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命の、天秤
しおりを挟む敵の数は20人を優に超えた男達。男だけなのだから僕の寝込みでも襲った方が効率的だと思うのだが、気が弱いのか、三階に上がるのが怖いのか。どちらにしても手数が多い時に来てくれたのはありがたい。自分と女子達に覚悟を聞くと、ロシェル以外の女子達は何とか覚悟を決めてくれたようで、弱々しくも返事があった。
「ロシェル、マキに1本貸してやって。ジュンは広範囲を、レイナは火事にする程度に燃やして。マキは2人を守って」
「アタシは?」
「殺せ。後、射線に入らないようにね」
敵は石やナイフで武装して僕達を囲んで逃げにくくしている。僕達を殺そうとしているのなら、抵抗しても大丈夫だ。ナイフを構えて敵に寄る。
「ちっ、コイツ抵抗するのかっ!」「みんなっやるぞっ」
覚悟の無さそうな声を上げた敵は僕が寄り切らない位置から石を投げ始めた。貴重なナイフを投げる馬鹿もいる。皮装備に当たる分にはちっとも痛くないので、露出している顔や腕、脚を守りながら寄って行った。
「ユカタ君!」「ブロッヒ・アポ・ペトレス!」
マキの声に続きジュンの魔法が発動する。知らない魔法はどこから来るか分からない。僕はその場でしゃがんで後頭部を両腕で守る。
「ギャッ!」「何だ!?」「投石の魔法だと!?」
視界にいる敵共に、大量の石が落ちている。尖った石が、雨のように降っているみたいだ。僕にも数発当たってるので、すぐに3人衆の元へ後退した。
「ユカタ君、お怪我は?」
「石が飛んで来ただけだよ」
「何よりです。次、レイナ様が撃ちます」
「死にたいならば当たりなさい!ヴォリーデスッ!」
レイナの掲げた両手から、4つの火球が発生し、四方に向けて放たれる。1つ1つの火球は以前見た火球サイズでそこそこ大きく、熱と共に派手さのある魔法だ。視界にある2つの火球の内、1つは木を直撃して爆炎を上げた。もう1つは逃げ遅れた男に当たって爆発する。見えてなかった2つも爆発し、死者と怪我人を数人出したように見える。
熱と爆音に加え実際の被害を受けた敵共に既に戦意は無く、立ち尽くしたり尻もちを着いて現実から遠ざかろうとしていた。
「ジュン、2発目撃てる?レイナは?」
「私は今ので4発分よ」
「マキちゃん、行くよ。土の精霊よ、我が声を聞け、飛礫よ集いて雨と化し、遍く敵に降り注げ。ブロッヒ・アポ・ペトレス!」
「皆さん、注意を」「ひゃー。アレ危ないってー」
ロシェルが跳んで戻り、2度目の石が降って来た。術者の周囲に無差別に降り注ぐ石の雨は、現実から逃げていた馬鹿共に、痛みと言う名の現実を与えて行く。ちなみにロシェルは1度目の魔法を躱し切ったらしい。
「ロシェル、今度こそ行くぞ」
「アソコのナイフ、拾って行きなよ」
石の雨が止み、僕は投げ捨てられていたナイフを拾って呻く敵に走り寄る。
「何をしている!?」「止めなさいっ!試験中ですよ!?」
爆音に炎まで上がって見て見ぬ振りの出来る講師は居ないか。駆け付けた3人の講師が注意する中、僕は1人、ロシェルは多分3人は殺してただろう。レイナが講師達を足止めしてる隙に、木の影で震えてた男の首を斬り、皆の元へ合流した。
「ユカタ君!止めてって言ったのにっ何で!?」
女性講師が泣きそうな声を上げる。
「この人数で囲んで来て逃げられなかったし、殺すつもりで襲って来たんだから仕方ないでしょ?僕が。僕達が理由も無くこんな事すると思ってるの?試験中だよ?」
「なら彼等は何の理由でお前達に殺されたんだ!彼等は俺の生徒なんだぞ!?」
掴み掛かろうとして来る男性講師にナイフを振って離れさせ、つまらん理由を聞かせてやる。
「お前等なんかよりもな!彼等は優秀だったんだ!」
「優秀じゃないから死んでんだよ。風呂場でも寝込みでも、僕1人の時に襲ってれば僕1人がボコボコになって済んだ話じゃないか」
男性講師は膝を着いて悔しがった。
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すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
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