85 / 229
極端な、2人
しおりを挟む「不思議な物ね。買い物をする機会も無いのにこんな物を貯め込むなんて」
エリザベス様が鉄貨を摘み、表裏をまじまじ見ながら呟いた。浄化の魔法が掛けられた鉄貨は汚れと錆が落ち、鉄色に鈍く光る。だがそれを言ったら僕等もそうだ。鉄貨はそれだけでは買える物がない。
「人も変わらないかな。村では鋳潰して鏃とかに加工してたし」
「そう、ですね。精錬された鉄よりも手軽に手に入れられるので、鍛冶屋さんがよく集めているそうです」
僕の声にジュンが乗る。鉱山等で掘り出され、精錬された鉄よりも量は少ないが、手軽に入手出来るため、鍋や鎧の修理に使われる事が多いらしい。大きな物を作る時は精錬された鉄を使うんだと。
「では、私達はこれにて。貴方方は魔法の練習でしたわね」
「レイナとジュンに魔法を見せてもらうんだ」
「そう。楽しそうで何よりね」
次回も宜しくご機嫌ようと、エリザベス様と取り巻き達は階段を降りて魔法鍛練場を出て行った。
「じゃあ早速始めましょ」
「レイナのと、比べられるの、恥ずかしいな…」
レイナの音頭にジュンは言葉尻を弱めるが、何が恥ずかしいのだろう?土魔法だから?
「恥ずかしいの?石礫の魔法だったよね?」
「え、ええ…。私土魔法で、弱々なんです…」
「ブフリム殺れてたじゃん」
「当たり所が良かったんですっ」
語気を強めたジュンだが、当たり所を良くして行けば弱々では無くなる訳だ。
「火魔法は派手だけど、それだけよ?それに私の場合使い勝手が悪いもの」
階段を降り、魔法の的に対峙するレイナが魔法を唱える。
「火の精霊よ、我が声を聞け、集いて放ち、敵を討て。ヴォリーダ」
以前演習場で見たそこそこ大きい火の玉が的に当たって火柱を上げる。結構な熱量なのに的は燃える事無くその場に残されていた。
「あの的は鉄か何かで出来てるの?」
「魔法が付与、されてるんです…」「へ~」
カツンッ!
ロシェルが投げたナイフが当たり、地面に落ちる。物理攻撃にも強いのか。
「刺さんなかった」
ボヤいてないではよ拾って来い。
「ジュンも頼むよ」
「は、はい…。土の精霊よ、我が声を聞け、飛礫となりて、敵を討て。ペトレス・シンフィプシス」
ジュンの魔法は昨日も見せてもらったが、自身の前に数個の尖った小石が浮き上がり、的に向かって飛んで行く魔法だ。的の端にカツンと当たったのはその内の1個だけだったが、動く的が相手となれば手数が多いのは強みである。しかし威力はロシェルのナイフには及ばない。その事が分かっているのかジュンも俯いてしまっていた。
「ジュンさんは魔力制御に長けております」
普通なら小石が1つ飛んで行くだけの魔法らしい。それを尖らせたり数を出すのは凄いよな。
「私は逆ね。リミッターのスキルが悪さしてるのよ」
「スキルが悪さ?」
レイナの持つリミッターのスキルは、力を抑えて体への負担を減らすスキルだそうだが、魔力を練ったり制御する事も制限されて、どの魔法も合わせて4発までしか撃てないと言う。その分威力は強大で、10cm程の火の玉を飛ばす魔法がスイカ並の大きさに化けると言う。
「魔法ってさ、呪文唱えるじゃん?黙っては撃てないの?」
「無理だよ、そんな高等技術」
「城勤めの高位魔道士なら出来るかもね。私にも無理よ」
ロシェルの問いを2人は否定する。思えばセーナの詠唱は短かったよな。流石は宮廷魔道士なのだろう。
「知り合いの魔法は短かったけど、ソレも鍛錬次第なの?」
「そうね。短縮詠唱と言う技術よ。スキル化する事もあるらしいわ」
「じ、実家のお店に来た魔道士さんは、短縮出来た…みたい…。マジックバッグくれた人、ね?」
太っ腹な上に凄い人だったのだな。凄い人だからこそ、そう言うのをポンポンくれちゃうのだろうね。魔道具屋さんのお節介焼きさんは今頃どの辺りに居るだろうか…。
20
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
ステータス999でカンスト最強転移したけどHP10と最低ダメージ保障1の世界でスローライフが送れません!
矢立まほろ
ファンタジー
大学を卒業してサラリーマンとして働いていた田口エイタ。
彼は来る日も来る日も仕事仕事仕事と、社蓄人生真っ只中の自分に辟易していた。
そんな時、不慮の事故に巻き込まれてしまう。
目を覚ますとそこはまったく知らない異世界だった。
転生と同時に手に入れた最強のステータス。雑魚敵を圧倒的力で葬りさるその強力さに感動し、近頃流行の『異世界でスローライフ生活』を送れるものと思っていたエイタ。
しかし、そこには大きな罠が隠されていた。
ステータスは最強だが、HP上限はまさかのたった10。
それなのに、どんな攻撃を受けてもダメージの最低保証は1。
どれだけ最強でも、たった十回殴られただけで死ぬ謎のハードモードな世界であることが発覚する。おまけに、自分の命を狙ってくる少女まで現れて――。
それでも最強ステータスを活かして念願のスローライフ生活を送りたいエイタ。
果たして彼は、右も左もわからない異世界で、夢をかなえることができるのか。
可能な限りシリアスを排除した超コメディ異世界転移生活、はじまります。
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します
有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。
妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。
さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。
そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。
そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。
現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!
~唯一王の成り上がり~ 外れスキル「精霊王」の俺、パーティーを首になった瞬間スキルが開花、Sランク冒険者へと成り上がり、英雄となる
静内燕
ファンタジー
【カクヨムコン最終選考進出】
【複数サイトでランキング入り】
追放された主人公フライがその能力を覚醒させ、成り上がりっていく物語
主人公フライ。
仲間たちがスキルを開花させ、パーティーがSランクまで昇華していく中、彼が与えられたスキルは「精霊王」という伝説上の生き物にしか対象にできない使用用途が限られた外れスキルだった。
フライはダンジョンの案内役や、料理、周囲の加護、荷物持ちなど、あらゆる雑用を喜んでこなしていた。
外れスキルの自分でも、仲間達の役に立てるからと。
しかしその奮闘ぶりは、恵まれたスキルを持つ仲間たちからは認められず、毎日のように不当な扱いを受ける日々。
そしてとうとうダンジョンの中でパーティーからの追放を宣告されてしまう。
「お前みたいなゴミの変わりはいくらでもいる」
最後のクエストのダンジョンの主は、今までと比較にならないほど強く、歯が立たない敵だった。
仲間たちは我先に逃亡、残ったのはフライ一人だけ。
そこでダンジョンの主は告げる、あなたのスキルを待っていた。と──。
そして不遇だったスキルがようやく開花し、最強の冒険者へとのし上がっていく。
一方、裏方で支えていたフライがいなくなったパーティーたちが没落していく物語。
イラスト 卯月凪沙様より
外れスキル【観察記録】のせいで幼馴染に婚約破棄されたけど、最強能力と判明したので成りあがる
ファンタスティック小説家
ファンタジー
モンスター使役学を100年単位で進めたとされる偉大な怪物学者の孫アルバート・アダンは″天才″と呼ばれていた。将来を有望な魔術師として見込まれ、大貴族で幼馴染の可憐なる令嬢を許嫁としていた。
しかし、おおくの魔術師に期待されていたアルバートは【観察記録】という、「動物の生態を詳しく観察する」だけの極めて用途の少ない″外れスキル″を先代から受け継いでしまう。それにより周囲の評価は一変した。
「もうアダン家から実績は見込めない」
「二代続いて無能が生まれた」
「劣等な血に価値はない」
アルバートは幼馴染との婚約も無かったことにされ、さらに神秘研究における最高権威:魔術協会からも追放されてしまう。こうして魔術家アダンは、力をうしない没落と破滅の運命をたどることになった。
──だがこの時、誰も気がついていなかった。アルバートの【観察記録】は故人の残した最強スキルだということを。【観察記録】の秘められた可能性に気がついたアルバートは、最強の怪物学者としてすさまじい早さで魔術世界を成り上がっていくことになる。
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる