッチョも嘘に気付いて途中で身を引いた。

「所で兄弟。お前明日は防具を見に行くんだよな?店の当てはあんのかよ」

「ジュンの伝手で職人さんと懇意に出来てね。そこで話をしてみるつもりだよ」

 レイナの手持ち投石器を依頼している工房だ。3人衆が先に予定を決めちゃったので誘えなかったが、彼女が借りているクロスボウは、ボルトが実戦レベルでは使い物にならなくなったので今日の探索には持って行かなかった。僕の防具はそのついでで、本題は依頼品の進捗を聞こうと思っているんだ。

 席に余裕のある食事は心にも余裕を生じさせ、会話をし、ゆっくり食事を楽しめる。しかもお代わりも自由と来た。ちょっと騒がしい、和気あいあいとしたその時間に入って来た男達の姿は、食堂にいた男達を素に戻すだけの異形であった。

「タイグ、どうした?」

「ユカタは平気そうだな。コッチは見ての通り、グサッとな」

 石版で浄化され、キレイになった制服は所々に穴が開き、腹は斬られた跡がある。体の傷は治っても、心と衣服の傷は癒えてないみたいでタイグを含めた4人全員、似たり寄ったりの傷跡が見えた。

「1クラスだな?誰にやられた」

 嘘混じり冒険譚から一段落とした声が掛けられると、被害者達は冒険者からだと証言した。ダンジョンに入って早々に、人と魔物の見分けも付かなくなった気狂いに物盗りされたと言う。飛び出した内臓を掻き集めている所までは覚えていると暗い顔でタイグは言うが、誰かが助けてくれたのだろう。そうでなければ今ここには居られない。彼等は水と、具のないスープで今夜の食事を済ませるようだ。治したばかりの内臓に、固形物は良くないんだって。

「今潜ってる雑魚共も心配だな。どんな奴だったんだ?」

 最初は武器を持った魔物かと思った。とスプーンを震わせ元クラスメイトが言葉を吐く。だが攻撃を受けて認識が変わった。獣の皮を被った人型だったとタイグは続ける。

「臭かった?」

「…あ、ああ。糞の臭いだった。知り合いか?」

 精一杯の冗談に、どうやって笑わせてやろうかと考えたが、僕には無理だな。正直に予想を答える。

「地走り、か…。親父に聞いた事、あるぜ」

「エリザベス様を襲った奴等か。まだ捕まってねぇんならギルドなり衛兵なりに知らせねぇと」

 医務室での受け答えで襲われた件は話したそうだが、地走りの事は言ってないので対応は遅れるだろう。明日もう一度話しに行くと彼等は言った。寝てろと言いたかったが相当悔しかったらしいな。僕もエリザベス様に伝えておいた方が良いかも知れない。

 食後、無一文になったタイグ達に皆から選別が贈られた。お古のナイフに小銭。大した物ではないが皆喜んでくれた。僕は干し肉をあげた。今夜腹減るだろうしな。






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