114 / 147
出番は、まだか!?
しおりを挟む「わっ、私も、防御魔法使えますっ」
「その時はお願いいたします。馭者席に3人は狭いですからね」
憤っているのは彼女達だけでは無い。ジュンは水の壁同様に使い勝手の悪い土の壁が使えると言うが、メイドさんに止められた。今は出番じゃないと言う。僕だってそうだ。何かしたい。
「エリザベス様、辺りに敵の姿は無いの?」
「確認するわ。ユカタ、気を付けて覗き窓をお開けなさい」
「分かった。馭者さん、少し開けるよ」「どうぞ」
外に対し声掛けして確認を取ると慎重に覗き窓を開ける。エリザベス様は集中してるみたいでじっと動かなくなり、少し時間が経つ。
「窓を閉めて良いわ。周囲30mに人も魔物も居りませんわね。ユカタ、外に出るおつもり?」
エリザベス様の索敵は魔法ではなくスキルのようだ。
「今の馬の足なら先行して罠を壊して行けるかもって思ったんだ」
「ユカタ君、ご自身が撃たれてしまいます。お控えください」
今度はマキに止められた。悔しいがマキの言い分も分かる。罠が馬用だけじゃない場合、馬車を止めてでも僕を回収しなくてはならなくなるからだ。もどかしい…。一方、さっきから静かにしているロシェルはと言うと、何とも言えない表情で座ってる。目を開けて寝てるのかと思う程、半目で力の抜けた顔をしていた。
「ロシェル、寝てるの?」
「起きてる。その内出番あるかもだし」
ロシェルは肝が据わってるな。彼女の出番となれば僕も出る事になる。出ない事に越した事はないが、敵が出るまで待つしかない。手持ち無沙汰な僕はエリザベス様が索敵するため、定期的に覗き窓を開け閉めする事になった。
「ヒヒーッ」
馬の嘶きと共に馬車が減速するのが体に掛る圧で分かる。まさかまた馬が撃たれたのか?
「お嬢様、来ますっ」
覗き窓が開かれて、声を上げるのは馭者さんだ。窓際にいた僕はすぐに外に目をやると、見える範囲に柵を見付けた。畑を囲うようなヤツじゃ無い。丸太を組んで綱で縛った戦争用だ。街道横にも同様に組まれた丸太が見える。敵は足止めする気だ。
「マキ嬢、出番ですわね。外の指示に従うが良いわ」
「は、はいっ。ユカタ君」
「うん。馭者さん、詳細よろしく」
「皆様、停車します。まずは魔法で数を減らしましょう。敵の数が多いのでご注意を」
「敵は近場に24。離れて8。飛び道具に注意を」
馭者さんは風の壁の詠唱をしていたのでメイドさんが詳細を述べる。そしてメイドさんに続いてエリザベス様が索敵の結果を教えてくれた。数の多さに汗が出る。
「レイナ、馬車の周りの草を焼いてしまおう」
「敵を見やすくするのね?」
「風の壁を消してもらって、レイナの火魔法が着弾次第ジュンの魔法で壁を建ててもらう。どうかな」
一度の魔法で出せる壁は2枚が精一杯だと言うジュンだが、一度に2枚出せるのは凄いと思うぞ?メイドさんの水魔法と協力して事に当たるようで外へ出る。僕とロシェル、レイナも続く。
外の様子を見て、戦況の不利を悟る。
「レイナ、まずは側面を」
「やらなきゃ、ダメよね」
震える声に、返って来るのは震え声。しかし続く者は堂々と自信に満ちる声であった。
「援護します。詠唱合わせますわよ」
エリザベス様が降りて来て、僕達の影に隠れながら援護すると言う。エリザベス様はレイナの両脇から腕を伸ばし、レイナはその手を取って方向を定めた。敵にバレたら狙われるので、僕はレイナの前に立って抜剣する。敵はまだ姿を見せないが、確実に24人居る。背の高い草薮の奥で隙を伺っているに違いないのだ。
「お嬢様、壁が解けます。ご用意くださいませっ。ジュン様もお続きくださいっ」
詠唱が終わり、発動まで集中してるため返事が出来ないレイナが僕に目配せをする。代わりに僕が手を挙げて返す。ジュンも詠唱を始めた。
20
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
虐げられた落ちこぼれ令嬢は、若き天才王子様に溺愛される~才能ある姉と比べられ無能扱いされていた私ですが、前世の記憶を思い出して覚醒しました~
日之影ソラ
恋愛
異能の強さで人間としての価値が決まる世界。国内でも有数の貴族に生まれた双子は、姉は才能あふれる天才で、妹は無能力者の役立たずだった。幼いころから比べられ、虐げられてきた妹リアリスは、いつしか何にも期待しないようになった。
十五歳の誕生日に突然強大な力に目覚めたリアリスだったが、前世の記憶とこれまでの経験を経て、力を隠して平穏に生きることにする。
さらに時がたち、十七歳になったリアリスは、変わらず両親や姉からは罵倒され惨めな扱いを受けていた。それでも平穏に暮らせるならと、気にしないでいた彼女だったが、とあるパーティーで運命の出会いを果たす。
異能の大天才、第六王子に力がばれてしまったリアリス。彼女の人生はどうなってしまうのか。
自称悪役令息と私の事件簿〜小説の世界とかどうでもいいから、巻き添えで投獄とか勘弁して!〜
茅@ダイアナマイト〜②好評配信中
恋愛
「原作にない行動……さては貴様も“転生者”だな!」
「違います」
「じゃあ“死に戻り”か!」
ワケあって双子の弟のふりをして、騎士科に入学したミシェル。
男装した女の子。
全寮制の男子校。
ルームメイトは見目麗しいが評判最悪の公爵子息。
なにも起こらないはずがなく……?
「俺の前世はラノベ作家で、この世界は生前書いた小説なんだ。いいか、間もなくこの学院で事件が起こる。俺達でそれを防ぐんだ。ちなみに犯人は俺だ」
「はあ!?」
自称・前世の記憶持ちのルーカスに振り回されたり、助けられたりなミシェルの学院生活。
そして無情にも起きてしまう殺人事件。
「未然に防ごうとあれこれ動いたことが仇になったな。まさか容疑者になってしまうとは。これが“強制力”というものか。ああ、強制力というのは――」
「ちょっと黙ってくれませんか」
甘酸っぱさゼロのボーイ・ミーツ・ガールここに開幕!
※小説家になろう、カクヨムに投稿した作品の加筆修正版です。
小説家になろう推理日間1位、週間2位、月間3位、四半期3位
傍若無人な姉の代わりに働かされていた妹、辺境領地に左遷されたと思ったら待っていたのは王子様でした!? ~無自覚天才錬金術師の辺境街づくり~
日之影ソラ
恋愛
【新作連載スタート!!】
https://ncode.syosetu.com/n1741iq/
https://www.alphapolis.co.jp/novel/516811515/430858199
【小説家になろうで先行公開中】
https://ncode.syosetu.com/n0091ip/
働かずパーティーに参加したり、男と遊んでばかりいる姉の代わりに宮廷で錬金術師として働き続けていた妹のルミナ。両親も、姉も、婚約者すら頼れない。一人で孤独に耐えながら、日夜働いていた彼女に対して、婚約者から突然の婚約破棄と、辺境への転属を告げられる。
地位も婚約者も失ってさぞ悲しむと期待した彼らが見たのは、あっさりと受け入れて荷造りを始めるルミナの姿で……?
欲情しないと仰いましたので白い結婚でお願いします
ユユ
恋愛
他国の王太子の第三妃として望まれたはずが、
王太子からは拒絶されてしまった。
欲情しない?
ならば白い結婚で。
同伴公務も拒否します。
だけど王太子が何故か付き纏い出す。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
婚活と経済~婚活アプリで年収400万以上の男性は狙っちゃダメ!?相談所の男性の年収のボーダーラインは350万!?~
天野桃子
経済・企業
元仲人が婚活をお金の面からガチで語ってみる。ある仲人は「婚活アプリで年収400万以上の男は狙うな。詐称が多い」と言う。また、ある結婚相談所の経営者は「相談所は男性の年収350万がボーダー。収入が低いと女性に相手にされない」と言う。なんとも金にシビアすぎる婚活の世界!!婚活をお金で見ていくエッセー集。現実的すぎて毒舌要注意ですm(__)m
冷徹女王の中身はモノグサ少女でした ~魔女に呪われ国を奪われた私ですが、復讐とか面倒なのでのんびりセカンドライフを目指します~
日之影ソラ
ファンタジー
タイトル統一しました!
小説家になろうにて先行公開中
https://ncode.syosetu.com/n5925iz/
残虐非道の鬼女王。若くして女王になったアリエルは、自国を導き反映させるため、あらゆる手段を尽くした。時に非道とも言える手段を使ったことから、一部の人間からは情の通じない王として恐れられている。しかし彼女のおかげで王国は繁栄し、王国の人々に支持されていた。
だが、そんな彼女の内心は、女王になんてなりたくなかったと嘆いている。前世では一般人だった彼女は、ぐーたらと自由に生きることが夢だった。そんな夢は叶わず、人々に求められるまま女王として振る舞う。
そんなある日、目が覚めると彼女は少女になっていた。
実の姉が魔女と結託し、アリエルを陥れようとしたのだ。女王の地位を奪われたアリエルは復讐を決意……なーんてするわけもなく!
ちょうどいい機会だし、このままセカンドライフを送ろう!
彼女はむしろ喜んだ。
救国の大聖女は生まれ変わって【薬剤師】になりました ~聖女の力には限界があるけど、万能薬ならもっとたくさんの人を救えますよね?~
日之影ソラ
恋愛
千年前、大聖女として多くの人々を救った一人の女性がいた。国を蝕む病と一人で戦った彼女は、僅かニ十歳でその生涯を終えてしまう。その原因は、聖女の力を使い過ぎたこと。聖女の力には、使うことで自身の命を削るというリスクがあった。それを知ってからも、彼女は聖女としての使命を果たすべく、人々のために祈り続けた。そして、命が終わる瞬間、彼女は後悔した。もっと多くの人を救えたはずなのに……と。
そんな彼女は、ユリアとして千年後の世界で新たな生を受ける。今度こそ、より多くの人を救いたい。その一心で、彼女は薬剤師になった。万能薬を作ることで、かつて救えなかった人たちの笑顔を守ろうとした。
優しい王子に、元気で真面目な後輩。宮廷での環境にも恵まれ、一歩ずつ万能薬という目標に進んでいく。
しかし、新たな聖女が誕生してしまったことで、彼女の人生は大きく変化する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる