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初めての、ジュン
しおりを挟む城勤めの兵士はブフリムを確認すると、提げていた剣で一突き。止めを刺した。もう1人の兵士はマキに事情を聞いている。マキは北門での僕よりも丁寧に説明していた。
「訓練なら学園内ですれば良いだろう。何故わざわざ外へ出る。何故わざわざ貴族街の近くを通る」
「演習場では探せば必ず見付かるからにございます。北回りに出ましたのは安全性を考慮しての事にございます。魔物が出てしまいましたが」
「ここはまだ学園の敷地に近いが、これより先は行かん方が良いだろう。何度も我等に足止めされたくはあるまい?」
そう言われてマキはレイナを見る。レイナは僕を見た。僕は頭を下げる。
「そうですね。東門の近くで採取して戻る事にします」
「それが良かろう」「ブフリムの処置はしておいてやる。袋を取って戻るが良い」
それはとても助かる。僕が臭い袋を回収すると、兵士の1人が土魔法で穴を開け、死体を蹴っ飛ばして穴に落とし、再び土魔法で埋めてしまった。魔法剣士だ!
「ユカタって魔法好きなの?」
「魔法剣士だぞ?格好良いだろ?」
「アタシ分かんな~い」
女子には分からん世界があるのだ。僕達がその場から北門へ向かって移動を始めると、兵士達はロープを体に絡めて登りだした。金属鎧で壁登りはキツそうだな。
「あ、袋の中身出すからちょっとゆっくり歩いて」
「臭いもんね」「良い物が入っていると良いわね」
「どうせ小銭とゴミだよ」
袋から出て来たのは、小銭とゴミと、触っちゃいけないモノだった。
「それってさ…」「汚れてはおりますが…」「お金、なの…?」
「どこに届け出るかが問題ね」
「それも早急に、だね…はぁ…」
大当たり、いや、大ハズレを引いてしまった。ギルドに加入してないのでギルドには行けないし、衛兵事務所に行ったら夕飯に間に合うか分からない。選択肢は1つしか無かった。
「北門、通してくれないかなぁ」
「無理よ。袋は捨てずに戻りましょ」
「今日はここまでだね~」
「ユカタ君、金貨だよね…ソレ」
「盗んだ訳では無いので、大丈夫だとは思いますが…ですよね?」
誰に聞いても答えは出ない。僕だって王金貨を触ったの初めてなんだから。
学園に戻ったのはまだ日のある午後。僕達の早い帰りにペニーさんは心配したが、事の次第を聞いて顔を青ざめた。
「すぐに学園長へ知らせて来ます。みんなはその場で待っててっ」
待たざるを得ないだろう。夕飯の肉は無いなこの雰囲気では。野菜もあれば良いけど…。バタバタと走って行ったペニーさんが戻ると、すぐに学園長室へ来いと言われていそいそと付いて行く。
「外出が推奨されない理由を理解したか?」
「これが主な理由じゃ無いって事は分かりますよ…」
「どちらにしてもだ。生徒に危険が及ぶ行為を推奨しておらん事を理解しろ」
流石に二の句が無い。トレーに鉗子が学園長の席に乗せられて、僕はその上に王金貨を乗せた。
「事務員、決して触るなよ?」
「理解しております」
ペニーさんは慎重に鉗子で挟んだ王金貨を、秘書さんの居る机へと持って行く。ギルドで調べたのと同じ方法で機械に通し、所有者を検索していた。
「名前はこの場では明かせませんが、大変な事になりましたね」
「詳しく聞きたくないが」
「セーナ様のお弟子さんですよ?借りを作れますので骨を折るべきかと」
僕がセーナと一緒に学園へ来なければ、僕は多分、この場で学園を放り出されていたに違いない。次会う時はひれ伏して感謝しなければならない。何やってんのよバカと言われそうだが。
「持ち主はさる大貴族。造幣院への通知はされたようですので、明日中には職員が到着するかと」
「はぁ、明日の鍛錬場は何時でも場所を空けられるように通達。職員を配置しておけ。お前達は造幣院が来たらすぐにここへ来られるように学舎の中で待機しろ。…取り敢えず、コレを入手した経緯を話せ」
夕飯には間に合ったけど、説明したり口裏合わせたりで時間を過ごしたおかげでめちゃくちゃ混んでた。
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