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好きも、色々

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「おそ~い」

 買い物を終えて宿に戻ると、ロシェルは愚痴をこぼす。

「良い子にしてたか?ちゃんとお土産買って来てやったんだからな」

「ユカタァ~…ァ?何で良いトコのボンボンみたいになってんの?」

「良いトコでもらったんだ。ほれ串焼きだぞー」

「わ~い」

「夕飯あるから食べ尽くさないでジュンに預けなよ?」

「あ~い」

 食ってるロシェルは大人しいのでゆっくり横になれる。レイナ達もベッドに掛けたり横になったりして夕飯の時間までゆっくり過ごすようだ。

「ねえ、ユカタ君…」

「どうした?」

「男の人って、男の人を好きになったり、するのかな…?」

 本当にどうした急に。ジュンは紙に何かを書きながらそんな質問をして来た。横になった姿勢のまま頭を捻り、なんとか答えを導き出す。

「無いとは言えないよね。女の子だってそうでしょ?好きと言っても色々だろうしさ」

 格好良かったり憧れたり、好感を持てる同性は居ると思う。それは普通の事ではないかと続けると、ふむふむ言いながら何かを書き連ねていた。

「んぐ…。女の場合さ、負けを認めた相手なんだよね、そう言うのって。はぐっ」

 ちゃんと飲み込んでから喋るロシェルは良い子だが、それだとほとんど嫌いか無関心になっちゃうぞ?

「弱いけど何度も戦い挑む子は嫌いなのか?」

「他のにしたら?ってなるよ。頭の良さとか手先の器用さとか。他の事でアタシを負かせるなら認めるよね」

「それは好きって感情で良いのか?」

「嫌いじゃなくなってるよね」

 女心は難しいモノだな。

「ユカタはアタシの事好き?」

 ロシェルの一言で3人衆の動きが止まる。レイナは横になっててそもそも動いていないが、座って作業してる2人は固まったように動きを止めた。

「認める所がいっぱいあるし、嫌いじゃないと思うよ?」

「例えば?」

「背が高い。その内追い越してやるからな」

「伸びるな~。追い越すな~。もっと他にあるでしょー!?」

 呪言を言って来る奴は無視してやる。

「あのあのっ、私は?」

「ジュンは…魔法凄いな。コレは多分勝てない」

「好きって事、だよね?ね?」

「なら、私も同じかしらね」

「レイナの魔法も強力だよね。魔法剣士に憧れてたけど、流石に僕には無理そうだよ」

「その理論ですと、ユカタ君は私の事等何とも思っていない事になりますか?」

「まさか。町の中の事に関して僕はマキには敵わないよ」

「私も町の外に関してはユカタ君に敵いません。私達は支え合える仲になれそうですね」

「私、捨てられてしまうのかしら」

「2人でレイナ様を引き立てましょう」

「2人引き立てなさいよ」

「それなら私も、支えられますっ」

「あっ赤ちゃんごっこさせたげるっ!」

 休むつもりが姦しくなってしまった。色恋なんて卒業してからでも出来るだろうに、女の子は焦り過ぎだと思って目を閉じた。

 翌日。朝食を摂って宿を引き払うと、玄関前に見知った馬車が着けられていた。

「皆様おはようございます」

見知ったメイドさんに手を引かれて馬車に乗り込むと、壁にもたれて必死に起きようとしているエリザベス様の姿があった。

「おはようエリザベス様。疲れてそうに見えるけど、どうしたの?」

「ご機嫌よう。説明する気力が無いわ。少しだけ、休ませてちょうだい」

 後部座席だけベッドにして横たえるエリザベス様は、それだけ言うと頭からシーツを被ってしまった。メイドさんは少し夜更かしをしたと言うが、少しには全然見えないな。僕達も一緒に休むからと、一面ベッドの形にしてもらった。

「行程は行きと同じく3日の予定、昼夜を問わずの移動となります。それではお休みなさいませ」

 窓を閉めて、魔道具の灯りが弱くされた車内は薄暗く、さっきまで朝だったのを体が忘れてしまったかのようにみんな寝に入った。僕の場所は行きと同じく馭者側の端だが、メイドさん達がエリザベス様の所にいるので誰かに抱き着かれた。多分、ロシェルだ。柔らかい…。







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