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依頼の、報酬
しおりを挟む「死ぬかと思った」
救護室のベッドで目覚めるのはコレで2度目か。ベッドの周りにはパーティーメンバーが居て、回復した僕を労ってくれる。ベッドエリアの手前では、エリザベス様と会頭がお茶してるみたいだ。
「起きましたわね。では、私の用件を済ませても構わなくて?」
エリザベス様の用件は散策の同行者への報酬の支払いだ。椅子から立ち上がり、ツカツカとこちらに向かって来ると、一人一人労いの言葉と共に、ポーチから取り出した袋を手渡して行く。
「貴女の働きで私達の負担が大きく減りました。感謝しますわね」
「どもども」
木登りやら崖登り。索敵に戦闘。そして目標を見付ける等、主に体を使う事に関してロシェルの功績は大きい。多少色を付けたと言うが、当然の結果だろう。
「レイナ嬢にはこちらを。今回は指揮者として十分な振る舞いでしたわ。貴女にならこの身を預けられます。部下も卒無く働けていました。感謝を伝えて下さいませ」
「勿体無いお言葉、しかと承りました」
レイナには2つの袋が手渡される。1つはマキの分だ。
「淑女たる者、いつまでも泣いたり怒ったりするモノではありません。殿方に見限られてしまいますわよ?」
「は、はいぃ。申し訳ごじゃいません…」
ジュンは膝を着いて報酬を受け取るが、彼女は影の功労者だ。依頼に関わる出費を限界まで抑え、60人越えの糧食を手配出来たのはクリスエス商会の後ろ盾あってのモノだ。ジュンが居なければ配られた報酬を大きく減らす事になっただろう。
「ユカタ、一先ず無事で何より。貴方には色々と感謝しております」
短い言葉を述べると、寝ている僕のお腹の上に袋を乗せる。
「う、ありがとうございます」
「それと、約束通り当家縁の者を示す割符を授けます。所有者登録するので取り出しなさい」
袋の中にある割符を出せと言うので上体を起こして中身を検める。銀貨の中に、5cm程度の長方形で、一辺がギザギザしてる金属板が入ってた。魔力を通すと所有者が固定されるそうだ。魔法の素質の無い僕やロシェルでも、魔道具に魔力を通す事は出来る。割符を握って魔力を通すとフワッと光った。コレで盗まれたり拾われたりしても公の場では使えないようになった。それでも見せびらかして偉ぶる事は出来てしまうので、盗られたり無くさないようにしなければならない。
「エリザベス様、よろしいので?」
「私の家紋だから問題無くてよ。当家お抱えの店で買い物出来る程度かしらね」
それはほとんど買えないって事じゃないのか?僕は高い物を買うと心が潰されたようになるのだから。それにそこまで稼げてるとは思えないし、使う機会はまだまだ先の事だろう。
「くそぅ、ソレは商人が喉から手が出る程欲しい物なのだぞ…」
エリザベス様が退席し、静かにしていた会頭が口を開いた。貴族様御用達の店で買い付けて転売でもするのだろうか。
「馬鹿め。信用を得たと言う事じゃ!」
思った事を言ったら叱られてしまった。他の貴族様と商談をする時、あの人と仲が良いなら贔屓しても良いか…となるそうだ。エリザベス様の縁者との話なら尚の事効果があると言う。
「子供が持ってても無くすだけだ。儂が預かってやらん事もないぞ?」
「お爺様?軒先に飾る気ですか?」
「儂は本家の割符を戴いておるわい。それに青塗りじゃ。さあ寄越せ寄越せ」
店に飾ると信用度が増すそうな。あればあるだけ飾りたいのだろうな。
「それにしても黒塗りで良かったわね」
「色?」
レイナの言葉にロシェルが顔を近付ける。手で隠してしまえ。
「塗られた縁の色により、信頼度が変わるのよ。黒、青、緑、赤。そして金。金は金、他は鉄で出来てるそうよ」
「金だとどーなの?」
「何かしたら全力で落とす感じね」
「何それ怖っ」
割符の裏側でチラッと輝く金色に、何それ怖っとなった。
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