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出番は、まだか!?

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「わっ、私も、防御魔法使えますっ」

「その時はお願いいたします。馭者席に3人は狭いですからね」

 憤っているのは彼女達だけでは無い。ジュンは水の壁同様に使い勝手の悪い土の壁が使えると言うが、メイドさんに止められた。今は出番じゃないと言う。僕だってそうだ。何かしたい。

「エリザベス様、辺りに敵の姿は無いの?」

「確認するわ。ユカタ、気を付けて覗き窓をお開けなさい」

「分かった。馭者さん、少し開けるよ」「どうぞ」

 外に対し声掛けして確認を取ると慎重に覗き窓を開ける。エリザベス様は集中してるみたいでじっと動かなくなり、少し時間が経つ。

「窓を閉めて良いわ。周囲30mに人も魔物も居りませんわね。ユカタ、外に出るおつもり?」

 エリザベス様の索敵は魔法ではなくスキルのようだ。

「今の馬の足なら先行して罠を壊して行けるかもって思ったんだ」

「ユカタ君、ご自身が撃たれてしまいます。お控えください」

 今度はマキに止められた。悔しいがマキの言い分も分かる。罠が馬用だけじゃない場合、馬車を止めてでも僕を回収しなくてはならなくなるからだ。もどかしい…。一方、さっきから静かにしているロシェルはと言うと、何とも言えない表情で座ってる。目を開けて寝てるのかと思う程、半目で力の抜けた顔をしていた。

「ロシェル、寝てるの?」

「起きてる。その内出番あるかもだし」

 ロシェルは肝が据わってるな。彼女の出番となれば僕も出る事になる。出ない事に越した事はないが、敵が出るまで待つしかない。手持ち無沙汰な僕はエリザベス様が索敵するため、定期的に覗き窓を開け閉めする事になった。

「ヒヒーッ」

 馬の嘶きと共に馬車が減速するのが体に掛る圧で分かる。まさかまた馬が撃たれたのか?

「お嬢様、来ますっ」

 覗き窓が開かれて、声を上げるのは馭者さんだ。窓際にいた僕はすぐに外に目をやると、見える範囲に柵を見付けた。畑を囲うようなヤツじゃ無い。丸太を組んで綱で縛った戦争用だ。街道横にも同様に組まれた丸太が見える。敵は足止めする気だ。

「マキ嬢、出番ですわね。外の指示に従うが良いわ」

「は、はいっ。ユカタ君」

「うん。馭者さん、詳細よろしく」

「皆様、停車します。まずは魔法で数を減らしましょう。敵の数が多いのでご注意を」

「敵は近場に24。離れて8。飛び道具に注意を」

 馭者さんは風の壁の詠唱をしていたのでメイドさんが詳細を述べる。そしてメイドさんに続いてエリザベス様が索敵の結果を教えてくれた。数の多さに汗が出る。

「レイナ、馬車の周りの草を焼いてしまおう」

「敵を見やすくするのね?」

「風の壁を消してもらって、レイナの火魔法が着弾次第ジュンの魔法で壁を建ててもらう。どうかな」

 一度の魔法で出せる壁は2枚が精一杯だと言うジュンだが、一度に2枚出せるのは凄いと思うぞ?メイドさんの水魔法と協力して事に当たるようで外へ出る。僕とロシェル、レイナも続く。

 外の様子を見て、戦況の不利を悟る。

「レイナ、まずは側面を」

「やらなきゃ、ダメよね」

 震える声に、返って来るのは震え声。しかし続く者は堂々と自信に満ちる声であった。

「援護します。詠唱合わせますわよ」

 エリザベス様が降りて来て、僕達の影に隠れながら援護すると言う。エリザベス様はレイナの両脇から腕を伸ばし、レイナはその手を取って方向を定めた。敵にバレたら狙われるので、僕はレイナの前に立って抜剣する。敵はまだ姿を見せないが、確実に24人居る。背の高い草薮の奥で隙を伺っているに違いないのだ。

「お嬢様、壁が解けます。ご用意くださいませっ。ジュン様もお続きくださいっ」

 詠唱が終わり、発動まで集中してるため返事が出来ないレイナが僕に目配せをする。代わりに僕が手を挙げて返す。ジュンも詠唱を始めた。






 

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