剣の世界に憧れて上京した村人だけど兵士にも冒険者にもなれませんでした。

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否定は、しない

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 翌日。教室で一日の予定が告げられる朝の時間、僕は信じられない事を聞く。

「僕魔法なんて使えないよ?」

「それを確かめるのだ。平民の出で今まで生きて来られたのだから使える等とは思ってはおらん。だが、歳を経て開花する者も多少は居る。それの確認だ」

 魔法の適性があるかを調べるため、授業が終わった後適性を調べてくれると言うのだ。本来なら入学初日に行われるそうだが、僕の場合中途入学だったので調整に時間を取られていたそうだ。町の神官が出張って来るんだって。夕飯の肉は、無いかも知れない。

「何だ不満か」

「み、水魔法欲しいなーって」

「高望みだな。無くて当然と改めよ。では解散」

 そりゃそうか。生まれてこの方魔力障害とかなった事無いしな。ちなみに魔力障害とは平民の子供がよく死ぬ原因の1つで、体に魔力が詰まって死ぬ病気みたいなモノだ。

「なんかあると良いねー」

「あると良いけどね」

 ロシェルやマキは入学初日に検査して、適性無しと判断された口だ。教室内の面々でも魔法を使える者は10人も居ないので、無くて当然と言う考えは間違ってないと思った。

「ユカタは水魔法が欲しいと言ったわね。どうして?」

「つっ、土魔法は、ダメ…ですか?」

「あれば何でもだけど、使いこなせるか分かんないもん。水なら飲めるだろうしね」

 教室に10人も居ない内の2人は火魔法と土魔法の使い手だ。先天的に火の素質があったレイナも、小さい頃魔法障害に苦しめられた経験があり、ソレがジュンと出会うきっかけで、ジュンが魔法に目覚めたきっかけでもあるそうな。

「レイナちゃんの練習に、遊び半分で付き合ったら…出ちゃった」

 出来る人は出来るらしい。

「ふむ、適性無し」

 多少楽しみにしていたが、結果はこんなモンである。魔法鍛錬場に集められて検査を受ける者は僕以外に居らず、見学者やここで練習したい面々に穴が空く程凝視された。

「残念だったねー」

「嬉しそうに言うなよ」

 結果が出ると間を置かず飛び付いて来たロシェルは自分も魔法使えないクセにドヤ顔だ。

「このウソツキめ、何がセーナの弟子だ」

 見学者は生徒だけでは無い。講師も数人混ざってて、人をウソツキ呼ばわりして来た。見た事の無い男だが、格好からして魔法使いなのだろう。

「誰?女?」

「名前の響きからして女性ですね」

「平民の出で、宮廷魔道士になった、あのセーナ様、かな?」

「まさか。同名なだけでしょ?」

 同じ名前の人なんていくらでもいる。けれどジュンの言ってた事まで同じな人はそう居るまい。

「セーナは有名なんだな」

「そ、そうだよ。平民で、複数の素質があるんだよ?複合魔法に、詠唱短縮…ユカタ君の、師匠…なの?」

「私達にマジックバッグをくれた人よ」

 僕の知ってるお節介焼きなセーナはレイナ達の知ってる太っ腹なセーナだった。世間は狭いな。

「おいっ、無視するなっ」

「じゃあそろそろ寮に帰るよ」

「えー、もうちょっと一緒に居よーよ」

「私もセーナ様の話をしたいわ」「だねっ」

「レイナ様、ジュンさんも、衆目の前で話す事ではありませんよ?」

 2人はマキに諌められて身を引いた。他人に聞かせる話でも無いしな。ロシェルはと言うと、こうしてやるっと背中から伸し掛かって来た。柔らかい感触を背負って魔法鍛錬場を後にする。

 ウソツキ呼ばわりして来た男は出入口付近までは文句言って付いて来たが、そこから先は追って来なかった。所詮その程度って事だ。僕とセーナが一緒に学園に来て手続きした事は学園長も知ってる事で、事務員まで知っているし、平日と休み2日とその翌日の間で教員に周知されている。魔道具屋の弟子になるのに魔法の素質は関係無いし、それでわざわざ皆の前でウソツキ呼ばわりして貶めるような奴は大した人物では無いのだろう。弟子では無く、従業員なのでウソツキなのは事実だけどね。




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