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受付嬢も、色々

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 敢えて目を向けなかった場所をおすすめされて、仕方なくそちらに向かう僕に、その人は笑顔をくれる。見透かすような笑顔だ。

「うふ、貴方、可愛い顔してなかなか図太いじゃない。私はずっと、貴方を見てたのに」

「列が長くて遠慮したんだよ。もう並び直すの嫌だから、説明お願いね」

「はぁい」

 さっき並んだ列の8倍くらい長い列に並び直してようやく順番が来た。並んでる間にも後ろに列が出来ていて、説明と言う言葉に舌打ちが聞こえる。だから短い列に並んだのに。

「後ろは気にしないで。私の事だけ見てなさい」

 そう言われても視線が痛い。受付嬢の説明はランクやルールについての簡単な事だった。気を使って色々端折ってくれたのが分かる。

「学園生用の依頼はコレとコレ。採集と清掃だけど、貴方はどっちを選ぶのかしら?」

「清掃は時間が遅いし、採集かな」

「そう。気を付けて帰りなさい?貴方達、この子を虐めたら口聞かないから。分かったわね?」

 ザワザワしてたのが静まった。何だこの圧力は。とにかく仕事に出なければ。カウンターに置かれたリストを受け取り、お礼を言って列を離れた。混み合う時間を避けてるハズなのに、何で混む場所に入らねばならないのか。それより何であの人の所だけあんなに混んでいたのか。考えても答えは出ぬまま外へ出た。

 リストにある採集品を探して街道を行き、畑の切れ目の草薮に来た。遠くに学生の姿もあり、学生用の依頼は皆同じなのだと理解する。

 町に近ければ近い程、取り尽くされて数が少ない。そう思ってる奴はまだ素人だ。村の婆ちゃんなんて畑のついでに薬草摘んで来るからな。畑の脇から四つん這いになって草薮へ漕ぎ出すと、少しして当たりを引いた。持ち帰れる品質の薬草が生えているじゃないか。丁寧に摘み取ってカバンに納めて行く。この依頼のノルマは買い取れる品質の物を採れるだけ。なのでどんどん場所を変え、森の入口まで這って来た。この依頼は金も出ないし、コレで帰っても問題ないだろう。予洗いは出来ないけど、見栄えだけは良くしておくか。昼飯食べながらちょちょっと加工して戻った。

「買って来たの?」

「採って来たよ?」

 朝方の長い列がいなくなり、本格的に暇な時間になったギルドで依頼の報告をするが、圧力のある受付嬢は僕が採って来たのを信じてないみたい。

「僕村の子だからね。こんなの子供の仕事だよ」

 薬草の束を縄にした細い草でまとめるだけの簡単なお仕事だ。慣れれば小さい子供にだって出来る。市場等ではこの状態で売られているので受付嬢も売り物だと思ったに違いない。草の汁が付着したナイフを見せたら信じてくれたよ。

「それにしても早いのね。ゆっくりたっぷり採って来れば、依頼外の分買い取り出来るのに」

「夕方は混むからね。学園からの依頼ってこの1回だけで終わりにして良いの?」

 2種の依頼それぞれ1日1回限りで、やればやる程学園からの心証が良くなるそうだ。ギルドからは?と聞いたがニコリとされるだけだった。タダ働きだし、悪くはならないだろうな。

 学園に戻ったのはそろそろ夕方になろうかと言う時間。迷った挙句他の生徒の後をつけて、ようやく帰って来られたのだ。

「ユカタ君?外に出ていたのですか?」

 声のした方へ顔を向けると斜面の下。鍛錬場にて剣を振っていたのだろうマキが細剣を模した棒を持って立っていた。

「ギルドの依頼がどんなのか知りたくてね。ちょちょっと行って来たんだ。マキは鍛錬?」

「ええ、今上がる所でした」

 斜面を上がって来たマキは少し息が上がっていて、おでこに髪が張り付いている。集中していたのだろうな。マキは昨日の遠征では何一つ役に立てなかったと漏らす。けどそれは仕方の無い事だし、護衛対象を背にして死ぬのが仕事なのだから、断りもなく離れちゃいけないと告げる。

「それでは守れて無いじゃないですか」

 マキは苦笑いで返した。




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